実質金利と金価格の伝統的な逆相関関係の推移

 

実質金利と金価格の伝統的な逆相関関係その乖離について、2025年10月時点での見解が示されていた。では2026年9月時点ではどうなんだろう。調べてみた。

 

■2025年10月まで

 

まずは実質金利と金価格の伝統的な逆相関関係に関するレポートについて

 

要点は以下の通り。

  • 伝統的な逆相関関係(「アンチ・ボンド(注)」としての金)
    • インフレ調整後の実質金利が上昇すると、金利を生まない金の魅力が低下して売られ、逆に実質金利が低下・マイナスになると金が買われる(長期的な相関係数は約 -0.8)。
  • 過去10年の推移(2013〜2020年)
    • 2013年のテーパータントラムや2017〜2018年の利上げ期には実質金利上昇に伴い金価格が下落し、2020年のコロナ禍では実質金利急低下に伴い金価格が最高値を更新するなど、教科書通りの連動を見せた。
  • 近年の「法則の崩壊」(2022〜2023年)
    • 急激な利上げで実質金利がマイナスから+1.5%超へと急上昇したにもかかわらず、従来のモデル予測に反して金価格は大きく崩れず最高値圏を維持した。
  • 従来パターンが崩れた3つの要因
    • 地政学リスク:戦争や不確実性の高まりによる安全資産需要の急増。
    • 中央銀行の大量買い:2022年だけで1,000トン以上の買い入れがあり、強力な底値支持となった。
    • 為替(ドル高)の動向:ドル高の一服により金価格への重みが和らいだ。
  • 投資家への示唆
    • 平常時には実質金利が金の価格動向を知る最良の指標となるが、危機時には地政学や中銀動向などが優先されるため、実質金利は総合的な判断材料の1つとして捉える必要がある。

 

■2024年から直近(2026年)

 

実質金利と金価格の相関関係の推移および最新動向についてウェブ検索による複数の専門レポート・市場分析を調査した。

※Geminiによる。

 

リサーチの要約

 

2024年から足元にかけて、**実質金利と金価格の伝統的な逆相関モデルは「完全に崩壊した」のではなく、「より高い価格ベースへ水準カット(水準のシフト)が行われた」**という見方が市場のコンセンサスとなっている。

 

実質金利が高水準(1.7%〜2.4%程度)を維持しているにもかかわらず、金価格が連日のように高値を更新し続ける背景には、以下のような構造的変化があるとされる。

 

主な注目テーマ・分析結果:

  1. ベースラインの永久的な上方シフト(水準の変更): Janus Henderson などの分析によると、短期的な実質金利の上下に対する金の価格反応(方向性の連動メカニズム)自体は維持されているものの、金価格全体の「底値(フロア)」が以前より格段に切り上がった状態で推移している。
  2. 新興国中央銀行による構造的な買い(Central Bank Override): 2022年以降、ドル依存からの脱却や外貨準備の分散を目的として、中央銀行による金の購入量が従来の2倍(年間約1,000トンペース)に急増しており、金価格の強力な下値支持となっている。
  3. ローリング相関係数(注2)の低下 :LongtermTrends のデータ分析によると、10年物TIPS実質利回りと金価格の12ヶ月ローリング相関係数は、歴史的な強固な負の相関(-0.8付近)からゼロ付近(-0.2前後)まで低下しており、従来の価格予測モデルの精度が落ちていることが示されている。
  4. ** sovereign 信用リスク・財政赤字のヘッジ需要**: Investing.com や PIMCO のリポートでは、市場参加者が金を単なる「金利(機会費用)との比較対象」としてではなく、米国の膨大な財政赤字や国債の信用リスク、自国通貨安に対する構造的なヘッジ資産として買っている点が指摘されている。

 

注1:

1.「アンチボンド(Anti-bond)」としての金(ゴールド)とは、主に金融の世界において「債券(ボンド)とは真逆の性質を持ち、債券が機能しない局面で真価を発揮する資産」という意味で使われる概念。

伝統的な資産運用では、株が下がったときのクッションとして「債券」を組み入れるのが王道とされてきた。しかし、特定の経済環境下では債券も一緒に暴落してしまうことがあり、その際、債券の代わり(あるいは債券のアンチテーゼ)として機能する究極の安全資産が金である、という考え方。

金が「アンチボンド」と呼ばれる理由は、主に以下の3つの違いにある。

 

1) インフレ局面での役割の違い

債券と金が「真逆」になる最大の要因はインフレ。

  • 債券(ボンド): 物価が上がると、将来もらえる固定の利子や元本の価値が目減りするため、インフレに非常に弱いという弱点があります。
  • 金(ゴールド): それ自体が「モノ」であり、中央銀行が大量に印刷して価値を薄めることができないため、インフレ局面で価値が上がりやすい性質を持っています。

2) 「金利上昇」への耐性の違い

金利が急激に上昇する局面でも、両者は対照的な動きをします。

  • 債券(ボンド): 金利が上がると、すでに発行されている古い債券の価値は下がるため、債券価格は下落(暴落)する。
  • 金(ゴールド): 金は利息を生まないため、本来は金利上昇が苦手。しかし、「インフレを抑えるための利上げ」が行われるような過酷な環境下では、債券の含み損を嫌った資金が、あえて「金利はつかなくても目減りしない金」へと逃避することがある。

3) 発行体の信用リスク(カウンターパーティリスク)

  • 債券(ボンド): 政府や企業が発行する「借用書」である。どれほど格付けが高くても、発行体が破綻すれば価値はゼロになるリスク(信用リスク)がわずかに存在する。
  • 金(ゴールド): 誰の債務でもない「実物資産」です。特定の国や企業の信用に依存しないため、究極の無リスク資産として機能する。

2. なぜ「アンチボンド」として注目されるのか?

 

これまでの分散投資は「株が下がれば、債券が上がる(逆相関)」という前提で成り立っていました。しかし、2020年代に入り高インフレと急激な利上げが世界を襲った際、「株も債券も同時に大暴落する」という事態が起こった。

この「伝統的な分散投資(株60:債券40など)が通用しない」環境において、債券の代わりにポートフォリオを守る「真の防衛手段=アンチボンド」として、世界の投資家や中央銀行が金を激しく買い求めたことから、この価値観が広く共有されるようになった経緯がある。

 

注2:ローリング相関係数

1)「ローリング相関係数」とは?

通常の相関係数は、「過去10年間」といった固定期間全体の連動性を1つの数字(-1〜+1)で表す。
これに対してローリング相関係数(移動相関係数)は、期間の枠を一定(例:1年間)に保ったまま、1日ずつずらしながら相関の変化を追い続ける手法である。

  • 相関係数の見方:
    • 「+1」に近い(正の相関): 同じ方向に動く(例:株とビットコイン)
    • 「-1」に近い(負の相関): 真逆に動く(例:金利と債券価格)
    • 「0」に近い(無相関): お互い全く関係なく動く

これが「低下して0に近づく」ということは、「従来の教科書通りの連動ルールが通用しなくなり、独自の動きを始めた」という市場の構造変化を意味する。

 

2)LongtermTrends のデータが示す「2つの決定的な崩壊」

LongtermTrendsの時系列チャート分析において、近年特に注目されているローリング相関係数の低下には、以下の2つの具体例がある。

① 金(ゴールド)vs 米国債の「実質金利」

歴史的に、金と米国の実質金利(10年物TIPS利回り)には、強力な負の相関(約 -0.8前後)があった。これは金利が上がると、利息を生まない金の魅力が落ちて売られるため。

  • データ分析の現実: LongtermTrendsの「Gold vs. Real Yields」チャートを見ると、ここ数年で12ヶ月ローリング相関係数は0近辺、あるいは一時期はプラスに転じるほど大きく低下してきた。
  • 背景: 米国の金利が高止まりしている(=本来なら金が暴落する環境)にもかかわらず、地政学リスクの緊迫化や中央銀行による大量買いによって、金価格が史上最高値を更新し続けたため。伝統的な「金利が上がれば金は下がる」という相関ルールが完全に破綻した。

② 金(ゴールド)vs ビットコイン(BTC)

2024年のビットコイン現物ETF承認直後は、「デジタルゴールド」としての期待から両者の1年ローリング相関係数は「0.80」という過去最高水準まで高まり、同じように値上がりしていた。

  • データ分析の現実: しかし、LongtermTrendsの「Bitcoin vs. Gold」などの分析によると、その後この相関係数はマイナス圏(-0.17前後)へ急低下してきた。
  • 背景: 金は「国家の信用リスクや戦争(有事)」を織り込んで上昇する一方、ビットコインは「市場の流動性やハイテク株(金余り)」に連動して動くようになり、両者が別々の役割(棲み分け)を持ち始めたため。 

3)このデータ分析が教えるところ

LongtermTrendsのような長期データが示す相関係数の低下は、単なる統計の数字ではなく、ポートフォリオ(資産の組み合わせ)の組み方を根本から変えるサインになる。

 

■相関係数の状態:

  • 相関係数の高い状態(+1に近い): 両方持っても、一緒に上がって一緒に暴落するため、分散投資の意味がない。
  • 相関が低下した時(0に接近): 片方が下がっても、もう片方は独自の理由で動くため、真の「リスク分散(クッション)」として機能する。

かつては「金を持てば金利の動きをヘッジできる」「ビットコインは金と同じように動く」と考えられたが、相関が低下した現在の市場においては、「債券の代わりに金(アンチボンド)」を持ち、「金の代わりにビットコイン」を持つのではなく「どちらも別枠の資産として両方持つ」というアプローチが、最も合理的なデータ分析の結論になる。

 

※各種ETFの存在がありとあらゆる資産を株式と同様にした。いい面もあるが、逆相関の関係を崩し、本当の意味での分散がしにくい状況を生んだとも言えるのではと考える。

 

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ご健康に、ご安全に! 投資は自己判断・自己責任で!!                                     

 

※本日の参照サイト

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