外車ディーラーの、知り合いの営業の子から電話があり、
身内の方が最近中古で購入されたMCCスマートが、
峠道に差し掛かると加速しなくなるから診て欲しいとの事でした。
早速車を預かりに伺ったのですが、問診でお伺いした内容は、
・坂道を登っていたら、途中で速度が上がらなくなる。
・購入後すぐ白煙がたくさん出ていて、販売店に相談した所、オイルの入れ過ぎだったとの事でオイルを抜いて貰ったら白煙が止まった。
・エンジン不調について販売店に相談したら、エンジンの載せ替えを勧められた。
・購入して1ヶ月位でこの状態になったのだけど、保証期間の1ヶ月が切れていた為、有償修理と言われた。
・それ以来、不安で乗っていません(^^;)
です。
帰り道、白煙こそは出ていなかったものの、とにかくオイル臭いので、「エンジンオイルは結構消費しているなぁ」と思いました。
工場に持ち帰り、早速点検してみましたら、
エンジンオイルは、レベルゲージ先端にも付着しません。
続いてコンピュータ診断機を接続し、記憶内容をチェック。
ミスファイアを検知しています。
シリンダーの動きは、さほど悪くはありません。
圧縮も計測してみましたが、問題無し。
スパークプラグは・・・、
ん??
ん???
もの凄い溶け方です(-_-;)
新品と比較すると、その異常さがよく解ります。
どの位前に交換したのか調べてみましたら記録が残っていまして、
交換から1万キロ程度しか走っていません。
白煙が凄かった事から考えますと、
エンジンの中で燃えているオイルの量は結構な量の様で、
オイルが燃える事により異常に温度が上がり、
プラグ先端を溶かすまでの熱となったのではと考えます。
では、そのオイルはどこが原因でシリンダー内に侵入しているのか・・・。
このスマートはターボ車ですので、よくありがちなタービンを疑ってみましたが、
タービンでは無いのか・・・。
少し見え難い写真ではありますが、奥に見えているのはバルブです。
こちらもさほどオイルの付着が見受けられる訳でも無く・・・。
原因はピストンリングでは? という事になり、
お客様に相談の上、エンジンをオーバーホールする事となりました。
今回はピストンまで取り外しますので、オイルパンも取り外し、下からも攻めていきます。
オーバーホールしていくと同時に、この様な、シールからオイルが漏れている部分も、
この際一緒に交換を進めていきます。
ヘッドボルトを取り外して、エンジンヘッドを取り外します。
原因であろうピストンの作業は後で説明しますが、
まずはエンジンヘッドのオーバーホールから(^^)
ヘッドをゴロン。
バルブスプリングやコッタピンを専用工具で取り外していき、
バルブを取り外し、ステムシールも取り外します。
下からはコンロッドのキャップを取り外しにかかります。
上からはピストンの頭が見えています。
正常に燃焼しているピストンの頭は、こんなに黒くありません。
さてさて、問題のピストンリングです。
上から、トップリング・セカンドリング・オイルリングという名称が付いています。
黄色い矢印が上から3番目のリング「オイルリング」です。
なんだかすごい事になっています(-_-;)
真っ黒なススがびっしりと詰まっているのが解ります。
取り外してみると、その詰まり様がよく解ります。
適量のオイルを確保し、余分なオイルを掻き落とす役割のリングがこの状態では、
オイルはシリンダーの中に残ったまま掻き落とされる事はないでしょう。
様々な部品が段ボールいっぱい届きました(^^)
汚れていたピストンをピカピカに磨き上げ、
エンジンブロックにピストンを戻して、
3気筒ともピストン挿入。
せっかくここまでばらしたのですから、コンロッドメタルも、
親メタル・子メタルともに、新品に交換しておきました。
新品のメタル(^^)
続いてエンジンヘッドに移ります。
バルブを挿入して、
当たり付けをします。
ステムシールは当然新品に交換です。
バルブの組み付けがすべて完了したら、
カムシャフトを組み付け。
ヘッドガスケットを新品に交換。
ヘッドボルトを、トルクレンチを使って締め付けていきます。
続いて角度締め。
カムプーリーも角度締め。
下からは、
汚れていたオイルパンを、
綺麗に掃除して、
新しいガスケットを塗布して組付けます。
インマニのスタッドボルトも交換です。
ヘッドも綺麗にして、スタッドボルトも新しい物に交換。
インマニのガスケットももちろん交換です。
綺麗にしたヘッドカバーを取り付けます。
どんどん形になっていきますね(^^)
写真はサーモスタットと水温センサーを含む冷却水配管です。
水漏れを起こしていましたので、こちらはアッセン交換しました。
エンジンオイルの添加剤を入れさせて頂きました。
WAKO'Sエンジンオイルを充填。
エンジン始動!!
白煙は止まり、回転もとってもスムーズです。
4日ほど余分に時間を頂き、念には念を入れての試運転を行っております。
余談です。
なぜかナットが付いて無かったので、
合うものを付けておきました。
足元のロッドがグニャッと曲がっていました。
(写真、上下逆です)
多分、この細いアームにジャッキを掛けて、オイル交換か何かをしようとしたのではないでしょうか。
この曲がりも修正しておきました。
ハンドルのセンター位置も大きくずれていましたので、
そちらも修正しておきました。
試運転を繰り返し、リフトで上げて状態を確認・・・、
これを繰り返している時、冷却水の滲みを発見してしまいました(^^;)
水漏れを起こしていたウォーターポンプです。
事情を説明して、お客様には交換の快諾を頂きました。
新しいウォーターポンプを装着。
しっかりとエア抜きをして作業完了。
先述の通り、念には念を入れて試運転しておりますが、
もし気になる事がありましたら、いつでもお問い合わせ下さい。
合わせまして、納車の際にお話ししました通り、
1000~2000km程度走行されたのちご来店下さい。
オイル漏れ・水漏れなどないかを確認した上、
再度エンジンオイルを新品に交換させて頂きます。
今回の、スマートのエンジンオーバーホール、
ディーラーであるメルセデスに問い合わせをしたのですが、
今までエンジンオーバーホールはした事が無いそうで。
もしかして、松山で初めて・・・だったりしてぇ・・・
なんてね(^^)
ここまで作業をさせて頂いたお客様に、感謝です!(^^)!
今回のトラブル修理では、上記内容も含め以下の作業を行っております。
・ピストンリング1台分交換
・コンロッドメタル1台分交換
・インテークマニホールドガスケット1台分交換
・インテークマニホールドスタッドボルト1台分交換
・インテークマニホールドスタッドボルトナット1台分交換
・シリンダーヘッドガスケット交換
・バルブステムシール1台分交換
・カムシャフトオイルシール交換
・クランクシャフトオイルシール交換
・ヘッドボルト1台分交換
・カムホルダーボルト1台分交換
・ウォーターポンプ交換
・ウォーターポンプガスケット交換
・サーモスタット交換
・エンジンオイル交換
・オイルドレンパッキン交換
・オイルエレメント交換
・エンジンパワーシールド添加
・冷却水交換
・スパークプラグ1台分(6本)交換
・バッテリー充電
ご用命、ありがとうございました<(_ _)>
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