白い乳房の、その頂から麓にかけ、赤い水脈が流れていた―― 日舞紅真会の発表会楽屋で、師範の田嶋紅真が絞殺された。襦袢と唇と、首を絞めた紐。死体を赤く彩られた紅真の周辺では、男女の愛憎が激しく錯綜していた。さらに、真相を追う作家探偵霞田志郎を嘲笑うかのように、活躍中の弟子紅里が酷似した状況で殺される。誰が、なぜ死体の女たちを「紅」で飾るのか? そして伝説の名探偵で警察OBの"男爵"こと桐原が捜査に介入する目的は何か?
「この街を、海にする。汚れきった街に本当の美しさを教えてやる。人間は所詮クズでしかないのだ・・・」。新宿の夜空に、人喰い鮫が襲来し、銀色の顔をした男が跋扈する。彼らの真の狙いとは何なのか? 迎え撃つ壮助、謙太郎、響子ら新宿少年探偵団の面々の心にも、事件の推移とともにさざ波が立ち始める。
その赤はルビーのようにきらびやかだった――ガラス工芸品の美術館を併設するクリニックで、院長の大和田彩子が扼殺された。現場にはなぜか、割れたベネチアングラスの一輪ざしが・・・。被害者の周辺は、付きまとう昔の恋人、婚約者との関係に悩む妹、医院に不満を抱えた事務員など、愛と憎しみが渦巻いていた。駆けつけた作家探偵・霞田志郎が、鮮やかな推理でやがて看破した真犯人とは?《ベネチアングラスの謎》他7編
名古屋の私立探偵事務所に勤める藤森涼子はある大学生の素行調査を彼の母親に依頼された。彼は一日置きにほぼ同時刻に同じ歩道橋の上で、しばらくぼんやりと時間を過ごしていた。調査を終了した十日後、涼子は新聞記事で、彼が歩道橋から飛び降り自殺したことを知る・・・。《翼なき者》他5編
白い「霧」が人間を襲い(「霧の恐怖」)、妖しい仮面が女たちを死へと誘う・・・(「鴇色の仮面」)。光と闇が交錯する魔都・新宿に、混迷と恐怖をもたらす人知を越えた怪事件は、現代社会が突き進む破滅への序章なのか?事件の裏に潜む怪人たちに立ち向かうため、探偵団は夜を駆ける!
深夜のコンビニエンス・ストアに現れた少年強盗──。ナイフを突きつけ、金を要求する彼に、元警察官・阿南の発した言葉は、酷く独善的なものだった。「間違ったことはしないほうがいい。金なら私が用立てよう」だが数日後、阿南は自分の犯した重大な罪に直面する。少年が再び強盗を働き、殺人未遂を犯したのだ。少年を捜し、行動を開始する阿南。自らの過ちそして矛盾と葛藤し、彼は事件に秘められた真実に近づいていく。
満たされないOL生活から私立探偵に転職した涼子はある日、車椅子に乗った依頼人・東山史子を訪ねた。彼女の婚約者が、突然失踪してしまったのだ。早速涼子は聞き込みを始めるが、婚約者の青木達也は愚直なまでも真面目な素顔を持つ男で、失踪の理由がわからない。わずかな手がかりをもとに涼子は横浜へ向かう。そして彼の消息を知るらしい浦野小夜という主婦を捜し出すが、彼女は何かに脅えていた。そんな中、近くの川で若い男の水死体が発見されて・・・。一人の青年の失踪事件の裏に隠された、意外な真実とは!?人の心の奥に潜む暗闇と対峙しながら成長を遂げてゆく涼子の姿を・・・。
「私の最も大切な財産は石神探偵事務所の狩野俊介君にゆだねるものとする。猫を追い払うより皿を引くべきであった」──俊介の愛猫ジャンヌを通して親しくなった元市長・滝之水老人が、息をひきとる際、弁護士に託した遺言だった。真っ白な便箋に象形風に書かれた不可解な文字は、遺言であると同時に、その意味を解けとの探偵・俊介への依頼だという。老人の娘婿・高山代議士から「大切な財産」を渡せと居丈高に要求された俊介は、それに反発し、長兄の娘・梨花とともに遺言の謎に迫る!
名古屋市のホテルで奇妙な連続毒殺事件が発生。被害者の男性はいずれも右手小指を食いちぎられ、現場では紫の和服を着た女の姿が目撃されていた。解決に乗り出した作家・霞田志郎の前に、やがて手口状況の酷似する十年前の迷宮入り殺人が浮上。当時捜査を担当した元刑事・桐原は多くを語らず、霞田を家康由来の香木「紫」を持つ料亭「邑さ喜」に招く。だがそこには、新たなる殺人の舞台であった・・・。
復帰公演を前にした女優・百嶋美也子から警護を依頼された野上探偵と俊介は、二十年前に銀扇座で行われた公演が事件を解く鍵であると考える。当時の関係者の周辺を洗っていくと、そこには意外な事実が・・・。そして惨劇は起こった。本番前の稽古中に、共演の俳優・水越蒋太郎が舞台で十字架に磔となったまま短刀で刺されて死亡したのだ。まさにそれは「予告」どおりの死であった。事件は野上や俊介たちまでも巻き込み、意外な方向へと展開していく。