『わたしを離さないで』(原題:Never Let Me Go /2010年イギリス、アメリカ/105分)
監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
原作:カズオ・イシグロ
製作:アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ
製作総指揮:アレックス・ガーランド、カズオ・イシグロ、テッサ・ロス
音楽:レイチェル・ポートマン
撮影:アダム・キンメル
編集:バーニー・ピリング
出演者:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリング、サリー・ホーキンスら
100点満点中79点
クローン技術によって“オリジナル”のコピー人間をドナーとした、官制による臓器産業(売買)が当たり前となった異世界のイギリスを舞台とした社会派の作品。
これに加え、少年期~青年期に渡る男女の嫉妬と恋慕を絡めた人間模様を描いたヒューマン作品でもあります。
1960年代後半から70年代に掛けて画期的な医療技術の開発と国策により、平均寿命が100歳を超えた近過去・平行世界(架空)のイギリスでは、寄宿学校に似たドナー育成施設があり、物心が付いたクローンの男女はここに収容され、適合する“オリジナル”に臓器移植が必要になるまで、この制度に従順に従うドナーとして育てられます。この社会では、ドナーとして育てられたクローン人間には基本的人権は全く無く、この施設を預かる教師たちによって...
柔らかいが、徹底した洗脳を施され、『幼い頃から自分の臓器は適合する大人に提供されるべきものだと教え込まれ、20代前半でその命を閉じることを覚悟している少年少女達がこの施設にはいるのです。』
こう書くと、最初から陰惨なシーンの連続で見せるホラー作品のような印象を持たれるかもしれませんが、そうではありません。
序盤は可愛らしい少年少女が、イギリスの田舎の牧歌的な風景の中で、素朴な寄宿舎生活を送っているほのぼのとした雰囲気で始まります。中盤は、あの『小さな恋のメロディ』を彷彿とさせるような幼い恋愛が交差する切ない展開があり、終盤では、実際に臓器を摘出され弱って行く青年の姿や臓器摘出直後に手術室で死亡する若い女性の残酷な様子が描かれます。
前半の穏やかな流れから、徐々に陰惨な場面に移っていくので、実際の演出は激しくはないのに、胸にグサッと来る心的な重苦しさや不条理感が強く残ります。
原作は、長崎市出身で、イギリス国籍のカズオ・イシグロの同名小説です。彼は1960年、5歳の時に海洋学者の父親が北海で油田開発前調査をすることになり、一家でサリー州・ギルドフォードに移住しました。1978年にケント大学英文学科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科を卒業しました。本人はほとんど日本語を話せないそうです。
主演のキャリー・マリガンは介護人「キャシー」を演じます。この役はクローンドナーですが、自己申告により数年間を介護人の仕事をしながら自分の臓器提供までの期間を過ごす役です。少女期は同じクローンの少年少女と共に寄宿舎で育ちます。
同じ寄宿生「トミー」は、最近「アメージング・スパイダーマン」で主演したアンドリュー・ガーフィールドが演じます。この役は、他の男の子からいじめを受けやすい、精神的に繊細で傷つきやすい男の子です。彼のイメージにぴったりの役です。
また同じ寄宿生「ルース」は、キーラ・ナイトレイが演じます。この役は相思相愛の少女「キャシー」と少年「トミー」に嫉妬し、色仕掛けで二人の仲を裂く寂しがり屋な女性です。これも彼女にぴったりな役ですね。
(あらすじ)
介護人「キャシー」は手術室隣の研修室で担当のドナー「トミー」の臓器摘出手術を見守っている。
そして・・・自分の少女期に思いを馳せる。
彼女は寄宿生であった。そして・・・最愛の「トミー」も・・・親友「ルース」もまた、同じ寄宿学校の生徒であった。
ここイギリスでは、1960年代後期に画期的な医療技術と医療政策が確立され、その後の10年で平均寿命が100年を超える社会となっている。
それは、臓器提供を前提としたクローン人間の育成が国家事業として行われ、いくつかの施設で、このクローン人間が大量に養育されていたからであった。
彼らドナーは、専任の教師によって行われる徹底的な洗脳教育によって自我を封じ込められ、従順な性格で自主性が全く無い人格に育てられる。つまり、自分の体は自分のものでなく、将来自分が成人したあかつきには、この体は他人に譲り渡すものであって、その臓器移植で、自分の生命が危うくなろうとも、甘んじて受け入れる覚悟のできている“製品”が彼らなのだ。
彼らは18歳までこの寄宿舎で過ごし、その後、各地の待機所に振り分けられ、“終了”の通知が来るまで、仕事もせずに、漫然と待機する運命である。そして、おおよそ20代前半で、その生涯を閉じるのである。
「トミー」は癇癪持ちで、変わり者であったため、寮生からも仲間外れになり、イジメの対象であった。そして、そのイジメを主動するのは「ルース」である。
そんな“弾かれ者”の「トミー」に恋慕するのは聡明な「キャシー」である。事あるごとに、「トミー」をかばう「キャシー」の姿は健気で・・・二人のプラトニックは関係は周知の事実となる。
それを見た「ルース」は、二人の関係に割って入り、二人の関係を引き裂くのであった。かくして、「トミー」は「ルース」とカップルとなり、その成り行きを「キャシー」が静観する3角関係となるが・・・臓器提供の告知は、容赦なくやって来る。













































