想い出のサーフショップのステッカー


「ぼ・ぼ・僕らは少年探偵団♪」と歌いながら集まった訳ではありませんが、ワクチン接種が終わったという茅ヶ崎の海関係の女性の先輩に呼び出され、ポン友合わせて3人で日暮れ前のいつものビーチで落ち合うことになりました。

女性の先輩は独身(子供なし)・ポン友は既婚で2人の子供あり・ボクは既婚で人の姿の子供はなしでネコさんの姿をした子供がひとりいると、三者三様の生活なのでした。

夏の夕暮れを迎えるビーチの波打ち際は、日中には暑さで感じ取れなかった、波肌を通り過ぎてそよぐ夕凪の風が火照った身体のクールダウンに気持ち良いのですが、昨今の異常気象はそんな安らぎのひと時さえも奪い、人がいない繁忙期の海のため息だけがビーチに溢れているようでした。

女性の先輩は、出先からビーチ直行だったのか、ビーチには似合わぬルイ・ヴィトンのショルダーバッグからノンアルのビールを取り出し「コロナで海の家も閉鎖だからこれで暑気払い」と言って手渡してくれ、乾杯をして乾いたビーチに腰かけたのでした。

グビグビと一気飲みに近い感じで顔をあげ「プファァ~」の声と一緒に笑顔を吐き出したポン友は、あの頃のままの姿で、一気に時間がタイムスリップしたような気分となり、「・・・で、今日はどうしたん?」と尋ねる声にもエンドレスな夏の夜のビーチパーティーのお誘い待ちのようなどこか艶ややかな響きが含まれていました。

「これを見せようと思って・・・」

そういってバッグから取り出されたのは、3人の蒼き時代が交差し続けた、今は無きサーフショップのステッカーだったのでした。

海が好きで、波乗りが好きで、茅ヶ崎が好きで仕方なく、人生の時間を家に次いで長く過ごしたのは、3人の波乗りの拠点でもあったステッカーに綴られた名前のサーフショップだったのでした。

「懐かしい・・・!」の言葉と共に綺麗な夕焼けが広がるのが確定な空の下、尽きることのない想い出話しが繰り広げられたのでした。


あなたを守ります!


ボクの馴染みだったその店は、クラブハウスなんて洒落た店ではなく、オーナ自身がシェイプした板とワックスだけが置いてあり、あとは何も置かれていない土間が広がるだけのような店で、みんな気ままに顔を出しては、好きな場所で着替え始めて、適当に荷物を置いて海に行き、その後は疲れを癒すように音楽に揺られながらその日の波・海・波乗りを語り合い続けるような、風変わりなお店でした。

ある夏、台風の影響を受けた良い波があがり始めたとのことで、サーフショップに仲間が集まり始めて来ていました。

小さな店には何名か先に仲間が到着していて、女性の先輩もバスタオルを身体に巻き付けウェットスーツに着替えようとしているところでした。

店の扉を開けて、急いで着替えようとした瞬間、理由は忘れてしまったんですが「あっ!」と素っ頓狂な大声をあげてしまったのですが、その瞬間「キャッ!」と言いながら女性の先輩のバスタオルが床に落ちたのでした。

ホモサピエンスの不思議のひとつで、心臓を守るためなのか「キャッ!」と言った時は殆どが胸を隠す仕草になり、下半身は無防備になるのが常で、足元に履きかけのウェットスーツ+胸でクロスされた腕+無防備に曝け出された下半身(邪魔臭かったのか水着もサポーターも無しな純真爛漫!?な状態)が目に飛び込むことになったのでした。

その後「わたしは時間を止めたことがある」と言わしめる程に周りの時間はフリーズしたのですが、昔の方が純粋だったのだろうボクは自分の声がそのシチュエーションの原因を作ったことなど微塵も意識することなく、ジェントルマンとして女性先輩を守らねば!と思ったのか、誰にも見られてはいけないと両手を大きく広げ女性の先輩の姿を隠し、相撲取りの立ち合い若しくはラグビーのスクラムよろしく、店の入り口から女性の先輩めがけて摺り足の突進をしていたのでした。

無意識で晒してしまった無防備な姿に向かって、両手を広げて摺り足擬きで近づいて来る奴がいたら相当な恐怖感があったと思うのですが、ボクは無意識に先輩を守ろうとしただけなのに、彼女の手が届く位置に辿り着いた時、思いっ切りグーパン(握り締めた拳)を頭に受け、膝からカクンと床に落ちていたのでした(追記:軽い脳震盪になり、この日の記憶が飛んでしまって ...)。

世の中の刹那と理不尽を身を以って感じたのはこの時だったのかも知れません。


スカートめくり&まくりのフムフム


学校の同窓会では一頻りの想い出話に花が咲き終わると話題が尽きて妙に白々しさが流れてしまったりもしますが、蒼い春の思い出はいまに深く繋がっているためいつまでも笑顔で語り続けられるのでしょうか・・・

ステッカーを眺めながらサーフショップに纏わる当時の懐かしい想い出をあれこれと話していると、当然のように先述の話しに至るのですが、これに加えてポン友が語ってくれたのが、「子供の学校の先生に教えて貰ったんだけど、スカートめくり&まくりって日本独特のものらしいよ」との話しでした。

明治の末頃まで、着物の裾めくりが児戯としてあり、時代が昭和に移り変わり、着物がスカートになっても残ったのがスカートめくり&まくりで、性的欲求、気になる相手への悪戯心、特定の個人に対するいじめ的な子供特有の社会風習(?)のひとつなのだそうです。

そして、他人のモノをめくり上げた場合は迷惑防止条例違反、自分のモノをめくり上げた場合は公然わいせつ罪となることがあるとの余談には、なるほどなぁと思いつつ、1955年に上映の『七年目の浮気』で、地下鉄の風圧でスカートが舞い上がるマリリン・モンローさんの(日本流なら小川ローザさんの「オー!!モーレツ」)シーンにおいて、社会的なスカートめくり&まくりの風習があるなら、確かにこのシーンは存在しなかったのかもしれないなぁなどとフムフムとしてしまっていたのでした。

「ヨシダ・・・またなんかエロいこと思い浮かべていたべ・・・」
「またってなんやねん! エロいことってなんやねん!」
「わたしに向かって来たこいつの表情ったら・・・」
もう何度この言葉を吐かれたのか分かりませんが、これはボクにとっての撃沈ワードなのでした・・・


それでも刻は流れ往く


緊急事態宣言下でもオリンピックが開催され、医療崩壊の生々しい現実が迫る中、全国で新型コロナウイルスの爆発的な感染急増が止まりません。

平和の祭典と言い、責任者が広島への訪問もしたのにもかかわらず、8月6日に原爆投下に対する黙祷もオリンピックで実施はされずでした。

茅ヶ崎の海の家は緊急事態宣言下で営業停止となり、昨今の異常気象で、夕凪に涼を求めても風の姿を感じることも出来なくなってしまいました。

「オリンピックじゃなくて、エロリンピックがあったら、確実にヨシダは日本代表に選ばれるな」と女性の先輩が言うと「競技は、バスタオル落とし選手権かスカートめくり&まくりだな」とのたまったポン友。

夕焼けが鮮やかな変化を空に繰り広げている景色を眺めながら「エロリンピックに出るなら組手での戦いではなく、形がいいなぁ」などと訳の分からぬ想いに包まれた2021.8月茅ヶ崎ビーチなのでした。


PS 本記事はフィクション ... かな ... かも知れない ... にしておこうか ....









笑顔の行方を見つめて

all written by  Career wing  T.Yoshida@ponyo




素敵な笑顔溢れる1日でありますように!