『THE BANK ROBBERY〜ダイヤモンド強奪大作戦〜』@新国立劇場中劇場 | Capricious Bookshelf

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【原作】『The Comedy About A Bank Robbery』ヘンリー・ルイス他

【翻訳】谷賢一 

【演出】小林顕作

【振付】足立夏海

【CAST】

 サム・モナハン 原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)

 カプリス・フリーボーイズ 桜井玲香(乃木坂46)

 ミッチ・ラスチッティ 元木聖也

 ニール・クーパー 尾上寛之

 ルース・モナハン しゅはまはるみ

 ロビン・フリーボーイズ 大堀こういち

 ウォーレン・スラックス 市川しんペー

 ランダル・シュック捜査官 田中要次

 様々な登場人物 溜口佑太朗(ラブ・レターズ)

         塚本直毅(ラブ・レターズ)

 ROBBERY団  穴澤裕介

         廣瀬斗史輝

         下司尚実

         熊澤沙穂

【あらすじ】

 1958年夏。

 アメリカ合衆国ミネソタ州のミネアポリス都市銀行でハンガリーの国王子から高価なダイヤモンドを預かることになる。

 その情報を聞きつけた極悪人のミッチは刑務所を脱獄、恋人のカプリスの元に身を寄せるが、このカプリスは結婚詐欺師でカモとして目を付けたばかりの弁護士で牧師で医者のサムを部屋に引き込んでいたところだった。このサムも実はスリの名人であり、それぞれの立場から騙し合い、出し抜き合う抱腹絶倒コメディ。

【感想】

 8月12日の東京千秋楽を観てきました。

 一幕も二幕も1時間ずつの二幕構成になっていて、観るまでは2時間の作品に休憩時間なんて要らないのに、と思っていたのですが、これは演者側にも観る側にも休憩が必要な作品だと納得です。

 演者さんにとってはもちろん体力的な意味で。そして、観客側にとっては腹筋を休めるために、です(笑)。

 とにかく笑った、笑った。時折、強引すぎると思う部分もありましたが、ここまで笑いに徹した作品という意味でも評価に値すると思います。

 今回、この作品を観たいと思った理由が2つあります。

 ひとつめは元木聖也さんのアクロバットをナマで観たかったから。

 そしてふたつめの理由はストーリーに興味があったからです。

 以前、韓国映画で『10人の泥棒たち』という作品を観たのですが、これが本当に面白かったんですね。泥棒たちの騙し合いがコミカルでスリリングで、最終的には滑稽で。シチュエーションが似ていると思い、ストーリーにもすごく惹かれたんです。

 で。実際に観てみると、騙し合いにスリリングさもあって最終的に誰がダイヤモンドを手にするかという部分もあって。この辺は映画とも似た構造。

 ですが。今作はその上で、勘違いが勘違いを呼ぶというストーリーがプラスされていて、この勘違いの連続にお腹を抱えて笑わされました。

 極悪人に結婚詐欺師にスリだけでなく、看守や捜査官に銀行の人間に至るまで、み〜んなくせ者揃いで芸達者。誰がダイヤモンドを手にするのか、なんとなく予想はつきつつも、最後の最後までどんでん返しがありそうで、まったく飽きることなく楽しむことが出来ました。

 映像化の予定もないそうなので、これは観ることが出来て良かったと思います。

 

※ここから先はネタバレを含みます。ご注意下さい。

 

【Actor'sCheck】

 まずはお目当ての元木聖也君から。

 彼の演じるミッチが脱獄を企てるところから物語は始まります。

 狙うのはミネアポリス銀行で保管される幻のダイヤモンド。脱獄の際に仲間を見殺しにするなど、最初から極悪人振りを発揮。

 結果、看守のクーパーを相棒として連れて行くことになるのですが、このクーパーがとにかく使えない。クーパーのミスに振り回され、さらには恋人のカプリスにまで振り回されることになります。

 終盤直前まであちらでもこちらでも振り回されて、その度に彼の見せる表情が笑いを誘います。一番笑えたのは、ルースとシュック捜査官に逢瀬の相手と間違われるところから「俺がどんな目に遭ったと思ってるんだ」と切れるところ。間と表情と声まで、あのシチュエーションにマッチしていて、大爆笑でした。

 そこからの切り替えがまた良かったですね。利用するだけ利用して用済みになったクーパーを見捨て、赤外線破りのアクロバットで魅せ、ダイヤモンドを持って逃げたサムとカプリスを追い詰めるアパートのシーンまで、悪党らしい大活躍。

 最後の最後、自分を裏切った恋人のカプリスを殺そうとしたところで乗り込んできたシュック捜査官に撃ち殺されてしまうのですが、それも納得の悪役っぷりでした。欲を言えばもっとアクションが観たかったですけど、主役の原君の見せ場も必要なので、そこは仕方ないですね。

 

 主役カップルは、ジャニーズの原君と乃木坂46の桜井玲香ちゃん。このお二人も見事なコメディアン&コメディエンヌ振りで楽しませてくれました。

 原君はアイドルなのにそんな下着姿になったり間男的な情けない役でいいの?というくらいの本当に良いとこなしの役。そのどこにカプリスが惹かれたのかはいまいち不明ですが、まあ、それはそれ。最初の脚本では歌が無かったという原君のために作られた自虐的なナンバーに大爆笑させられました。

 玲香ちゃんは衣装とコメディエンヌ振りがマッチしていて、とにかく可愛かったです。歌にもキャラとしての図々しさだったり、コケティッシュな雰囲気が出ていたりと、憎めないキャラに仕上がっていました。グループの卒業が決まっているそうですが、これからはミュージカルなどにも出演するのかな?ちょっと楽しみですね。

 

 で。特筆しておきたいのが、大堀さんと市川さんの角度45℃でのシーンです。

 強盗たちが通気口から忍び込んでいるシーン。その真下にいるはずのフリーボーイズとウォーレンです。

 事務所の椅子に並んで座っている、という状態で登場するのですが、まさかの小芝居があって驚きました。

 雇い主であるフリーボーイズに書類を取れ、コーヒーを入れろ、電話をかけろ、通気口の様子を見てこいと言いつけられるウォーレン。まさに体を張ったコントのような芝居に大爆笑でした。で、市川さんだけがやらされるのかな?と思いきや、しっかり大堀さんも電話をかけに行くことになって、こちらは涙が出るくらい笑わさることに。ここ、たぶん、予定よりかなり時間オーバーしてたと思います。お二人には本当にお疲れ様でした、と言いたいですね。

 

 最終的に美味しいところをさらっていくのは、予想通りの田中要次さんとしゅはまはるみさん。

 田中さんは銭形警部を意識したという衣装で汗だくになりながらもしゅはまさん演じるルースに愛を捧げ、そのルースにまんまと出し抜かれます。

 予想できた展開とはいえ、演じる田中さんとしゅはまさんの表情に最後の最後まで大爆笑でした。

 

 メイン以外の何役もを演じるラブ・レターズのお二人は前説と中説でも大活躍。

 ROBBERY団の4方のはっちゃけたダンスも楽しくて、内容の濃い2時間でした。

 

【オマケ】

 この日は東京千秋楽ということで、スペシャルカーテンコールでした。

 演出の小林さんが登場して、キャストのひと言挨拶が。

 聖也君の言っていた「同じ内容の回がまったくない」ということで、出来ればこの回のどこがハプニングだったか教えてもらえたら嬉しかったかも。