経歴詐称してでも名声を....『イヴの総て』(ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『イヴの総て』(原題:All About Eve /1950年アメリカ/138分)

監督・脚本:ジョセフ・L・マンキーウィッツ

製作:ダリル・F・ザナック

音楽:アルフレッド・ニューマン

撮影:ミルトン・クラスナー

編集:バーバラ・マクリーン

出演者:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、セレステ・ホルム、ヒュー・マーロウ、グレゴリー・ラトフ、セルマ・リッター、マリリン・モンローら

100点満点中72点



 1950年公開のモノクロ作品で、ニューヨーク、ブロードウェイの舞台裏を赤裸々に描いた社会性のあるヒューマンドラマ。

 無名の女優志望の女性が、知性と感性と魔性を駆使し、舞台に関わる人々を次々に調略し、自らの才覚で人気脚本家の書いた舞台の主役座を射止める様子を描いています。

 1950年のアカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞(ジョージ・サンダース)、衣装デザイン賞、録音賞の6部門で賞を獲得した傑作です。


 監督のジョセフ・L・マンキーウィッツは脚本も担当していますが、彼はペンシルベニア州ウィルクスバリ出身で、兄のハーマン・ジャコブ・マンキーウィッツは『市民ケーン』の脚本家、息子のトム・マンキーウィッツは007シリーズ、スーパーマンシリーズの脚本家です。彼本人は1949年の『三人の妻への手紙』でもアカデミー監督賞と脚本賞を受賞しています。数々の作品を手掛けましたが、1963年の『クレオパトラ』の失敗以来、作品制作は激減し、1972年の『探偵スルース』を最後に、映画からは遠ざかり1993年心不全で没しました。




 主演のアン・バクスターは、女優志望の「イヴ・ハリントン」を演じます。この役は、地方出身の戦争未亡人であると経歴を詐称することで同情を買い、有名舞台女優の付き人となる野心的な女性です。その美貌と機転で、有力者に取り入り、新作舞台の主役に抜擢されます。バクスター本人は、インディアナ州ミシガンシティ出身で、1946年の『剃刀の刃』でアカデミー助演女優賞を受賞し、1956年の『十戒』でエジプトの女王を演じました。1971年にローレン・バコールの後を受けて、『イヴの総て』の舞台版『Applause』で今度は「マーゴ」役を演じ、映画作品そのままの新旧交代劇を私生活でも送りました。




 同じく主演のベティ・デイヴィスは、中年女優「マーゴ・チャニング」を演じます。この役は長らくブロードウェイの主役を演じている大御所で、脚本家や演出家も彼女の意向には逆らえない威厳の持ち主です。演出家も劇場も彼女の大看板なくして、生きながらえないジレンマを抱えているため、老いていく大女優に逆らうことができません。ここに、新進の女優は目を付けたわけですね。デイヴィス本人は、マサチューセッツ州ローウェル出身で、1931年にユニヴァーサル映画の大部屋に入り、当時、スターであったコンラッド・ネイゲル主演『姉妹小町』で銀幕デビューしました。個性的な顔立ちが災いしてユニヴァーサル映画では、さほどの活躍はできませんでしたが、RKO製作の1934年のジョン・クロムウェル監督作品『痴人の愛』で、レスリー・ハワード『風と共に去りぬ』において、ヒロイン「スカーレット・オハラ」が妄執する美男「アシュレー・ウィルクス」役を演じた)と共演し、当時の売れっ子女優たちが敬遠する“史上最低最悪のヒロイン”と評された悪辣な女性「ミルドレッド」役を、自ら志願し獲得しました。移ったばかりのワーナー側と対立しながら、他の女優を尻目に、この他社RKO作品に出演したことで、演技派の大女優の道を歩むこととなるのです。



(あらすじ)

  「イヴ・ハリントン」は戦争で夫を亡くし、困窮しながらも、サンフランシスコでの観劇によって、生きる希望を得たという地方出身の女性である。毎晩、ブロードウェイのとある劇場の裏口に立っては、人気女優「マーゴ・チャニング」の入り待ち・出待ちをする日々である。

 彼女の存在は、劇場関係者の知るところであるが、ある晩、「マーゴ」の親友「カレン・リチャーズ」の目に留まり、「カレン」はお節介にも、彼女を「マーゴ」に紹介することにする。

 聡明で誠実、機転の利く「イヴ」は、身の上の不幸?にも助けられ、崇拝する女優「マーゴ」の付き人として、すぐに採用される。ここから数か月で、「マーゴ」のすべきあらかたの雑務を全てこなすようになった「イヴ」は、今や「マーゴ」の片腕と言っていい程である。

 一方、大御所「マーゴ」は次回作の準備や日々の舞台演技で、周囲と衝突することが多くなっていた。看板女優であるがゆえの難しさで、関係者もお手上げ状態である。そんな中、親友である「カレン」があるイタズラを仕掛けることで、「マーゴ」と「イヴ」、そして関係者の行く末を大きく変える出来事が起こる。この出来事によって、「マーゴ」を崇拝する「イヴ」が表舞台に出ることになり、今までの人間関係が大きく変わろうとしていた。その裏には、周到に準備された「イヴ」の策略があるのだが・・・