突然響いた「だらし」

エレベータ前が混んでいたので非常階段を使って
3Fのフロアーから4Fのフロアーに行こうと思い
すぐ脇にあった非常階段を上り始めたのでした。

階段の丁度真ん中位に差し掛かった時 ...

どうしていつもそんな風にだらしないの

と誰かを𠮟責している「怒」マーク付きの雰囲気の
女性の声がどこからか響いて聞こえてきたのでした。


お母さんが子供に叱ってるのかなぁと思いながら残りの階段を登ったのですが、
「あれ ... なにを探して上のフロアーに来たんだっけ ... 」と、
元来のアホアホを凌駕しつつある廊下 ... 否 ... 老化現象に見舞われるも、
頭の中では「だらしない」の「だらし」ってなぬ?となっていたのでした。


もう ... こういうのは、生涯治ることはない癖なのでしょうが ...







さっそくながらに「だらしない」の言葉を辞書で引くと ...

① 物事のけじめがつかないで、きちんとしていない。秩序がない。しまりがない。
  節度がない。ぐうたらだ。しだらない。
② 体力が弱すぎる。また、勝負を争う物事に弱すぎるさま。

とあり、語源については諸説あると綴られていたので早速調べてみることに ...








「だらしない」の語源





①「だらしない」の言葉は、行いや状態に締まりがない、乱雑で秩序がなく乱れた状態を意味する「しだらない」の「しだら」か元の言葉になっており、好ましくないことを表わす語に多く見られる、語頭に濁音がくる形として、音位転換(metathesis/メタセシス)して生まれた言葉だと考える説が有力なことが分かりました。

式亭三馬が江戸時代に書いた滑稽本の「滑稽本・浮世床‐初」(1813~23)には、「しだらがないといふ事を『だらし』がない、『きせる』を『せるき』などいふたぐひ、下俗の方言也」という説明があり、俗語・隠語的な言葉として、一般庶民の間に広がる形で定着していった可能性も十分考えられもするのだそうです。


音位転換例

   ・舌鼓:  シタヅツミ ・・・➤「シタツヅミ」
   ・秋葉原: アキハバラ ・・・➤「アキバハラ」
   ・サングラス    ・・・➤「グラサン」
   ・マネジャー    ・・・➤「ジャーマネ」
   ・シミュレーション(simulation)・・・➤「シュミレーション」 etc.


これらのように言い難いさ・誤読や隠語として使われるようになった音位転換や、
子供たちがよく間違える ...


   ・トウモロコシ ・・・➤トウモコロシ
   ・オタマジャクシ・・・➤オジャマタクシ
   ・ジャガイモ  ・・・➤ガジャイモ
   ・生菓子    ・・・➤ながまし
   ・潜水艦    ・・・➤すいせんかん
   ・雰囲気    ・・・➤ふいんき    etc.  のお仲間というのか ...


②「だらしない」の元の語である「しだらない」の語源はどうなっているのかというと、江戸時代の国学者喜多村信節が著した随筆『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830年序)には、「じだらく(自堕落)」から来ているという説が紹介されています。

さらに「しだら」を掘り下げると「ふしだら」という言葉に辿り着きますが、元々「しだら・したら」というのは、歌や舞における手拍子のことを言うのだそうです。

つまり、「しだら」とは、調子が整っているという意味をもともとは持つ訳ですが、それがないということで「ふしだら」となり、江戸時代の言葉遊びの隠語などの流れの音位転換を経て「しだらない」から「だらしない」という言葉が生まれ、現在の形で使われていったのだそうです。


      ご先祖様たちにとっての言葉とは ...

  Webなど無く、交通機関などにも限りがあった時代、
  他者と情報交換し、コミュニケーションを取る手段
  としての言葉の重要性を垣間見る想い&言葉そのものを
  心から楽しむ素敵な感性に出会うのでした...



③駄臘次(だろうじ)」を語源とする説
「駄」は、駄作とか駄菓子の言葉のように上等でない安物という意味があります。
「臘次(ろうじ)」は、僧侶の修行年限や戒法を受けた年代順(年齢には関係がない)によって決められる席次のことです。
そこでこの席次が乱れると年功序列や統制が無秩序になります。
そうした状態のことを「駄」で表して「駄臘次がない」というようになり、後になって「だらしがない」と使われるようになったということです。


④「修多羅(しゅたら)」を語源とする説
「修多羅」はサンスクリット語(インドの古代語)の「スートラ」の音訳で、経本または経本を閉じる紐のことをいいます。
その紐が切れて経本がバラバラになった状態を「不修多羅(ふしゅたら)」といい、それが「ふしだら」つまり「しだら」がないことに通じ、それがいつの頃からか「しだらない」を逆に言って「だらしない」となったともいわれています。








「だらしない」の語源を調べてみると、確実にこれだというものに出会うことは難しく、いくつもの説にに出会うことになりました。

あ・・・ルーツが定かでないこのことこそが「だらしない」ことの本質なのかと思ってみたりも ...



... そして ... 非常階段に響いた「どうしていつもそんな風にだらしないの」の声は、誰が誰に対して言っていたのかは、誰の姿も見えずに分かりませんでした。




人の振り見て我が振り直せ

Learn wisdom by faults of others.




といいますが ...

人の振りを見れず、我が振りを見ることは適わずだったため、
怒りが込められていた「だらしない」の言葉を耳にして、
我が振りを見つめ直してみたのでした ... う~ん ... 微妙か ...



「しだら」とは、調子が整っていること

今日も目一杯に最高の「しだら」でいきましょう!









笑顔の行方を見つめて

all written by careerwing  T.Yoshida@ponyo



素敵な笑顔溢れる1日でありますように!