YCC(イールドカーブコントロール)の推進と抑制
今週火曜日1ドル135.40円をつけたドル円相場、木曜日には133.70円まで下落。現在、134.20円ほどで取引されています。この”ほど”という曖昧さは、時間的な変動に加え、取引する会社等により若干差異が生じるためでもあります。
この継続する円安傾向は政策金利を上げ、FRBのバランスシートを減らす米国FRBの金融政策と、一方2%のインフレ率を誘導したい日銀のゼロ金利政策との対比そのものを反映していると言われています。
またその基本には、イールドカーブコントロール(YCC: Yield Curve Control、長短金利操作)を採用する日本と政策金利と資産のバランスシートの増減を推し進める米国との金融政策の違いがあるようです。
このあたりを調べていると明治安田アセットマネジメント株式会社(MYAM)の参照サイト の一文が目につきました。すこし改変して自分にわかりやすく書くと、
1)参照サイト2)より
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米国の債券市場ではイールドカーブのフラット化を相対的に抑制する傾向が強まっている。
これは市場の一部で、フラット化が進んで『長短金利が逆転すれば、先行き景気悪化の前兆』との相場の格言が根強く信じられているから。
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しかしパウエル議長は1月FOMC(連邦公開市場委員会) 会見で、相場の格言は「鉄則ではない」と一蹴。
その理由として、むしろ長期金利に依存する年金基金や保険会社等の負担増で金融の安定性を損なう危険をパウエル議長はイールドカーブの過度なフラット化で懸念している。
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長期の金利上昇を抑制しているのは海外投資資金の流入が主因であり、パウエル議長としては「グローバル運用で米国の長期国債は大切な資産」として操作は不利益と考えているようです。
昨年12月FOMC会見でも「ドイツや日本の国債利回りは極めて低く、米国の長期国債利回りは高い」。 現状のドイツや日本での0.2%前後の長期金利に比べ、米国では1.9%前後と高く、米国債は魅力的な投資対象。
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パウエル議長はFRBのバランスシートの圧縮開始を急ぐ姿勢を鮮明にしていますが、その理由の一端は、過度なイールドカーブのフラット化を回避するためと推察されます。
12月 FOMCの議事要旨から、FRBの次のような意向を読み取ることができる。
①利上げ回数を減らし短期ゾー ン金利上昇を穏やかにすること
②迅速なバランス シート大幅圧縮で長期ゾーン金利低下圧力を緩和してイールドカーブの過度
なフラット化を抑制する
長めゾーン金利に依存する年金基金や保険会社等(financial intermediaries)の低金利環境の長期化に伴う負担を軽減する狙いがあるのでは。
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一方、パウエル議長は「今の長期金利は低いが懸念してな い」「イールドカーブの傾きをFRBはコントロールしない」と明言。つまり、日銀のような特定年限の金利操作はせず、バランスシート圧縮でイールドカーブ全体を下支えしようとの意向のようです。
日銀の対策について
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対照的に日本銀行は、2%物価目標を掲げて、イールドカーブ上の2点、
①短期は翌日物金利、②長期は10年物の長期金利を、それぞれマイナス0.1%と「0%程度」に固定してイールドカーブ 全体を下方に押さえつけるイールドカーブ・コントロール(YCC)で国債市場を管理している。
ここから年金基金や保険会社の言い分です。
■10年債や20年債、30年債などイールドカーブ上の長め ゾーンで運用利回りが大幅に低下した打撃
に、最終受益者の長期資金を運用する年金基金や保険会社等は長年耐えてきた。
■ YCCで「ゼロ%程度」の長期国債利回りで許されている変動幅が拡大されそうになったことがあ
った。 米国での急上昇に連れて日本でも長期金利が急上昇しかけた局面で、
黒田総裁が「変動幅の拡大は不要」と発言。
その3日後、日銀副総裁の一人が「もっと上下に動いても良い」と述べ変動幅の拡大を容認、「黒
田氏の発言を修正した」(朝日新聞、2021年3月9日)と報道されました。
■ 結局、日銀は数日後の会合で、「国債等の市場における日 銀のプレゼンスの大きさを巡る批判の
高まり」(Bloomberg、 同3月16日)に対処することもなく、これまで口約束で許されてきた
±0.20%を±0.25%と明文化しただけで、変動幅の拡大は見送った。
■ 副総裁は、「イールドカーブ上の長めの金利ほど、経済や物価への直接的な影響(≒金融政策の機
能)よりも、 保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連を持つことを考慮すべき」
と、パウエル議長同様、節度を保った金融政策が大切と示唆した人物です(2017年1月)。
岸田首相、長短金利差を消失させたバズーカ批判
■ 岸田首相は、自身の著書「岸田ビジョン」(講談社、2021年 10月)で『バズーカの限界』を指
摘、銀行の収益源である長短金利差を消失させたアベノミクスの大幅な金融緩和の副作用が、地
方の中小金融機関の非常に厳しい経営悪化を 招き、地域経済を疲弊させていると批判。
■ 岸田政権下で安倍派の影響力は低下していることから、上述「岸田ビジョン」が批判する長短金
利差の消失をも たらしているYCCの撤廃は、任期満了まで1年程の黒田総 裁の下でも実現する公
算が出てきた。
■ 導入に向けたハードルがなお相応に高いと考えるのは、日本の経験を踏まえても、
①その経済・物価に与える効果が不確実であること、
②コロナ対策で財政拡張政策がとられ国債発行が急増する中で、FRBが長期金利(の上限)にター
ゲットを設定するYCCを導入すれば、金利上昇時にFRBが金利上昇の抑制を政府から強く要請
され、国債管理政策に事実上組み込まれて独立が強く制限される可能性があるためだ。
■ 経済情勢が改善し、インフレ率の上昇と共に長期金利が高まる局面では、FRBが国債買入れを加
速することで金利上昇を抑えるのではなく、YCC導入の目標を達したとしてそれを止めれば良
い、と考える向きもあるだろう。しかし、そうした局面でこそ、金利上昇を回避するように政府か
ら強く圧力が掛ったというのが、半世紀以上前の1942年から1951年にかけて、FRBが実際に経
験したことだ。
この苦い経験を忘れていないのであれば、FRBは簡単にはYCCを導入しない、と。
※本日の参照サイト
1)
