暁に追い立てられるように、ふたり
言葉をかわすことも少なく、ふたり
ウィンカーのコチコチコチコチと
ハンドルとアクセルだけがただ、まるで
生き物のように西を、西をめざせと
車内に充満する息詰まるほどのソウル
爪を立てたら弾けて飛びそうに濃密な困惑
たどり着いたのは涅槃のほとり、でした
絶望も希望も。
潰えた泉のほとりで。
ここもただ「美しい」だけではないところ。
この世界から孤立した。
虞よ虞よ。おおロミオロミオ!
そんな夢うつつが入り交じるところ。ああ最高。
なはずなんだけど。お前わかる?このせつなさ。
横隔膜を銀の匙でしゃくられるような、ものせつなさ。
生と死がおいてけぼりの淀んだ水辺で、男と女は迷い、惑い
もうどこへも行けない。わかる?わかるよなんか

いやそら気のせいだよ。何でもないよごめんごめん。
八鶴湖はやっぱり何処かの国にいるような、此の世ですらない
みたいな、幹線道路を折れた住宅街に忽然と現れるあの世。
今は泊まれない旅館。