塗装で預かったジェミニを私が運転中、オーバーヒートに遭遇しました
乗り出して15分程度の間は、特に違和感を感じることは無かったのですが、
しばらくするとエアコンの冷気に少し冷却水の臭いが混じっている様な気がしました。
すると、そのすぐの交差点信号待ちでベルトが 「ギュギュギュギューーー!!」
水温計を見ると、ゲージはヒート方向に移動中
慌てて近くのガソリンスタンドに寄り、水を借りる事にしました。
エンジンを切ってしばらくしても、ラジエータが小刻みに揺れています。
(中の冷却水が煮沸していますので、そのボコボコで震えるのです)
少ししてラジエータキャップを開け、水を足してエンジン始動。
すぐに水温はグングン上がります。
水は動いている様ですのでウォーターポンプは問題無さそう。
とりあえず、知り合いのレッカー業者にレッカー移動の手配をして会社まで運んで貰いました。
翌朝エンジンをかけて様子を見てみると、ラジエータアッパーホースとロアホースに明らかな温度差があります。
サーモスタットが閉じたまま開かなくなってしまったのですね。
くっきりと緑色の冷却水です。
ラジエータの中の冷却水はこんなに緑色という事は、
サーモスタット全閉により、ラジエータ側の冷却水は流動しきれていなかったという事です。
サーモスタットはアッパーホースエンジン側付け根にセットされています。
■作業説明の前に、予備知識を(^^)
みなさんご存知の通り、冷却水はエンジンを冷やしてくれています。
でも、常に冷やしているのではありません。
エンジンが調子よく動く為にはある程度の温度が必要ですので、
その温度に到達するまで、冷却水はエンジンの中だけでグルグル巡回しています。
ある一定の温度に達しますと、サーモスタットが徐々に開き(このジェミニの開弁温度は82℃です)、
熱くなった冷却水をラジエータの方に流します。
サーモスタットが開いて熱い水が通路に流れてきますと、
そこに設けられたセンサーにより電動ファンが回され、
ラジエータに流れてきた熱い冷却水を扇風機の様な電動ファンで強制冷却します。
もともとラジエータ内に入っていたまだ冷たい冷却水は、
熱い冷却水が流れてきたのでそのまま押し出されるような形でエンジンに流れ込みます。
熱くなり過ぎかけていたエンジンは流れ込んできた新しい冷却水によって少し冷やされ、
サーモスタット周辺温度が82℃以下に下がりますと、サーモスタットは口を閉じ、
またエンジン内部のみで冷却水は巡回します。
この様な動きを頻繁に繰り返し、エンジンの温度を最適に保っているのですね。
ちなみに、今回はこのサーモスタットが閉じたままになった為、
エンジン内部のみで冷却水が巡回し続け、
温度がどんどん上がってしまい、オーバーヒートした次第です。
逆に、サーモスタットが故障して常に開きっぱなしになった場合、
いくら走っても水温計があまり上がらない『オーバークール』という症状になります。
オーバーヒートするよりはマシですし、走行も可能ですが、
冷却水の熱を利用する暖房を使うシーズンでは、いつまでたっても暖房が効かないとういう事になります。
それに、エンジンを最適温度にもっていけませんので、あまりよろしい事ではありません。
エンジンのシリンダーとピストンのクリアランスなどは、この適正温度で設計されていますしね。
ちなみに、レースシーンや日本の夏場に弱い外車などは、
サーモスタットの開弁温度の低い 『ローテンプサーモ』などに交換するのも手です。
故障したサーモスタット(上から2番目)
新品のサーモスタット(上から3番目)
そして右側にサーモスタットガスケットです。
ここにサーモスタットが取り付けられ、
冷却水を流したり止めたりと、一生懸命頑張ってくれているのですね。
頑張ってくれているので、サーモスタットのお家を綺麗に掃除しておきました。
新しいサーモスタットを組付け、
新しい冷却水を充填、しっかりとエア抜きを行って作業終了です。
ちなみに、ベルトがギュルギュル鳴いたのは、
サブタンクから噴き返った冷却水がベルトに散って鳴いただけです。
その後の走行テストで気になった、運転席ドア内張り周辺のビビリ音ですが、
裏から固定しているビスを増し締めしますとビビリ音が止まりました。
再発の可能性もありますが、経過を観察して下さい。
今回の修理ご請求額は、 ¥7,700- となっております。
ご用命、ありがとうございました<(_ _)>