竜とそばかすの姫 | ケアマネくんのブログ

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細田守監督の最新作は音楽と映像は一流の楽しくない娯楽大作でした。

竜とそばかすの姫観てきました。俺はサマーウォーズと千と千尋の神隠しが好きなので、本作はサマーウォーズに似てると噂されてたし、一部カットが千と千尋に似てたのでちょっと期待してました。

とは言え、おおかみこどもは拷問のような辛い2時間でもう二度と見たくないですし、バケモノの子は最近見て割と楽しめた。本作はどっちだ?辛い系か?それとも思ったより面白いのか?どっちだ?

娯楽作品に社会風刺を入れるのは別に構わないのですが、盛り込む内容に問題があって、それが映画そのもの評価につながっていると思います。

本作も評価は賛否で別れそうです。


(あらすじ)

高知県の田舎に住む主人公の鈴(高校生)は引っ込み思案な性格で暗い高校生活を送っていた。

幼少の頃に母を水難事故で亡くして以来、父親とも距離ができてしまう。

好きだった音楽も亡くなった母を思い出すからか、歌を歌えなくなってしまっていた。

幼馴染のしのぶくんはそんな自分の事を気にかけてくれるものの、鈴は顔のそばかすにコンプレックスを持っていたし、暗い自分と高身長でイケメンになったしのぶ君では釣り合わないと感じていた。

そんな中、親友から仮想空間Uへの招待状が届く。

特殊なイヤホン型デバイスを装着することでネット空間にダイブできるUはアカウント50億人に上るほどの人気を博していた。

鈴はアカウント名を鈴からベルに変更し、アバター作成時の写真も集合写真を使うことで別人のベルとしてUの世界に入る。

鈴として歌えなかった歌がベルとしてなら歌える。彼女は作曲していたオリジナルの唄を歌う。

最初は誰にも見向きもされなかったが、親友のプロデュースとネットならでは拡散によって瞬く間にベルはU内の歌姫として認知されていき、単独ライブを行うほどになる。

ライブが始まろうとした時、乱入するものがあった。治安自治の集団に追いかけられた一匹の竜。竜は背中に無数のアザを背負っていた。




(感想)

冒頭からベルのライブから始まりますが、独特のエスニックな音楽と歌、演出は圧巻で、歌のシーンのために映画館で観る価値は十分あると感じました。

その凄さは予告編などからも知ることはできるので見て気に入ったなら劇場に足を運びましょう。


こっからはよく分からなかったことを書きます。

1度しか見ていない上に、中盤10分くらい寝てるので(おい)、俺が見逃してる可能性あるのでその点ご注意を。


〇Uという仮想空間について

分かりやすさ重視だったり、ライブスペースしか描いていないのだろうと思いますが、巨大な基盤のようなものが浮かぶ空間に人型でないアバター列をなして移動しているだけ。

これ見てUっておもしろそうだな。って微塵も思わない。こんなんに50億人もアクセスしてんの?

Uのデバイス付けたら視覚が制御下に入り、続いて四肢が制御下に入る。そんなアナウンスが流れます。

ベッドに横になって楽しむものなら良いのですが、後半、石がゴロゴロしている河原を歩きながらUのデバイスを装着しているシーンがあるのですが、危険。というか、どういう仕組みになってんのかあのシーン観てわかんなくなった。


〇インターネットやSNSについて

ベルはUの世界で有名になるにつれ、ファンとアンチも付くようになります。有名税と言われる現象ですね。

鈴はエゴサーチで批判コメントが半分あることにショックを受けていたけど、親友は半分は評価してくれているとフォローします。

ネットに関してのフォローはこの親友の一言くらいで、大半は匿名掲示板やSNSでの誹謗中傷、集団心理で叩くときは大勢で叩いてしまうというネットの危険性を訴えている。

鈴の母親が亡くなるきっかけになった水難事故は、増水して中州に取り残された子どもを助けるために増水した川に飛び込む。結果として、子どもは助かり、母親は死んでしまった。そのネットニュースのコメントは心無い批判コメで溢れていた。

鈴がそういう検索をかけたのか、まとめサイトの管理人の人格が腐っているのかわからんが、さすがに批判コメ一色ってことはない。

こういう表現になったのは、テラスハウスの誹謗中傷の事件が大きな影響を与えているのだろう。監督自身も批判にさらされることは沢山ある。サマーウォーズで期待していたネット空間と今のネット空間の落差に幻滅した結果かもしれん。

だが、それは俺の知ってるネット空間とは少し違う。そういう違和感がある。割と・・・頻繁に・・・


〇正義マン

Uの世界は何故かユーザーが管理している。(システム保守はどっかの企業だろうけど)

警察がいないので治安維持は有志がおこなっている。その名もジャスティス。

ヂュエルでやり過ぎる『竜』のアバターではなく、本人を特定しようとするためジャスティスは集団で追い回し、正義を執行しようとする。

竜を庇うベルを脅したり、暴力で屈服させようとするジャスティスのリーダージャスティン。彼の正義は独りよがりで歪んだものとして描写している。

これもネットでよく見る正義マンですね。どこからともなく現れ正論と揚げ足取りでマウントをとる人のことです。

この手の人は自分は悪くないと思っているのでタチ悪いです。そういう意味ではよく描けています。

てかデータが壊れるほど痛めつけられた。って事例が多数あるのなら、それはもう運営が対処すべきことでしょう。システム的な欠陥もあるでしょ。あと荒らしは垢バンして、どうぞ。


〇声担当の俳優について

ジブリもそうだが、細田監督も声優に俳優を起用する。

声優いけるやん!って人もいれば何この棒・・・って人もいるし、単純にキャラクターと声が合っていない人もいる。

主役の子は歌ありきで選ばれてるっぽいが声の演技はそんなに上手くない。それはそれでキャラクターと合ってるから別に酷いとは思わない。良く見つけてきたと思う。しかし、しのぶくんの声や父親の声は合ってない。浮いて聞こえる。

竜役の佐藤健はたどたどしさは残るが“助けるラップ”は迫真の演技だった。さすがは元ライダーだ。アテレコは慣れてる。


〇ラブコメ担当の二人

カヌーことカミシンと美人の同級生ルカちゃんのラブコメ。ルカちゃんはベルの外見となってる。結構長尺で仲を取り持つのだが、演出が古臭くて恥ずかしい///

あってもいいけどどうにかならんかったんか?このシーン・・・


〇しのぶくんとけいくん

リアルでの恋愛対象のしのぶくんと、Uの世界で心通わせる竜の中の人けいくん。

現実世界のドラマより仮想現実の方に重きを置いてるからか、しのぶくんはほぼモブのような扱いでしかなかった。

ベルが鈴であることを見抜いたり、けいくんから信用を得るには素顔を晒して歌うしかない。と一応見せ場はあるものの声がちょっと・・・

ご都合主義としか言えなくなるけど、しのぶくんが実は竜だったんだ!『な、なんだってー』このくらい頭悪い展開でも良かった。

その場合竜がなぜ暴れるのか理由付けが変わってしまうけど、児童虐待を中途半端に取り扱うより、ヒロイックな展開に終始した方が娯楽映画として個人的に好み。


〇細田守は脚本書かない方が面白い。

原作・脚本・監督は細田守。監督の中ではこの映画は完璧に整合性が取れているのだと思う。尺は決まっているのでカットしたシーンは沢山あるに違いない。

細田はカットしたシーン含めて全て知り尽くしてるから各キャラクターの行動原理に疑いようはないのだろうけど、そんなの初見には分からない。

原作や脚本が別の人ならその辺上手く処理してくれるのだと思う。

原作小説読んだ人の解説で腑に落ちること結構ある。本作に限ったことではないが、細田脚本は原作小説で補完する必要がある。


〇細田守のインターネット観(Wikipediaから抜粋)

『細田が劇場アニメでインターネットの世界を題材として扱うのは、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)、『サマーウォーズ』(2009年)に続き3作目だが、題材にした理由について

「僕は、若い人が面白く楽しく世界を変革していくのではないかと、インターネット世界を題材にした映画を今までにも創ってきました。インターネットは、誹謗中傷やフェイクニュースなどネガティブな側面も多いですが、人間の可能性を広げるとても良い道具だと思っています。インターネットそのものが変わってきている今、肯定的な未来に通じるような映画ができないかと考えていました」

と思いを述べた。』

残念ながら俺にはこの映画からインターネットの肯定的未来は感じ取れなかった。誹謗中傷や正義マンによる叩きを断罪したろ。そんなメッセージしか受け取れなかった。

サマーウォーズからは『肯定的な未来』を感じれただけに残念だった。俺の感性が死んでしまったからかもしれん。

若い人の感想が俺のそれと違っているのなら、俺は自分の考えを引っ込めて若い人の感性を支持します。


〇この映画は面白いの?

よくできた映像作品です。細かいところに引っ掛からなけば感動作として十分面白い。ただ、楽しくはなかった。

クライマックスは主人公の成長が感じられて良かったし、歌のシーンは絶対劇場で体験すべき作品です。

何だろう。『芸術をよく知らない人間が、ゴッホやピカソを期待して美術館に行ったら前衛芸術展だった。』そんな感じ。