①
http://www.hayabusa.bz/news/2012/06/rasta-time.php

②httpmidnightraverblog.com20120226bob-
http://midnightraverblog.com/20120226/bob-marley-and-the-wailers-uprising-demos



前回のこれ↓↓↓の続き

世の中をダメにしようとしている人間は、1日も休まない~Bob Marleyの系譜を再考①
http://ameblo.jp/cargoofficial/entry-11803177666.html



ぼくが「ラスタファリズム」に初めて接したのは、90年代の中学生の頃。

なんか緑黄赤の色あいがかっこよくて、ボブ・マーリーを中心とした平和を訴えるムーブメント、というくらいの印象しか持っていませんでした。

その後レゲエやヒップホップにハマって、Shabba Ranks、ガーネット・シルク、Mad Lion、Lee Perry、Buju、Dennis Brown、Alton Ellisなどのヒーローに出会うとともに、ジャーとかザイオンとかセラシアイとかバビロンとかワンラブとかという言葉を覚えていって、、、とかなってたわけですが、、、

90年代後半からストリートでは「Thug」なカルチャーが流行し、レゲエ/ヒップホップ・カルチャーもラスタファリズムなんか忘れて市場原理主義/新自由主義に飲み込まれていって「Sex Drug and Money !」しか言わなくなってしまった。



結局、ボブの言った「この世の中をダメにしようとしている人間」は誰だったのか?

バビロンっていったい何なのか?


抽象的に「市場原理主義者たち(と彼らが作ったシステム)」のことだったのか?


すべてがあいまいなままでした。




「世の中をダメにしようとしている人間」が誰なのか知るためには、ラスタファリズムについて簡単に復習する必要があります。


③httpmr--soul.tumblr.compost26411058630 b.JPG
ハイル・セラシエ

紀元前10世紀~5世紀、アッシリア捕囚やバビロン捕囚(*1)によってイスラエルの地を追われたユダヤ人たちが、世界中に散り散りになり、そのうちの一族がエチオピアに落ち着いた(*2)。

1600年代、カリブ海の諸島でサトウキビのプランテーションを造るためアフリカから黒人奴隷たちを買い入れることに(プランターたちは当初労働力として原住民インディオを使いましたが、酷使によってほぼ絶滅)

1910年代、ジャマイカ生まれのマーカス・ガーベイらがアフリカ回帰と奴隷解放を訴え、カリブや南アメリカの多くの黒人の支持を得た。

1927年、マーカス・ガーヴィーが「黒人の王が即位する時のアフリカを見よ。その人こそ救世主となるだろう。」と予言したため、その3年後に即位したハイレ・セラシエ1世は南北アメリカ大陸の黒人達から、アフリカ大陸を統一し、離散した黒人のアフリカ帰還を告げる救世主として崇められるようになった

そして彼らの精神的な支柱として、また正統なダビデとソロモン(*3)の後継者として、エチオピアの皇帝ハイル・セラシエ1世をジャー(Jah)(*4)の化身として祭り上げた。

ハイレ・セラシエ1世は即位前の名をラス・タファリ・マッコウネンと言い、この名前を取って崇拝者たちのことをラスタファリアンと呼んだ。


ラスタファリアンは彼らにとっての約束の地を、シオニストと同じくザイオン(Zion)としていますが、シオニストが文字通りシオンの地・エルサレムを目指していることに対し、彼ら南アメリカの黒人の源流であるアフリカに回帰するというおおざっぱな目的地として設定していたようです。
(厳密には、やはりシオニストの言うシオンと同じエルサレムを、ラスタファリアンも目指しているともいえますが)

つまり、簡単に言うとラスタファリズムは、現在のユダヤ教とはパラレルな存在であるということになります。


ラスタのフラッグにはイスラエルの国旗/ユダヤの紋章である「ダビデの星」が描かれていることがまれにあります。
④httpwww.wallchan.comwall b.JPG
httpwww.wallchan.comwallpaper65938download


ユダヤ教を同根としていることもあり、キリスト教やイスラム教とは兄弟のような位置づけだと思うのですが、唯一神ジャー(ヤハウェ)を信仰しているのと同時に、アニミズム的側面もあるという独特の宗教/運動であるところがおもしろいですね。


ラスタファリズムは、アフリカ回帰×ユダヤ教×奴隷解放×自然崇拝/アニミズムとのミックスという様相を呈しており、

ボブ・マーリーはその預言者的な位置づけにあったわけです。


ちなみにユダヤ教徒もラスタファリアンも、「頭は重要な部分であり、剃刀をあててはいけない部分とされてた(旧約聖書より)」ことから、ひげや髪の毛を切らない。
ドレッドロックスにはこういう理由があります。




(*1)紀元前597年、新バビロニアの王ネブカドネザル2世により、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを初めとしたバビロニア地方へ捕虜として連行され移住させられた事件
(*2)ブラック・ジューともベタ・イスラエルとも呼ばれるエチオピアの黒人ユダヤ教徒
(*3)ダビデとソロモンは紀元前1000年頃のイスラエル王国の王。エチオピアはソロモンとシバの女王の子により建てられたとされている
(*4)ジャー (Jah) は聖書の神ヤハウェ(ヤハヴェ、エホバ、ジャホービア)の短縮形で、唯一神を表す語
(*5)ザイオン(Zion)とは約束の地の意で、ユダヤ教においてのシオン(Sion)と同等のもの



ある学者さんはラスタを以下のように説明しています。

ラスタファリアン(ラスタ)は、旧約聖書時代にバビロンに捕囚されたユダヤ人の経験と大西洋奴隷貿易時代にアフリカから奴隷としてジャマイカに連れてこられた自分たちの先祖の経験を結びつけ、自分たちが生活しているジャマイカを「バビロン」(地獄)、エチオピア(アフリカ)を「約束の地」(天国)、自分たちを「捕囚の身」として位置づける。

その上で、そうした黒人を抑圧する白人西洋物質文明主導の体制全体を「バビロン・システム」あるいは単に「システム」と呼び、古代イスラエル人の化身である黒人がやがて「システム」を打倒してエチオピア(アフリカ)へと帰還を果たし、そこから全世界を統治する日が到来する、と信じているという。

http://hare.law.ryukoku.ac.jp/~ochiai/ochiai.pdf



バビロンもしくはバビロン・システムは、ボブの言う「世の中をダメにしようとしている人間」たちが作ったシステムを、象徴的にあらわした言葉となります。


その「バビロン」についてですが、、、


またまた長くなってきたので、次回に続けますね。

では。




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【参考】
砂糖がつくった奴隷制 世界史小ネタ第92回
http://history.husigi.com/VHv2/koneta92.htm
ラスタファリ運動
ja.wikipedia.org/wiki/ラスタファリ運動
ベタ・イスラエル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB
エチオピア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%A2
ダビデ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%93%E3%83%87