僕が柔らかくていい匂いのするものや
ぴんとはりつめたつめたいものへの
無抵抗主義、や、ちがうな…
無条件降伏?
絶対服従?を高らかに謳い上げるように
なったの、はっきりここからだった。
ダイアナ・ロスの。



ソロデビュー作、セカンド、サードアルバム。ベスト盤や
YouTubingぐらいにしときゃどんだけ傷が浅くて済んだか。
ここに完全密封された彼女の、誇らかに宣言文を読み上げるような
長い長い玉音と、女王の戴冠を恭しげに告げるシンフォニーは
シングルでもライブバージョンでも絶対に響かない。どうせ
ソウルなんてンッ!とかアフ♪ってまぐわいのリズムと
お前が欲しいと愛を乞う、相聞歌以外の何物でもないと思ってた。
でしょ?まあそれは99%正解なんだけれども。1%の不正解が
これとこれとこれ。
'Ain't No Mountain High Enough'のフルレングスバージョンが
YouTube上で聴けないことになっているのは正しい判断と思う。
アルバムで聴け、という神の意志。たったの三枚でいい。
もし僕が大富豪だったら財団法人ダイアナロスニッポンを設立して
この三枚のアルバムを希望者に無料進呈したっていい。かつての
日本に頼んでもないのに上がりこんできた、儒教の五常五倫を
覆せるんじゃないか。「誰彼かまわずまぐわってはいけません」?
大きなお世話だったろ。いえ、それ
危険思想です。

ダイアナ・ロスは原始アナーキズムのプロパガンダじゃ

でも少なくともつのる想いは加速する。恋する彼氏や彼女の
背中をほらと押す。魚心あれば水心。下心ぱんぱかぱんの
'If We Hold On Together'とかでぐずぐずになるのでなしに
まだ青く硬いダイアナ・ロスで恋をしませんこと?
そういう高潔で崇高な、けど揺れるソウル。