人新生について

人新生(じんしんせい、あるいはひとしんせい。英:Anthropocene)と呼ぶようです。これは地質学上の現代を区分する言い方で、提案されている段階(2000年から議論)のようです。その間、チバニアンは正式に組み込まれました。その地層より大きな区分で2000年に提案される時点では、完新生と呼ばれていたようです。斎藤幸平氏(参照1))のしっかりした内容をかなり大雑把にかいつまんでまとめてますので、詳細はそれぞれの参照サイトをみていただきたい。

まず人新生について、Wikipediaから引用します。なお地質学上の分類について概略は2)がわかりやすいです。2000年に提唱され、紹介するシンポジウムが2016年に開催される(これも参照1))というのは非常に遅いと思いますけど。人新生での気候に基づく環境の変化に対する考え方が根底にあるとの趣旨です。

 

(1) 用語の由来とその概念

 

・人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目して提案されている、地質時代における現代を含む

 区分。

 ※2002年のパウル・クルッツェン氏の論文には、18世紀後半から始まったとしています。

      

・オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェンらが2000年に

 Anthropocene(ギリシャ語に由来し、「人間の新たな時代」の意)を提唱した。

 ※実際には、アメリカ合衆国の生態学者ユージン・F・ストーマーが1980年代に

 "Anthropocene" という用語を造ったと記述されていて、パウル・クルッツェンがそれを独自に

 再発見して普及したとされる。

 

・その特徴は、地球温暖化などの気候変動、大量絶滅による生物多様性の喪失、人工物質の増大、化

 石燃料の燃焼や核実験による堆積物の変化などがあり、人類の活動が原因とされる。

 ※その堆積物の中にはプラスチック片も入っています。

 ※ここでいう人新生の趣旨は、人間が自然を支配・操作し、自然の脅威がなくなる「自然の終焉

  (しゅうえん)」を目指した近代化の果てが、むしろ、改変し過ぎた自然に人間が翻弄される、

  逆転現象をもたらしている時代ということ、です。

 

(2) さて本論です。 参照サイト1)では、今回のウクライナ侵攻に関して、

 

   ・北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大

   ・ウクライナ東部の領土問題

   ・プーチン大統領のロシア帝国復活という野望

   ・当然、今回の戦争は単一の理由で起きたことではなく、複合的な原因や事情が折り重なって

    いる。

   ・そのなかで、気候変動にからむ事情が、日本のメディアでは見落とされがち。

      ・気候変動がロシアの政治経済にもたらしている影響の分析が欠けている。

 

■今回の戦争について

 

 ・プーチンの意識や振る舞いが、気候危機という地球環境的要因が影響を与えている。つまり「人

  新世」の気候危機に対する適応の必要性によって規定されている、という考え方です。

 

 ・愚かな帝国主義的侵略であると同時に、「気候」戦争としての側面がある。自然的要因が社会的

  要因とますます切り離せなくなる人新世という時代においては、気候変動という視点から今回の

  戦争もとらえなおす必要がある。

 

■気候危機と新たな覇権争い

 

 ・気候戦争とは、気候危機を前にして、新しい世界秩序を確立し、覇権の維持を目指すグローバル

  な闘争の一形態。危機のもとでの新たな覇権をめぐる争いは、ロシアだけのものではない。この

  争いには、今回のウクライナとロシアの緊張関係を生むきっかけとなった欧米だけでなく、中国

  も深くかかわる。

 

 ・再生エネルギーや電気自動車への経済インフラの全面転換であり、EUのタクソノミー(環境に

  配慮した経済活動かを認定する基準)に見られる規制作りである。

 

 ・欧米や中国は、自分たちが独自に制定する基準のもとで、他国の規格外の商品を排除しつつ、

  「環境に優しい」自国の新商品を他国に売りつけようと争っている。それが脱化石燃料による経

  済成長を目指す「緑の資本主義」の中核戦略をなす。

 

 ・この新たなルール作りの蚊帳の外に日本がいるせいで、日本の政治もメディアもこの新しい世界

  秩序にむけての闘争について関心が極めて低い。 ※この基本的なルールづくりに日本が蚊帳の

  外という点は、日本は昔から変わっていないようですけど。

 

 ・実際には「緑の資本主義」も資源やエネルギーを必要とする。必要とされるのは、もはや化石燃

  料ではなく、リチウム、ニッケルやコルタンといったレアアースなどの新しい資源だ。そうした

  資源獲得をめぐって、南米やアフリカで米中の緊張関係が高まっている。

 

 ・今後、化石燃料の需要は伸び悩み、リチウムが「21世紀の石油」となる。当然、そうした転換

  は、これまでの化石燃料の輸出で金もうけをし、諸外国への影響を保持してきた国にとっては大

  きな損失。

 

 ・長期で見たときのロシア経済にとって、これは憂鬱(ゆううつ)の種。ロシアは石炭、石油や天

  然ガスの輸出大国であり、経済は化石燃料の上に成り立っている。

 

 ・世界の脱炭素化が実現していけば、化石燃料への需要も大きく低下する。そうなれば、ロシア経

  済は致命的なダメージを被る。それは、オリガルヒと呼ばれる新興財閥の超富裕層たちに支えら

  れたプーチン自身の権力体制に対する死刑宣告になるだろう。だとすれば、プーチンがそのリス

  クを認識しているのは間違いない 。事実、ロシアは、すでにレアアースの世界シェアを増やす

  べく動き始めている。

 

■ロシアを襲う気候危機
 

 ・現在の「緑の資本主義」は、気候変動対策としてはまったくもって不十分であり、世紀末までの

  気温上昇は、パリ協定の1・5度目標を大きく上回る2・4~2・7度になると言われている。当 

  然、そのレベルでの気候変動は、社会や生態系に極めて大きな被害をもたらす。ロシアもまた例

  外ではない。

 

 ・プーチンは気候変動について、気候変動懐疑派だという評価も散見される。また、北極海の海氷

  が融解すれば、北極海航(NSR)と呼ばれる新たな航海ルートが開けるため、そこでの利権を

  周到に狙っているという報道もある。恩恵は存在する。

 

 ・ロシアへの気候変動の負の影響は極めて大きい。

   ・ロシアにおける気温上昇は世界の他地域と比べて2.8倍のペースで大きく進んでおり、そ

    の結果、永久凍土の融解が進行している。これによって起きる地盤沈下は、国土の65%を

    永久凍土が占めるロシアにとっては深刻な脅威。

 

   ・2月末に発表されたばかりの「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評

    価報告書(AR6。第13章)でも指摘されているように、地盤沈下によってビル、道路、空

    港、パイプラインにすでに大きなダメージが出ており、その対策に大規模の出費がかかるよ

    うになっている。

 

   ・2020年にシベリアで大量の燃料が流出する事故が発生し、周辺地域に非常事態宣言が出さ

    れたのを覚えている人もいるだろう。これも気候変動によって凍土がゆるみ、燃料貯蔵庫の

    柱が倒壊したせいで起きた惨事である。

 

   ・そして、今後気温上昇が3度以上になれば、永久凍土がインフラを支える力は今世紀末まで

    にほとんどなくなる。その被害額は、2050年までに、970億ドル(約10兆円)という試算

    もある 。

 

■ウクライナという国について

 

  ・ウクライナは豊かな穀倉産出の地域

 

  ・天然資源にも恵まれている。とりわけ半導体製造に必要な、ネオン、アルゴン、クリプトン、

   キセノンなどの原材料ガスの主要産出国である。ネオンガスにいたっては世界の70%もの量

   を供給している。

 

  ・ソ連時代から宇宙分野や核開発の拠点だったウクライナは「東欧のシリコンバレー」として、

   ITやハイテク産業の発展に注力してきた。人口4400万人のウクライナで、IT技術者は20万人

   にも及び、グーグルなどの海外企業からも多くの発注を受けていたので

   ある。ウクライナにR&Dセンターを置く企業もアマゾンからサムスンまで数多くある。1人

   あたりGDPでみればロシアより貧しいが、科学技術の水準は非常に高い。

 

※ロシアにないものがウクライナにはある、というのがモチベーションを掻き立てたと。

 

今回のロシア侵略を新たな「気候」戦争としてもとらえる必要がある。また、ロシアに対する欧米や中国の対応も、気候危機のもとでの覇権をめぐる帝国間の争いとしてとらえなおさねばならない。

 

※背景の基本的な概念を持っておくことが、今後の戦略として必要だと思います。かなり重要な視点だと思います。

 

ご健康にそしてご安全に!

 

※本日の参照サイト

 

1)

 

2)

 

3)地層年代の詳細は以下の日本地質学会からどうぞ。

http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor//name/ChronostratChart_jp.pdf

 

4)パウル・クルッツェン氏の論文です。

NATURE | VOL 415 | 3 JANUARY 2002 | www.nature.com