民間の「個人賠償責任保険」を活用した
自治体による認知症の人向け補償制度を
昨日は書いてみたが、今日はその続きとなる。
㊤を読んでいない方は、
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2020年7月の時点では、
60ほどの市町村で導入されていた
認知症の人向け補償制度は、
いまでは150前後(keroぴょん調べ)の
市町村に広がっている。
自治体の中でも先駆けて制度づくりをした
神奈川・大和市を見てみよう。
大和市は「認知症1万人時代条例」を制定し、
総合相談窓口「認知症灯台」や、
人生100年推進課という組織までつくった
認知症に前向きな施策を行う自治体である。
大和市の認知症の人向け補償制度は、
「はいかい高齢者個人賠償責任保険事業」と
いう名称の制度で、
SOSネットワーク登録者を被保険者、
大和市が契約者として、
個人賠償責任保険事業を実施している。
SOSネットワークについては、
過去のブログを参考にしてもらいたい。
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認知症の人により、
法律上の損害賠償が発生した場合には、
最大3億円を補償するというもので、
示談代行サービスがついている。
生活上や交通事故などによる怪我を補償する
死亡・後遺傷害保険及び入院・通院を補償する
傷害保険にも加入することになる。
死亡・後遺障害補償額は最大50万円。
見舞費用補償は15万円で、
賠償責任の有無を問わない。
専用シューズとGPS端末を用いた
「はいかい高齢者等位置確認支援事業」も
提供しているが、介護保険の所得段階に応じ、
こちらは利用に際し自己負担が生じるが、
神戸市のように利用者一律ではなく、
所得によっては無料のケースもある。
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ほかの自治体でも大和市を参考にし、
SOSネットワークと個人賠償責任補償が
連動しているところが数多くある。
裁判となった事故が起きた愛知・大府市には、
「おおぶ・あったか見守りネットワーク」が
あり、このSOSネットワーク登録者が、
「認知症高齢者等個人賠償責任保険事業」の
対象だが、最大補償額は1億円となっている。
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https://www.city.obu.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/905/networkchirashi.pdf
一方、東京・中野区の
認知症高齢者等個人賠償責任保険は、
対象者にSOSネットワークの登録を
求めていないのが特徴となっている。
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導入を検討している自治体の中には、
SOSネットワークの登録者が少ないため、
躊躇をしているところもある。
中野区のように区内に住民登録があり、
在宅介護で徘徊行動または恐れがある
65歳以上(40歳以上の若年性含む)の
要支援、要介護認定者という利用条件は、
少数派の部類に入るかもしれない。
いちばん直近で導入した自治体が、
8月より「宇都宮市認知症事故救済事業」を
スタートさせた栃木・宇都宮市である。
最大2億円の補償で、
賠償責任の有無を問わず、
死亡・怪我、物損などが生じた際、
最大3000万円の見舞金が支払われる。
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https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/032/727/youkou.pdf
6月に成立した「認知症基本法」や、
「第9期高齢者計画・介護保険事業計画」の
策定スケジュールと歩調を合わせ、
認知症の人の補償制度を導入する自治体は、
今後ますます増えていくかもしれない。
ただし、行政に任せっぱなしではなく、
地方議員や首長に、
住民の声を届けることも重要である。
現に審議や検討会ばかりで、
進捗してない自治体も存在している。
最後のひと押しとなるのは、
住民の声かもしれない……。
(おわり)