金融政策決定会合議事要旨

2024年4月25、26日開催分の日銀・金融政策決定会合議事要旨をざっくりまとめました。

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Ⅰ.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要 

1.最近の金融市場調節の運営実績    ・・・ 略

2.金融・為替市場動向 

 

金利は全体的に低位で推移

  • 翌日物金利:
    • 無担保コールレートは概ね0.07%台後半で推移
    • GCSレポレートはプラス転化し、0.1%を下回る水準で推移
  • ターム物金利:
    • 短国レート(3か月物)は期間を通じて概ね横ばい

市場動向

  • 株式市場:
    • 米国株価の下落や中東情勢の緊迫化を受け、TOPIXは幾分下落
  • 長期金利:
    • 3月末にかけて幾分低下したが、4月入り後は米金利上昇につれて上昇
    • 期間を通じてみれば、小幅に上昇
  • 国債市場:
    • 現物国債のディーラー間の取引高は振れを伴いつつも増加
    • 長期国債先物の板の厚さ、価格インパクトや値幅・出来高比率、現物国債(新発債)のビッド・アスク・スプレッドも改善方向の動き
  • 為替相場:
    • 日米金利差拡大を受け、円安方向の動き
    • 円対ユーロ相場も円安方向の動き

3.海外金融経済情勢 

 

海外経済:回復ペース鈍化から緩やかな成長へ

現状分析

  • 世界経済の回復ペースは鈍化傾向
  • 米国経済:FRBの利上げ影響を受けながらも、個人消費を中心に底堅く推移
  • 欧州経済:ECBの利上げ等を受け、緩やかな減速が続く
  • 中国経済:不動産市場調整の影響などで緩やかな減速傾向。個人消費など一部に持ち直し
  • 中国以外の新興国・資源国経済:輸出に持ち直しの動き。総じて緩やかに改善

先行き見通し

  • 回復ペース鈍化から徐々に脱し、緩やかに成長していくと考えられる
  • 不確実性が高い:各国中銀の利上げの影響、中国経済動向、地政学的緊張
  • 米国:長期金利上昇、株価小幅下落
  • 欧州:長期金利小幅上昇、株価概ね横ばい
  • 新興国通貨:ドル高で下落
  • 原油価格:中東情勢の影響を受けつつ、小幅上昇

ポイント

  • 各国・地域経済の状況、金融市場の動向を個別に把握することが重要
  • 不確実性が高いため、最新情報に注視し、慎重な判断が必要

4.国内金融経済情勢 

 

(1)実体経済 

全体像

  • 日本の景気は、一部に弱めの動きも見られるものの、緩やかに回復している。
  • 今後も、海外経済の緩やかな成長、所得から支出への前向きの循環メカニズムの強化、金融緩和などを背景に、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。

輸出

  • 海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、横ばい圏内の動きとなっている。
  • 今後は、海外経済の緩やかな成長、グローバルなIT関連財の持ち直しなどから、増加基調に復していくと見込まれる。

鉱工業生産

  • 基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足元では一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。
  • 今後は、グローバルなIT関連財の持ち直しなどから、増加基調に復していくと見込まれる。

企業収益

  • 改善している。業況感は良好な水準を維持している。
  • 今後は、企業収益の改善傾向、金融緩和などを背景に、増加傾向を続けると予想される。

個人消費

  • 物価上昇の影響や一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。
  • 今後は、名目雇用者所得の改善、政府による経済対策の効果などを背景に、緩やかに増加していくと予想される。

雇用・所得環境

  • 緩やかに改善している。
  • 今後は、名目賃金の伸び率上昇を反映して、はっきりとした増加を続けると考えられる。

物価

  • 商品市況は、総じてみれば上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)は、2%台半ばとなっている。
  • 今後は、エネルギー価格の上昇や政府による経済対策の反動などが前年比を押し上げる方向に作用する一方、輸入物価上昇の影響が減衰していくことから、2%程度で推移すると予想される。
  • 中長期的な予想物価上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善、賃金と物価の好循環の強化などを背景に、徐々に高まっていくと予想される。

その他

  • 内閣府の景気基準日付では、2023年10-12月期は前期比年率+0.4%と、2四半期ぶりにプラス成長となり、リセッション(景気後退)は回避した。
  • 三菱総合研究所の2024年5月時点の展望では、実質GDP成長率は2023年度は前年比+1.3%、2024年度は同+0.7%、2025年度は同+0.7%と予測している。
  • 財務省の2024年2月時点の政府経済見通しでは、令和5年度の実質GDP成長率は1.6%程度、令和6年度は1.3%程度と見込まれている。

(2)金融環境 

  • 金融環境は、緩和した状態にある。 
  • 企業の資金調達コストは、なお低水準で推移している。
  • 資金需要面をみると、緩やかに増加している。
  • 資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。
  • CP・社債市場 では、良好な発行環境となっている。銀行貸出残高の前年比は、3%台半ば。
  • CP・社債計の発行残高の前年比 は、1%台後半。企業の資金繰りは、良好である。
  • 企業倒産は、増加している。 
  • マネタリーベースの前年比は、1%台半ば。 またマネーストックの前年比は、2%台半ば。 

 

(3)金融システム 

  • 全体として安定性を維持している。 
  • 大手行の収益は、堅調に推移している。この間、信用コストは、低水準。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。 
  • 地域銀行の収益は、貸出残高の増勢が続くもとで、堅調に推移。この間、信用コストは、低水準。自己資本比率は、 引き続き規制水準を十分に上回っている。 
  • 金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップ を構成する全 14 指標のうち 13 指標が、過熱でも停滞でもない状態。
  • 金融ギャップは、経済活動の回復に伴い、民間債務と経済活動水準とのリバランスが進んでいることから、プラス幅が縮小。
  • 株価が上昇し、不動産市場の一部に割高感があるが、全体として金融活動に過熱感はみられない。 ただし、金融活動が実体経済活動から大き く乖離することがないか、 引き続き注視する必要がある。

Ⅱ.「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション基 本要領」の一部改正 ・・・略

Ⅲ.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 

 

1.経済・物価情勢の現状 

 

国際金融資本市場

  • 世界経済の先行きに対する不確実性が高まり、FRBの金融引き締め長期化への警戒感が強まっている。
  • 海外経済は回復ペースが鈍化している。
  • 米国経済はFRBによる利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に底堅く推移している。
    • 米国景気の底堅さには、企業・家計の健全なバランスシートも寄与している。
    • 景気の底堅さから物価上昇率が高止まりしており、FRBの金融引き締め長期化観測につながっている。
    • 米国で金融引き締めの影響が顕在化していないのは、移民流入という供給要因が寄与している可能性がある。
  • 欧州経済はECBによる利上げの影響を受け、緩やかな減速が続いている。
  • 中国経済は不動産市場の調整の影響などから緩やかな減速傾向が続いているが、個人消費など一部には持ち直しの動きがみられる。
    • 政策対応の強化により景気の減速傾向には歯止めがかかっているものの、依然として安定した成長経路への復路は不透明である。
    • 少子高齢化などを背景とした内需不足と供給過剰という構造的な問題は改善しておらず、不動産市場の調整も続いている。
    • デフレ入りする可能性もある。
  • 中国以外の新興国・資源国経済は輸出に持ち直しの動きがみられ、総じて緩やかに改善している。

わが国の金融環境

  • 緩和した状態にある。
  • 企業の資金調達コストは足元では上昇しているが、なお低水準で推移している。

わが国の経済・物価情勢

 

景気

  • 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。

輸出

  • 海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、横ばい圏内の動きとなっている。

鉱工業生産

  • 基調としては横ばい圏内の動きとなっているが、足元では一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって減少している。

設備投資

  • 企業収益の改善と良好な業況感を受け、緩やかな増加傾向にある。
    • 供給制約等を受けた設備投資先送りによって企業が商機を逸し、生産性を改善できないことで賃上げ原資の確保が未達となるおそれがあるため、設備投資の動向に注目する必要がある。

個人消費

  • 物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などがみられるものの、底堅く推移している。
    • 一時的な要因もあって足もとの指標は弱いが、日用品の節約志向と趣味・嗜好品や非日常的なイベント・サービスへの消費のメリハリがみられる中、全体として底堅さが窺われる。
    • 家計のミ ンド指標は改善傾向をたどっている。

雇用・所得環境

  • 緩やかに改善している。

物価

  • 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続き、足元は2%台半ばとなっている。
    • 輸入物価の動きを受けて企業物価が再び上昇率を幾分高めており、その動きは徐々に中間財から最終財に波及しつつある。
    • サービスの価格が高めの伸びを続けているほか、企業向けサービス価格指数をみても、人件費の価格転嫁によるとみられる伸び率の加速が窺われる。

予想物価上昇率

  • 緩やかに上昇している。
    • 企業・家計・エコノミストいずれの予想物価上昇率も緩やかな上昇傾向にある。
    • 物価連動国債から算出されるBEIも1.5%を超えている。

 

2.経済・物価情勢の展望 

 

**2024年4月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)**における、委員の議論内容を以下にまとめます。

 

1. 成長率

  • 2023年度は、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響もあって、個人消費を中心に下振れ。
  • 2024年度は、2023年度後半の下振れが大きかった影響もあって幾分下振れ。
  • 2025年度は概ね不変。
  • 中心的な成長率の見通しは、1月の展望レポート時点と比べると、変化はない。

2. 物価

  • 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、今年度に2%台後半となったあと、2025年度および2026年度は、概ね2%程度で推移。
  • 基調的な物価上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていく。
  • 2024年度は、このところの原油価格上昇の影響などから上振れ。
  • 2025年度は概ね不変。

3. リスク要因

  • 経済のリスク要因:
    • 海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向
    • 資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向
    • わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響
  • 物価のリスク要因:
    • 上記の経済のリスク要因が顕在化した場合の影響
    • 企業の賃金・価格設定行動
    • 今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向、およびその輸入物価や国内価格への波及

4. リスクバランス

  • 経済の見通し:2024年度以降、概ね上下にバランスしている。
  • 物価の見通し:2024年度は上振れリスクの方が大きい。その後は概ね上下にバランスしている。

5. その他

  • 委員は、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
  • 円安の動きが、基調的な物価上昇率にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要がある。

Ⅳ.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 

 

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針

  • 無担保コールレート(オーバーナイト物)を0~0.1%程度で推移するよう促す方針を維持することが適当である。
  • 長期国債およびCP等・社債等の買入れについては、2024年3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施することが適当である。

委員の意見

  • 多くの委員は、前回会合で決定した金融政策の枠組みの見直しは、市場に混乱なく受け入れられているとの見方を示した。
  • 委員は、先行きの金融政策運営について議論を行った。
    • 経済・物価・金融情勢次第であり、具体的なタイミングや幅については議論が必要。
    • 基調的な物価上昇率の動向が重要。
    • 夏場にかけて企業行動や個人消費の改善がポイント。
    • 為替相場、財政政策、人手不足、資源価格など、物価の上振れリスクに注意が必要。
  • 委員は、金融緩和度合いを調整していく必要があるとの認識を共有した。
    • 経済・物価の見通しを踏まえると、当面は緩和的な金融環境を継続する。
    • 市場で織り込まれているよりも高い金利パスとなる可能性がある。
    • 円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性がある。
  • 委員は、家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境の継続が妥当との見方を示した。
  • 委員は、こうした日本銀行の金融政策運営の考え方について、「展望レポート」でしっかりと示していく必要性を共有した。

資産買入れの先行きや保有する資産の取扱い

  • 長期国債の買入れについて、どこかで削減の方向性を示すのが良いとの認識が示された。
    • 国債保有量・準備預金残高の適正化という観点から、日本銀行のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。
    • 市場動向や国債需給をみながら、機を捉えて減額を進めていくことが大切。
    • 市場機能回復を志向し買入れを減額することが考えられる。
    • 金融市場局において、丁寧な調整を行う。
  • 保有するETFおよびJ-REITの取扱いについて、時間をかけて検討していく必要があるとの認識が共有された。
    • 市場動向を踏まえると、その取扱いについて具体的な議論ができる環境になりつつある。
    • 市場に及ぼすインパクトを考慮する必要がある。
    • 長い時間がかかっても方向としては残高をゼロにしていくべきである。

今後の展望

  • 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく。
  • 今後も、金融政策運営について丁寧に情報発信していく。

 

Ⅴ.政府からの出席者の発言     ・・・略

Ⅵ.採決              ・・・略

Ⅶ.「経済・物価情勢の展望」の検討 ・・・略

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ご健康に、ご安全に! 投資は自己判断・自己責任で!!

 

※数か月振りにハッカチョウ1羽見かけました。飛ぶ際の羽の内側の白と黒のコントラストは特徴的です。

 

※本日の参照サイト

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