動けない爽太 ―― 失恋ショコラティエ #10 | 松本潤を言葉で     〈 嵐 〉
爽太の裸の背中がなきゃ男女の関係が見えてこなさそうなふたり。
寝顔は子供みたい。なのに目を開くと冷えた空気が伝わってくる。
『なんでこの女、俺のベッドで寝てるんだろ』
「この女」って言葉にお腹の辺りがぎゅんときます。
爽太の中のサエコが妖精さんの枠からはみ出す時。
初回から爽太はこの言葉を使ってたけど、関係を持った今よけいに重く響く。
この爽太がすごく好きです。
知ってても止められない自滅的な顔がいい。
主人公に賛同するドラマなら居心地悪く感じるはずなの状況なのに、こんな風に堕ちていく姿を楽しむなんて初めてです。
どこまでもあざといサエコだけど、言いくるめられてしまう薫子に納得してしまう。もっと言うと、まずは薫子が憎きサエコに相談もちかけてしまうのは理解できないんだけど。下手に出て教えを乞うなんて!って程の気持ちはないのかそれに勝る興味なのか。薫子のサエコへの思いも相当だ。性別違えば「嫌いから始まる恋」みたいだ。
会いたくない人にまでかける保険とか、言葉の端々にある棘とか(薫子は「イヤミか!」って言ってるけど嫌味にしか聞こえないぞ)、嫌な部分がいっぱいあるのに話を聞かせる程度に押したり引いたりの上手いこと。人の縁をちょっと見でぶったぎらないっていう意味では正しいかも…とかチクッと刺す本音が自分の痛いとこも突いてる気がするとか思ってる辺り、私だって薫子ペースなわけだ。クリミナル・インテントならぬラブ・インテントでもあれば、サエコはゴーレンさん並みにに活躍するだろうに。
サエコ
「まあ確かに、なんにもしないで向こうが勝手に好きになってくれればそれが一番ですよね…。でも普通、そんなことないんです。だってお菓子だって味が美味しいだけで充分なのにそれでも売るためには形や色を可愛くしたり愛される努力が必要なんだなと思うし。意識的にでも無意識的にでも人の気を引く努力をしてる人が好かれてるんだと思うんですよね。」
サエコ
「それに他の人を好きになってみることで結果的に本命とうまくいくってこともありますよ。」
ここ最初サエコのペースにのせられてふむふむ聞いてたけどえらいこと言ってんのね。
面白い台詞群。
でも「味が美味しいだけで充分」って言っても見せ方以外のサエコの良さってなんだろう?
本命前の練習台の彼にも別れ際「でも本当に好きだったんだよ」って言うのかな。これだけはっきりした「目標の山の前の登山」を意識してても「『本命前の人』になったのは結果論」って言えるのかな。
「好きにさせて好きになってくれたら好きになる」サエコは恋をしたことがないのかもしれない、と思いました。違う?どうしようもなく好きになったことはないのかもしれないと。細かくきゅんときたりテンション上がったり切なくなったりはするけど、その対象は探して見つけてこの人だと決めた人なんじゃないかと。
サエコはとかく人に影響を与える人で、誰からも受け取ることのできない人のように見える。そう考えると旦那さんが異質な存在であるのもわかる気がする。
薫子
『それで興味持ってくれないお客さんにわかってないとか怒ってイラついてる方が間違ってるってこと?』
ここはまさに薫子。薫子は気付いて欲しがるのに部屋の隅でじーっと念を送ってるような怖さがあるもん。他人事じゃないぞ。
でも同時にサエコの怖さも確信。
妄想が乱れ始める。
パリ行きを決意する爽太の目がいい。
強い声に意志を感じて、見てる私は「違う」と思う。間違った方向に進もうとしてるんだなって。少しずつ石になっていくみたいに爽太が死んでいく感じ。
ボネールを訪ねる爽太がもうかっこよすぎる。
こういうシーンの松本潤の説得力って尋常じゃない。
ボネールの店員が聞かされてなくても通したんじゃないかと思えるような大人で仕事のできる若き同業者感。相変わらずふくらはぎは可愛いけども。
えれなを見るとほっとする。
えれな戦え。
そして爽太を振り切れ。
「俺もボネールのチョコはすごいと思うよ」
この言い方好き。
チョコの魅力の話だとどんどん話せるふたり。
爽太は何もかも脱ぎ落してパリへ行こうとしてるけど、そこから先は何も浮かばない。ありがちな、環境を変えて状況を打破のラインに乗っかろうとしてるだけ。
落としてくれボネールさん。
サエコのユニフォーム姿はそうでもないぞ。
これに関しては薫子勝ってるぞ。
でもサエコはチョコレート屋では役に立つのはよくわかる。
他の仕事でもうまくこなしそうだ。
でも意外にこの仕事では覚醒しなさそうだ。仕事探せサエコ(こればっかり)。
サエコの旦那さんの来訪も不思議はない。
隠そうとしてなかったよね?もう。
これも想定内?
Bonheur
「残念です」
この言葉を待っていた!
主人公の不成功をこんなに願ったことはない。
頼みの綱が切れて呆然としてるけど、わかってたよね?
うまくいくわけがないよね。
砂の上を歩いているような爽太。
Bonheur
「このチョコレートからは君のビジョンが感じられません。」
六道さんの言ってた、最も恐れる言葉。
爽太は逃げ道を失くしただけじゃない。
六道
「そんなことより自分自身のビジョンが消えてしまうことの方が怖い。どんなものが作りたいのかわからなくなって何もできなくなることが怖い。」
まさにその時が来てる。
サエコ
「爽太くん なんかあった?」
爽太
「いや…ボネールと会って 話をして それだけ」
サエコ
「そっか」
爽太
「サエコさんは?どうしてた?」
サエコ
「うん…停電があって でもすぐ戻って それだけ」
爽太
「そっか…」
書き出してみると美しいくらいに対になった台詞。
自分がどこへ行こうとしていたのかそれももうよくわからない
わからないの響きがいい。
破滅に近付いていくような声。
妄想サエコ
『爽太くん 私は別にパリになんか行けなくったっていいんだよ
ここで爽太くんと一緒にいられれば』
爽太のここの表情すごい。変わっていく様がすごい。
ぞくっとする。
病んだ爽太。
この状況でそれでもなおサエコに受け入れられる言葉を言わせる怖さ。
 気付けばもうずっと想像も妄想も広げられずにいる
ショコラのインスピレーションもまったくわいてこない
なんでだろう
どうして どうして未来に 何も思い描けないんだろう
松本潤はアイドルで、芝居もやる。
求めるものはなんだろう。
アイドルらしいキラキラ?萌え?弾ける笑顔?
でも違う。
この冷えた心を演じるのがすごくハマる。
それに拍車がかかってる気がする。
こんな空気を感じることはなかなかない気がする。
停滞した今から抜けて、目の前が開けていく瞬間の顔を見たいと願わせる回でした。
この人がうれしそうに笑うと、こっちまで笑っちゃうんだというのを経験で知ってる。
そしてどこに爽太のショコラのインスピレーションを見出すかを楽しみにしてます。