予期せぬ暴力に、なんと無抵抗で無力な・・・『ある戦慄』(ラリー・ピアーズ監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。


『ある戦慄』
(原題:The Incident/1967年アメリカ/100分)

監督:ラリー・ピアーズ

脚本:ニコラス・E・ベア

製作:モンロー・サクソン、エドワード・メドー

音楽:テリー・ナイト

撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド

編集:アーマンド・ルボヴィッツ

出演者:トニー・ムサンテ、マーチン・シーン、ボー・ブリッジス、ロバート・バーナード、エド・マクホマン、ダイアナ・ヴァン・ダー・プリス、キャスリーン・スミスら

100点満点中68点


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 1960年代のニューヨーク市地下鉄の一車両で繰り広げられる密室群衆で、16人の乗客に対し、二人のチンピラが、暴力的に絡んで行くことで、現代社会の病巣を鋭くえぐる社会派のサスペンス作品です。グランドセントラル駅に向かう地下鉄4号線の一部「レキシントン街線急行」が舞台となっているようで、そのほとんどが高架線となっている区間が舞台です。ロケに使用された駅は、はっきり分からないよう配慮?されたふしがあり、確かに確認できるのは「マウント・エデン・アヴェニュー駅」等少数であり、現在では多分その外観が全く違う駅舎となっているはずです。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 時代を感じさせるモノクロ作品で、出演者のアップを多用し、それを持って役者の緊張感やシーンの緊迫度を演出する手法で、中盤以降展開する“異常事態”を煮詰めて行きます。

 各役柄が、各々それなりの問題を抱えながら列車に乗り込み、利己的で他人に無関心な都市生活者の性向を、批判的に描き、理不尽な暴言・暴力に対しても、自分に振りかかるまでは、無関係で通そうとすること自体が“問題なのだ”と言わんばかりの内容です。確かにそうですね。無抵抗なばかりに、さらに大きな悪い結果を生むことがあるかも知れません。


 登場人物は、4歳の娘を持つ「ウィリクス夫妻」。この夫は妻を全く愛していないばかりか、愛娘も「事故」でもうけたと考えるようなエゴイスト。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-  

 そして、 「アリス」と「トニー」の若いカップル。息子に金の無心に行くが断られて帰る老夫婦「サム」と「バーサ」。陸軍一等兵の「デフリンジャー」と「カーマッティ」。パーティ帰りの高校教師「パービス」と「ミュリエル」夫婦。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

断酒中の中年男性「ダグラス・マッカン」と同性愛者「ケネス・ナチス」。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
 

 黒人で白人嫌いの「アーノルド・ロビンソン」とその妻「ジョーン」。あと、始めから列車に乗っている泥酔者16人。そこへ、ならず者「ジョー・フェローン」と「アーティ」の二人が現れ一人ずつ難くせをつけながら暴言・暴行を加えて行くという流れです。

 モノクロ作品ゆえ、登場人物全てが「魑魅魍魎」 (ちみもうりょう)の類に見え、深夜2時過ぎに展開する列車内の薄暗さがさらに増幅されて、大きな効果を生んでいます。陰湿なチンピラ二人の横暴振りが、何とも腹立たしくなる一方、なすがままにそれを許し、何の共闘も防御手段も講じない乗客達に対し、 “イライラ感”が募ります。とにかく、観ていられない程“歯がゆく”“イライラ”します。

「こんな大人たちでいいの??」


(あらすじ)

 深夜のニューヨークのビリヤード場で、暇を持て余したチンピラ「ジョー」(トニー・ムサンテ演ず)と「アーティ」(マーティン・シーン演ず)は、店主からの閉店の声にも耳を貸さない。店主からしつこく迫られ、しぶしぶ退店するが、まだ遊び足りない様子だ。

 
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

 仕方が無いので、カツアゲか強姦でもして時間を潰そうと物陰に潜んで“獲物”を待つが、引っかかったのは中年男性で、財布の中身はたった8ドルほど。

 「割に合わねー」とばかりに、こっぴどくこの中年男性をぶちのめす。

 今度は、タイムズ・スクウェア―まで繰り出して、もう一暴れしてやろうと近くの高架駅に向かう。

 この後、彼らが乗り込んだ列車には、泥酔者と彼らとは人種の異なる善良そうな乗客が持っている。

 こりゃ面白いと、手始めに泥酔者にマッチで火を付けようと「アーティ」が悪さを始め、「ジョー」は暴言を吐きながら、乗客を威嚇し始める。これが、惨劇の始まりである。


Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-
Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-