夜が深まるほどに、恥ずかしがりで強がりな素顔は
影を潜め、トイレに起きるとヒャーンと切なげな声で駆け寄って
お腹を見せて転がって行く手を阻んだりする。おーいおい
足せないよ用。仕方なしに抱き上げると、そんな時に
かぎって軽い。体感重量。この猫には重力の可変装置が
内蔵されているのでは…。日中や人目がある時の不承不承
「抱かせてやるか」なポーズをとる時の、ツンな重さは
鬱蒼とした毛の水分量と相まって、搗き立ての餅のようなのに
素直に欲しがる夜はまるで月面。デレの無重力。現金な。
フォルダの底に焦げ付いてた
撮り損じ、と思っていた真っ暗な画像から浮かび上がる
可変装置発動中の求む顔。スマホの画像補正、昨今の
テクノロジーの日進月歩にこれほど感謝したことがあったか?
AppleでもダイソンでもNASAでもどこでもかまわないから
向こう岸に渡った大切な誰かを、時々でいいから転送できる
パン焼き器ぐらいの大きさのハイテク機器を。開発キボンヌ。
オグはすでに搭載してたんじゃないか?時空を行き来可能な
ナニガシかの、時の翼を。でなきゃあんな現れ方消え方…
時々でいいから。真夜中にふわり舞い戻られてよ。