Amazon Videoで出会った名作ドラマ『BOSCH/ボッシュ』 | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『BOSCH/ボッシュ』(原題:Bosch 2014年2月6日 - 2021年6月25日公開:現在もシーズン1~7配信中)

 Amazonオリジナルドラマ「BOSCH/ボッシュ」は骨太のハードボイルド作品です。舞台は、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市警察ウエスト管区に実在する警察署「ハリウッド署」 ここに勤務する殺人課刑事で一等巡査部長である「ハリー・ボッシュ」を主人公とした人間関係と次々起こる凶悪事件とを巧みに絡み合わせたストーリーが見る者を飽きさせないスピーディな展開を見せる作品です。シーズン1~7とその後の「番外編」的な「ボッシュ: 受け継がれるもの/原題Bosch: Legacy」につづく大作ドラマで、全編に渡ってアート・ペッパーやジョン・コルトレーン等のモダンジャズが流れるシーンがちりばめられていて、大人のムードです。何か今の静かなジャズブームを予知していたかのようにも感じます。本シーリーズ中にたくさんの魅力的な人物が登場するので、迷わないよう、今ブログでは主要キャストについてやや詳しくあらかじめ整理して記しておきます。ドラマを鑑賞し始めて、各人物像の確認にも使えるよう多少細かく、それを記述します。

 

【登場人物と俳優】

ハリー・ボッシュ・・・本作品の主人公。ロサンゼルス市警察ハリウッド署殺人課の刑事で、50代半ばの白人。事実上、この警察署の殺人課の現場指揮官でプレイングマネージャー的な存在です。警察官になる前は、陸軍兵士として第一次湾岸戦争に志願兵として従軍し、その後退役しました。ロサンゼルス市警察で刑事になった後の2001年9月11日の同時多発テロ後に、教育士官として志願し、最終的には特殊部隊隊員としてアフガニスタンに派遣された経験もあります。彼は、殺人捜査に関して独特の嗅覚と独自の観察眼を持ち、難解事件を数多く解決してきた実力派の職人警官で、市警の上層部からも“その点”においては高い評価を受けている逸材です。しかし、警察のルールや煩わしい社会規範に従わず行動することたびたびで、それゆえに他の捜査機関や地域社会との間で軋轢を生み、シーズン1では冒頭から民事訴訟の被告となっています。

 年頃の娘と別れた元妻が唯一の家族で、別の家族を持った実父とは疎遠どころか、1度目の従軍後に完全に決別しています。実母は売春をしながら、必死にハリーを育てようとしましたが、少年期の多くの時間は養護施設で過ごすことになり、彼が12歳の時、実母は客に絞殺遺棄され、事実上の孤児になってしまいます。この一件が、その後の彼の生き方を大きく左右することとなり、本編のシーズン1~4までのストーリーの根底に深く横たわります。人付き合いが苦手で相棒としっくり来るようになるには、少なくとも数週間~時に数カ月かかり、捜査車両は特別な場合を除いて相棒には一切運転させません。また、大変な皮肉屋であり、ズバッと本音でものを言う性格も災いして、警部や警部補クラスの一部からは相当嫌われています。普段携帯する拳銃も、ロサンゼルス市警察の標準規格の9mm口径の中口径オートマチック拳銃ではなく、SWAT等の特殊作戦従事者が携帯する.45口径の大口径オートマチック拳銃です。この辺の設定も彼が陸軍特殊部隊出身の頑固な「職人警官」であることや自他ともに認める「実力派警官」であることを視聴者に実感させてくれる“興味深い”設定です。そして彼の愛車は、旧型のJeepチェロキー(紺色)で、ロサンゼルスが一望できる高台に建つこじんまりした2LDK+Sの持ち家に住んでいます。この物件は、刑事になりたての頃、連続強盗団に対するFBIとの合同捜査中の被弾にいたる実話を原作とした映画の脚本制作に、彼が協力したことで多額の報酬を得、それを元手に購入しました。夜ともなれば、眼下に広がるロサンゼルスの夜景は壮観で、劇中では「夜になれば、宇宙船に乗っているみたいだね。」とシーズン1でやっとこさ親子関係を取り戻す愛娘から言われるほどです。

 このハリー・ボッシュを演じるのはタイタス・ウェリヴァーです。彼は2005年のイーサン・ホーク主演の「アサルト13 要塞警察」や2007年のベン・アフレック監督の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」と同監督の2010公開「ザ・タウン」に出演し、その他映画やテレビドラマに多数出演している名わき役です。本作品では、回が進んで行くとプロデューサーとして製作にもかかわるようになり、続編のオリジナルドラマ「ボッシュ: 受け継がれるもの/原題Bosch: Legacy」では一部脚本も担当しています。

 

ジェリー・エドガー・・・ボッシュの相棒。年齢は30才代半ばのハイチ出身の刑事。左ほほに大きな謎の傷があり、やや控えめでいたって真面目な性格ですが、捜査となると徹底的に没入する熱血漢です。イタリアンファッションを愛し、プライベートでは高級セダンに乗り、離婚した妻と十代の息子2人が家族といえば家族です。離婚の理由ははっきりしていませんが、どうも彼が不倫をしたことが原因で不動産業を営む妻が激怒、劇中ではずっと別居していますが、時々元妻の邸宅に泊まっては、彼女と夜を過ごすといった「???」な生活をしています。

 ボッシュとのコンビは4年程で、一緒にコーヒーが飲めるようになるまで4カ月以上かかったということです。いかに、ボッシュがとっつきにくい「一匹狼」なのかがうかがえます。それにもめげず、ひたむきに仕事を続け、刑事の仕事が天職であって、大好きであると劇中で豪語します。ボッシュのことは尊敬していますが、回が進むにつれ、彼の“闇の部分”に対する恐れや捜査手法に対する疑念が胸中に生まれてきます。

このジェリー・エドガーを演じるのは、ジェイミー・ヘクターです。日本においては、その知名度においてまだまだですが、HBOのドラマシリーズ「The  Wire」の麻薬王役に抜擢された実力派俳優で、本作での知的な刑事ジェリー・エドガー役でさらにその評価を上げたようです。

 

グレイス・ビレッツ・・・ボッシュの直属の上司。ハリウッド署の警部補で刑事課全体の責任者。4~5チームを束ねる堅実な女性管理職でありながら、時にルールや規範を完全無視するボッシュの一番の理解者でもあります。署の屋上で一本のタバコを彼と回し飲み(回し吸い)するほど親しく、退勤後、バーでお互いの胸中にある心配事を相談し合うほど気持ちが通じ合っています。・・・とはいっても、この二人は恋愛関係にあるわけではなく、彼女には、離婚した夫と年頃の娘が一人いて、作品中では同性の恋人が必ずいて、それを部下はみんな知っていて、市警もそのことをきちんと理解しているので、アメリカ社会は日本のそれと比べてはるかにLGBTQに対する理解が進んだ社会なんだなあと実感させれます。・・・なので、ビレッツとボッシュの関係は、上司・部下のそれを超えて、お互い一蓮托生の「ほとんど戦友」の関係であると言えます。ちなみに、彼女と離婚した夫はすぐに再婚し、その相手はロサンゼルス市警察の警部で、のちにビレッツ警部補の上役として、ハリウッド署に赴任してきます。いろいろな意味で複雑ですが、こういった人間関係がおもしろいですねこのドラマは。

 グレイス・ビレッツを演じるのは、エイミー・アクィノです。あまりなじみはないですが、本作品中でもその演技は確かで、アメリカで有名なドラマシリーズ「ER」や「CSI:ニューヨーク」、「プリズン・ブレイク」等に出演している名わき役です。

 

アーヴィン・アーヴィング・・・ロサンゼルス市警察の副本部長で、のちに本部長となります。部下からは「チーフ」と呼ばれています。地元出身で、巡査からたたき上げ、今の地位まで上り詰めた警察官僚。警察本部麻薬課で重大事案を次々に解決し、数々の麻薬組織の撲滅に貢献したことが評価され、当時の市警幹部からの引っ張りもあって今の地位を得ました。かなりの野心家で、チャンスと見れば様々な手を使って、自分を蹴落とそうとする勢力を排除し本部長にまで駆け上がります。人心の掌握力は並外れて高く、市民からの信頼も厚い人物です。あまりに人望があるため、シーズン後半では政治の場面に引っ張り出されることが徐々に多くなり、人生の岐路に立たされることが次第に増え、それにつれて敵も多くなっていきます。息子もロサンゼルス市警察の警官となり、父と同じ道を歩んでいます。

 アービン・アービングを演じるのはランス・レディックで、キアヌ・リーブス主演の映画「ジョン・ウィック」シリーズ4作にコンチネンタル・ホテル・ニューヨークのクローク、シャロン役で出演していることは有名ですね。ピアニストでもあります。劇中でもそのピアノの腕をたびたび披露します。その他の映画やドラマにも多数出演している存在感ある名わき役です。ただ残念なのは、2023年3月17日、カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅で虚血性心疾患が原因で亡くなったことです。享年60歳。ご冥福を祈ります。

 

マデリン(マディ)・ボッシュ・・・ハリーの娘。シーズン1では高校生でしたが、回が進むごとに美しく成長していきます。理知的で父想いの娘を、ハリーは目に入れても痛くないと言わんばかりに接します。やや過保護・過干渉な感じさえする程です。母の都合で、ハリーと離れたり同居したりしながら、父娘の愛情をさらに深めていきます。本当に可愛い女性です。父母がそれぞれ警察官であることから、司法制度や刑事捜査に徐々に興味を持っていきます。父譲りなのか、ハリーと初めて射撃場に行き、射撃するシーンでは、9mm口径のオートマチック拳銃の撃ち方のコツをあっと言う間に覚えてしまい、コーチ役のハリーを大層喜ばせます。登場ごとに彼女の将来がどうなるか、どんどん楽しみになっていくでしょう。

 マデリン・ボッシュを演じるのはマディソン・リンツです。彼女は、6歳から演技の道に進み、この役と出会いました。今後さらに大化けする、将来が有望な俳優です。

 

エレノア・ウィッシュ・・・ハリーの元妻。元FBIの捜査官で、プロファイリングのプロフェッショナル。のちに映画化されるFBIとロサンゼルス市警察との合同捜査事件でハリー知り合い、瀕死の重傷を負ったハリーをエレノアが助けたことから交際に発展、結婚しました。一女マディをもうけた後、夫婦関係が悪化し離婚します。その後、エレノアは趣味のポーカーがFBIの規律に抵触するとのあらぬ嫌疑をかけられ、FBIを退職。プロのカードプレーヤーとなり、中国系アメリカ人と再婚します。ハリーが関わった事件の情報をFBIに提供したことで、復職の道が開かれそうになりますが、アクシデントによりこれは永遠に不可能となります。そんなエレノアにハリーは未練があります。ずっと。

エレノア・ウィッシュを演じるのは、サラ・クラークです。彼女は、インディアナ大で美術とイタリア語を学んだ後、建築写真家として働きながら演技を学び、1999年からメディアに登場するようになります。最も知られている出演作品はニーナ・マイヤーズ役で出演したテレビドラマ『24-TWENTY Four-』です。映画では、2008年公開の『トワイライト~初恋~』にレネ役で出演し、その後のシリーズ2作にも出演しています。

 

バレル・ジョンソン・・・ハリウッド署殺人課のベテラン刑事。身長の割に横にでっぷりと肥満した体型から、ハリーが付けた愛称は「ビア樽」 定年間近の老体に鞭打つように、殺人捜査に地道にまい進する署のムードメーカー。大昔に見た懐かしの映画の生き字引で、3度の離婚経験があり、現在は3人の元妻に生活費を送りながら犬一匹と静かな独身生活を送っています。

バレル・ジョンソンを演じるのは、トロイ・エヴァンスで1993年本邦公開のスティーブン・セガール主演「沈黙の艦隊」に退役した海軍砲兵役で出演の他、数多くの映画やドラマに出演した実績を持つ名わき役です。

 

クレート・ムーア・・・ハリウッド署殺人課のベテラン刑事でジョンソンの相棒。体格が良く、高身長なので、ハリーが付けた愛称は「デカ箱」 ベトナム戦争の従軍経験がある古参の警官で、ジョンソンとの掛け合いが、漫才のようで面白い。派手な捜査活動はしない代わりに、地道な周辺捜査から事件の核心に迫る物証を見つけ出す特技を持っています。

クレート・ムーアを演じるのは、グレゴリー・スコット・カミンズで、彼は1992年公開の「バットマン・リターン」や1993年公開の「クリフハンガー」など多数の映画やドラマに出演した名わき役です。

 

ジョン・マンキウィッツ(通称 マンク)・・・ハリウッド署の制服警官で主に外来の受付や電話のオペレーション業務を担っている巡査部長です。ハリウッド署では、常に制服組と私服組が根深く対立していますが、なぜか彼は制服警官でありながら私服組の肩を持つことが多い。特にビレッツ警部補とボッシュ刑事の人物を高く評価しているようで、二人の危機をたびたび救います。ある意味、ハリウッド署を俯瞰して見ながら、その中心で冷静に署の良心の役割を果たしているとも言えます。

マンク巡査部長を演じているのはスコット・クライスで、彼は2006年公開のトニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演の「デジャヴ」や同年公開のウィル・スミス主演「幸せの追求」などの映画やTVドラマ多数に出演しています。

 

ハニー・チャンドラー・・・行政訴訟を得意とする女性弁護士。シーズン1の第1話から、主人公ハリー・ボッシュと対立する原告側の代理人です。その後も、ハリーが捜査する刑事被告人の弁護を担当するなど、ハリーとぶつかります。たびたび問題を起こす古参刑事がを大層気に入っているようで、毎回嬉々として法廷に立っている様子です。このドラマシリーズで、主人公に次ぐ影響力のあるキャラクターです。

 ハニー・チャンドラーを演じるのは、ミミ・ロジャースで彼女は1987年、トム・ベレンジャーと共演した『誰かに見られている』で注目され、1977年にサイエントロジーのカウンセラーと結婚したが3年で離婚し、1987年にトム・クルーズと再婚するが1990年に離婚したという経歴を持っています。1997年には『オースティン・パワーズ』、1998年には、SF作品『ロスト・イン・スペース』にも出演しています。

 

以上が、シリーズ全編に渡ってハリー・ボッシュに深く関わってくるレギュラーメンバーです。