出身地だからこそ言えるが、岐阜県には何もない。私が密かに広めている説だが、岐阜県では電子書籍の普及率が、他県に比べて高い。何故ならば、本屋がない。本屋があっても、在庫がない。だから、欲しい本が確実に買える電子書籍は、普及しやすいのだ。
そんな下らない冗談は兎も角、本当に岐阜には何もない。近頃は便利になったといっても、未だ私の育った辺りにはスターバックスもなければ、TSUTAYAもない。しかし逆にいえば、「現代」と逆行する豊かさがあるのだ。
諸刃の剣ともなるその豊かさは、漬け物ステーキやみだらし団子の様な、様々の美味しさをを作ってきた。今回、紹介するのは、そのうちの一つ、栗粉餅だ。
栗粉餅は、六に仕切られたトレーに入れられている。白い餅がそれぞれ入っているはずだが、その純白は見えなくなっている。理由はしごく簡単で、栗は栗粉餅にされるにあたって、ぼろぼろのそぼろ状にされてしまっているのだ。だから箱を開けた時に目にするのは、四角にまとめられた、美しい黄色である。
この自然の恵みをふんだんに使った餅を上手に食べるのは、簡単なことではない、餅をようじで刺して食べようにも、ぼろぼろになった栗は、よじで刺しても、ぽろぽろ落ちる。それをなんとか刺して、餅の上に黄色い栗が乗った状態を、なんとか保つのだ。それを口に含むと、そこには岐阜の厳しい寒暖差が作り上げた、深い甘みのある栗の味が広がる。栗粉餅を食べるとは、岐阜の色溢れる秋を食すのと似たようなものである。