「医療保護入院

“廃止”報道に端を発した

テーマの3回目である。

 

ここから読まれる方は、

前回・前々回のブログを

読んでいただけると、

流れがつかみやすいと思います。

 ↓   ↓   ↓

 

 

 

「いい病院って何だろう? その④」で

妻は1日23時間

17日間に渡って拘束されたと書いた。

 

 

 

就眠中も拘束された。

拘束帯だけでなく手首まで拘束され、

寝返りや嫌がって動くこともあるため、

擦り傷にまでなった。

 

18世紀終盤、フランスの

フィリップ・ピネル医師は、

精神病患者を

鎖から解き放ったことで、

人道的精神医学の創始者として、

後世に名を残すことになった。

 

自らの鬱病で

精神科病院に入院した米国人の

クリフォード・W・ビアーズは、

『わが魂にあうまで』という

院内での過酷な体験手記

1908年に発表した。

 

   クリフォード・W・ビアーズ

      「わが魂にあうまで」(星和書店)

 

この手記は、

医療関係者の間でも話題となり、

ピアーズが中心となり、

「精神衛生協会」が立ち上がった。

1943年に亡くなるまで、

精神衛生運動にその一生を捧げた。

 

ナチスドイツ下での

認知症・若年性認知症を含む

20万人以上の精神疾患者への

数多の痛ましい出来事を踏まえ、

1948年、NGO組織として、

世界精神保健連盟が設立された。

 

この設立により、

第2次大戦後の精神病の人に関する

福祉施策が見直されはじめた。

 

イギリス・イタリアなどのEC諸国では、

「脱施設化」が唱えられ、

公立精神病院

廃止・解体され、

無拘束への取り組みが進められていく。

 

このような背景があったからこそ、

「ユマニチュード」という

ケアメソッドがフランスで誕生した。

 

「ユマニチュード」は日本でも、

徐々に広がりはじめているのだが……。

 

(次回に続く)

 

妻目線で身体拘束を考える

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僕の妻が1日23時間縛られた理由は、ひとつやふたつではない。ざっと挙げただけで、下記の6つが思い浮かぶ。

 

 ①やらた動きまわり迷子になる 

 ②看護師を叩き、噛みつこうとした

 ③看護師に飲み水を吐きかけた

 ④不機嫌で怒りっぽい

 ⑤いろいろな人に声を掛ける

 ⑥他の病室に侵入したため苦情が来た           

 

入院から数日後、空き部屋と人員をやり繰りしてもらい、1時間だけは、拘束を解いてもらうことができた。病院としても、いい状況とは思っていなかった。

 

 

 

上記の6つの行為を、妻の側から見たらどう見えるだろうか? それぞれに理由があり、説明がつくと思った。

 

【①の考察】妻は、B型就労支援施設から直行するという予期せぬ形での入院となった。毎月通っていた大学病院と、入院先との調整が急転直下で決まったからだ。急転直下と書いたが、妻の症状から一日も早いほうが、家族にとっては安心との病院の判断が働いたからだ。この日の朝、電車に乗って妻を就労支援B型施設に連れて行き、オンライン・ミーティングのため自宅に戻ると、11時着前に大学病院から連絡が入った。先方が14時に来てほしいとのこと。最低限必要な入院に必要なものを揃え、就労支援B型施設へ妻を迎えに行った。この日の妻は、就労支援B型施設では、絶好調の働きぶり。認知症の症状がないときは元気なので、自分が入院するなんて、これっぽちも認識していなかった。就労支援B型施設から見知らぬ入院先に直行だから、そもそも切り替えができておらず、放置されれば不安でじっとしていられなかったはず。知らない場所なので、戻ろうとして動きまわるのは、至極自然のことだろう。

 

【②③④の考察】看護師を叩き、水を吐きかけた一件は、入院翌日の朝に起こった。入院直後に拘束され、ひとりきりで部屋に移された。床に排尿のあとがあり、それを処理しようとした看護師を叩き、腕を払おうとした。病院側は見えるところにトイレはあると言っていたが、家でも「トイレ、どこ?」と訊く妻が、見知らぬ部屋で一晩過ごし、どうしてよいか判らなかったのだろう。夜間は50人近い入院者を夜勤二人で見ていたが、なぜ拘束されているのか本人には理解できない。自分を“勝手に縛った”ことへの怒りは、誰でも共通だろう。しかも、床で用を足さざるを得ないという恥ずかしい思いをさせられ、かなり悔しかったのだろう。噛みつかれると狂暴だが、本人はそこまで追い込まれたわけである。

 

【⑤の考察】見ず知らずの場所で、何故ここにいるのか把握できていないため、誰彼構わず訊きまわったはずだ。「keroぴょん、知ってる? keroぴょん、どこにいるの?」と……。相当不安だったと思う。

 

【⑥の考察】これについては、考察①と⑤を合わせた理由によるもの。他室の人の持ち物を触ったのは、何が何だか理解できていないためと思われる。他人の持ち物という認識すらないはず。

 

あくまでも僕の想像の範疇だが、妻の目線で眺めてみた。

これが人の尊厳を奪ってまで行う、行為だろうか? 誰しも似たようなアクションを起こす状況だと思う。若年性認知症の場合、高齢者に比べ力があるだけに、拘束されやすいのかもしれない。