上質な“仏製”ハードボイルド『バレッツ』(リシャール・ベリ監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『バレッツ』(原題:L'immortel /英題:22Bullets/2010年フランス/117分)

監督:リシャール・ベリ

脚本:リシャール・ベリ、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール、エリック・アスス、マチュー・デラポルト

製作:リュック・ベッソン、ピエランジュ・ル・ポギャム

製作総指揮:ディディエ・オアロ

音楽:クラウス・バデルト

撮影:トマス・ハードマイアー

編集:カミーユ・ドゥラマーレ

出演者:ジャン・レノ、カド・メラッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、マリナ・フォイス、リシャール・ベリ、デヴィド・コービ、ムーサ・マースクリら

100点満点中81点



Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 ジャン・レノ主演、リュック・ベッソン製作に惹かれて拝見しましたが、“外れなかった”ハーボイルド。原題はフランス語で、「不滅」「不死身」を意味し、英題の意味は、「22発の銃弾」です。

 マルセイユでの6週間のロケ、アビニョンのロケ、さらにパリでの8週間のロケを経て完成された作品で、リアルな銃撃シーンを交えたアクションを横糸に、やや複雑な人間関係の流れを縦糸として描かれた見応えのある内容です。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 ジャン・レノは、実在の人物「ジャッキー・イベール」をモデルとした主人公「シェルリ・マッティ」を演じ、彼の無骨なキャラクターを生かして、ヤクザを引退して平穏な暮らしを選んだ、独特の人生規範を持った中年男性です。二度の結婚を経て、堅気になってからも、二つの家族に大きな責任を負いながら、かつて、“裏稼業”で拡大した事業を売却した巨額の資金で地味でも静かな生活を送っています。友情に厚く、律儀な性格、オペラが好きで、家族に対する細やかな愛情も持ち合わせている人格者ですが、過去には悪どい盗みや殺人もいとわずやりぬいてきた犯罪者でもあります。ただし、警官殺しと麻薬にだけは、決して手を染めないというルールを自分と自分の仲間に課してきました。終盤の彼の悲哀に満ちた“泣き”の演技が見ものです。そして、ジャンには、やはり、“骨太”のハードボイルドが似合うのです。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 彼の盟友「トニー・ザッキア」はカド・メラッドが演じ、独自で拡大した事業以外に、「シェルり・マッティ」の事業の一部を譲渡され、現在では事実上、マルセイユの闇の支配者です。多くの武装した部下を持ち、マルセイユの他勢力に対抗するため、さらなる“新事業”を手掛けようと商魂を燃やす野心家です。手下を平気で殺したり、悪徳政治家とつるむなど、現在の「シェルリ」とは真逆の、見るからに「骨の髄」まで真っ黒な悪人です。自分の健康のためなら、他人に喫煙を禁じたり、携帯からの電磁波を気にする神経質な親分でもありす。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 彼らの悪事を追う女性刑事「マリー・ゴールドマン」は、マリナ・フォイスが演じ、殉職した夫の無念を晴らそうと「マルセイユ・マフィア」の一掃に執念を燃やす職業人です。序盤の彼女は、警官の夫を殺害したのは「シェルリ」だと思い込んでいます。

 劇中で、マルセイユの美しい街並みが収集されないゴミの山々に汚されていたり、マルセイユ警察の署長が、組織暴力撲滅に消極的だったり、走る車がBMWやアウディばかりであるなど、現在のフランスがEUの中で、リーダーシップを十分発揮できていない国内状況が透けて見えるようなシーンも幾つかでてきます。


(あらすじ)

 刑務所で出会った、マルセイユのボス「アンティーク」こと「マルシア・パドヴァノ」の仇を討ったことで、その後の「マルセーユ・マフィア」の新しい勢力として台頭した「シェルリ・マッティ」は、現在では、自分のシマを手放し、この稼業から足を洗っている。二度の結婚を経験し、二度目の妻は元娼婦であったが、売春と麻薬を止めさせて更生させ、彼女との間に娘と息子をもうけ、平穏な暮らしをしている。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 ある日、息子との買い物の途中、街の地下駐車上で、武装した一団に襲われ体中に銃弾を受けて、病院に搬送される。なんと22発の銃弾を浴びながらも一命を取り留めた彼ではあったが、顔面の銃創と、左足の麻痺、右手の神経伝達異常の障害が残る。

 彼を襲った一味の正体は不明だが、マルセイユ警察きっての対組織暴力のベテラン「マリー・ゴールド」刑事が事件解明に奔走する事となる。しかし、被害者の「シェルリ」からも、当の警察署長からも、さしたる協力を得られない状況である。

 一方、「シェルリ」は、親友の弁護士「オレリオ」や古参の部下達に犯人の黒幕を探るよう命じると共に、家族の安全確保をするよう指示する。

 そして、犯人に関する情報を持つバーテンダーを捕まえ、薬を盛って自白させると・・・彼にとっては、意外な黒幕が判明する。

 これから、さらにたくさんの“血”が流れることになる。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-