『イカとクジラ』(原題:Tne Squid and the Whale/2005年アメリカ/81分:G)
監督・脚本:ノア・バームバック
製作:ウェス・アンダーソンら
音楽:ブレッダ・フィリップス、ディーン・ウェアハム
撮影:ティム・ストリート
出演者:ジェフ・ダニエルス(「カイロの紫のバラ」「ブラッド・ワーク」)、ローラ・リーニー(「トゥルーマン・ショー」)、ジェシー・アイゼンバーグ(「ソーシャル・ネットワーク」)、ウィリアム・ボールドウィン(「ガラスの塔」)、アンナ・バキン(「X-メン」)ら
100点満点中80点
息子役に、『ソーシャル・ネットワーク』で、「マーク・ザッカーバーグ」役を演じたジェシー・アイゼンバーグを配し、父親役は、このとこを悪人役が多いジェフ・ダニエルズ、母親役は、「トゥルーマン・ショー」の母親役のローラ・リーニ―を当てた夫婦と家族の“愛憎”を描いたヒューマン作品です。
製作に名を連ねるウェス・アンダーソンは、『ライフ・アクアティック』等で、この手の家族争議的「軋轢」や「ぶつかり合い」を得意とする監督です。
今作では、『ライフ・アクアティック』で脚本を手掛けたノア・バームバックが監督と脚本を兼務して、ある一家の破綻を描いています。
主演のジェフ・ダニエルズは父親「バーナード・バークマン」役で、かつて、数作を世に送り出したべストセラー作家ですが、現在では新たな創作が、全く評価されず出版さえ叶わない大学の教員となっています。
彼が“ダメな人間”なのは、自分は文学、映画等の文化を深く理解し、愛する「ハイブロー」な人種であって、自分を理解しない周りのの人間が“低俗”なのだと思い込もうとしている点で、彼は、さらにもっと“俗物”です。
長男「ウォルト」は、この父「バーナード」が大好きです。それは、他人を見下したよな言動が、幼い彼を「特別な」気分にしてくれ、幾作かのベストセラーを排した父の才能に対し尊敬の念を持つようになったからです。ただし、「口先」だけの凡庸な才能しか持たない父親に似て、上辺だけの知識に支配され、本当の意味での「自分磨き」は怠る単なる“ガキ”です。
一方、相手役のローラ・リー二―は、結婚後、ベストセラーを量産する人気作家で妻の「ジョーン・バークマン」役で、近所の亭主やテニスコーチとすぐに関係してしまう“愚かな”母でもあります。
次男「フランク」は、兄に対する反発と父にいとまれたせいで、母親の側にいます。ローティーンであるのも関わらず、母親同様に刹那的な快楽には弱く、それは“病的な”レベルです。「飲酒」と「性的妄想」を好み、場所を選ばない「自慰」で両親の不和や離婚に対するストレスを発散?させる行為に及びます。これは場所をも選ばず繰り返し、学校当局の知るところなります。
とにかく異常。
こんな4人家族が、離婚と通じた“逆境”の中で、様々な顔を見せてくれます。
ある意味「壮絶」な離婚劇!
(あらすじ)
有名な作家・文筆家夫婦である「バーナード」と「ジョーン」は、高校生と中学生の二人の息子を持つが、この「バークマン家」は、父側と母側とに“真っ二つ”に割れている。
「父+長男」VS「母+次男」
父は、過去の作家で、現在は大学の非常勤講師。過去の「栄光」にすがって生きる屍のような生活を送っている。
母は、現在、超売れっ子の作家であり、コラムニストである。これは、夫「バーナード」の指南によって勝ち得たポジションであるが、この位置を維持できているのは、本人の天性の才能と努力である。彼女は、「負け組」の夫には、男性的な魅力を全く感じておらず、近所の既婚男性から、仕事関係者、次男のテニスコーチともいとも簡単に肉体関係を結んでしまう。
そんな、夫婦の帰結は結局、『離婚』であった。
仮面夫婦を見て育った二人の息子は、例外なく・・・やはり、異常である。
父大好きな長男「ウォルト」は、読んでも無いカフカの『変身』のコメントを、ガール・フレンドに語ったり、趣味のギターの弾き語りでは、「ピンク・フロイド」の楽曲を盗んで自分の作詞作曲として発表したりと、問題ある行動。
母大好きな次男「フランク」は、兄と父に反発しながら、両親の不和に敏感で、親に隠れては飲酒し、徐々に強い酒に依存していき、学校の図書館や廊下でも「自慰行為」をした上、蔵書やロッカーに自分の“精液”を手でなすりつけて回るような異常行動に出る。
両親が、別居する「共同監護」状態で、様々な問題が噴出する。










