コーヒー収穫の大変さ-ハワイコナ・山岸農園 | 栗田鏡子 キャピタルコーヒー・紅茶・カフェ、コーヒー&カフェ開業スクール、フラワーケーキ・洋菓子教室、キャピタル約50店舗

栗田鏡子 キャピタルコーヒー・紅茶・カフェ、コーヒー&カフェ開業スクール、フラワーケーキ・洋菓子教室、キャピタル約50店舗

お蔭様で創業75年、「きれいな味のキャピタルコーヒー」は、全国有名百貨店内にコーヒー・紅茶・ハーブ店、カフェを約50店舗展開。上質コーヒーとお菓子でお宅のカフェを楽しく提案、カフェ・フラワーケーキ教室主宰、喜びと幸せの提供を探求。不動産25棟所有し賃貸事業も

2016年11月4日(金)

 

 実は今、ロンドンに来ています。

 

こちらは日本より9時間遅れで、夜で、外は雨が降っていて

 

寒いです。

 

 昨年の、伊勢丹新宿店の「My Cup Of Favor」 にお出で頂いて

 

いたハワイコナの山岸農園では、今年はピッカー(コーヒー手摘み

 

をする人)だったJ氏が帰国してしまい、収穫でとても大変な

 

ご様子。

 

「山岸コーヒー農園便り」を頂いたので、まずはシェアします。

 

そのまま載せることができないので、コピーして貼り付け

 

しています。

 

お読みくださいませ。

     ↓

 

 

「山岸コーヒー農園便り~ハワイ島コナより  ​

 

標高600m  品種コナティピカ  精製ウォッシュト   天日乾燥

NYのウォール街で働いていた2人はリタイア後 NYからハワイ 島コナに移住。趣味で始めたコーヒー栽培が高じて、小規模な がら品質追求の本気栽培。コナのテイスティング競技で入賞。

 

山岸秀彰:米証券メリルリンチ 元 Managing Director

山岸真理:NY州弁護士。元ヘッジファンドパートナー

                                             Licensed Q Grader        


     今年のノーベル経済学賞に MIT のベント・ホルムストロム教授が選ばれた。私のイェー ル大留学時代の恩師だ。

めでたしめでたし。当時イェール大学には Principal-Agent 理論 の研究者が集まり、彼もその中心的人物だった。 経済主体を Principal(依頼人)と Agent(代理人)に分けて考えると、代理人は依頼 人に雇われたにもかかわらず、依頼人の利益よりも自らの利益を優先することがある。例 として、経営者と労働者、株主と経営者、企業と委託先、政治家と官僚、国民と政治家な ど、様々なケースで代理人が依頼人の利益を犠牲にする行動をとる問題が発生する。代理 人が依頼人の利益に沿って行動するような仕組みを考えるのがこの分野のテーマだ。 コーヒー農園主がピッカー(コーヒー収穫する人)を雇う際にも悩ましい問題がある。 私は良いコーヒーを作るのが目標。そのためにはコーヒーをきれいに摘むのが重要。一方、 ピッカーの多くは米本土からこの時期3か月間のみコナに渡ってくる季節労働者で、たく さん摘んで稼ぐのが目的。丁寧に摘んでなんかはいられない。目標が違う。 年初に、あるピッカーのグループのリーダーが何故うちの畑は害虫の被害がコナで一番 少ないのか尋ねて来た。丁寧に摘むことが健康な畑の秘訣と説明すると、ぜひこの畑で摘 みたいと言う。品質を重視する彼女の発言が気に入り彼女のグループを雇った。シーズン が始まると彼女はアメリカ本土からの季節労働者を集めて連れて来た。 シーズンの最初は赤く熟した実が少ないので早く摘めない。そこで、時間給で払った。 すると私が一日100ポンド程度摘むのに、彼女らは40ポンドぐらいしか摘まない。お 喋りしながらのんびりと楽しくという感じだ。これはいかん。 次に摘んだ重さで支払った。ただし、他の農園の5割増しの賃金を出すので私と同じよ うに丁寧に摘むよう頼んだ。ところが、日に日に人数が減り、誰も来なくなった。他の農 園では丁寧さは要求されない。うちの農園の倍の量を摘めて、その方が得というのが理由。 うちの農園が品質重視なのはわかるが、生活がかかっているので無理と言われた。品質を 顧みない心ないピッカーとの評価はできない。彼女らだって生きていくのに必死だ。 他のグループを雇おうにも既に各農園が囲い込んでいるので今さら無理。仕方なく、私 と妻の2人で夜明けから日暮れまで摘み続ける毎日だ。泣きながらの作業となった。 Principal-Agent 理論では、農園主はこういう問題を解決するような雇用・契約形態を 考えなければならない。もちろん私だって考えてはいる。実はこの2年間、メキシコ人の J 氏を雇った。彼をパートナーとして扱い、年間の利益を分配する約束をしていた。(実 際には創業以来8年間赤字続きなので、彼の働きに応じてボーナスを支払った。) さらに、彼の為に2ヘクタールのノニ畑を買った。床面積 200 ㎡の立派な家付きだ。ノ ニは夏、コーヒーは冬が忙しい。良い組み合わせだ。彼には年間を通しての雇用を保障し、 タダで家を提供し、その上、利益を分配する約束もした。生活は保障したうえで、質の良 いものを作れば彼の収入も増える仕組みだ。ここに彼と私の利害は一致した。ホルムスト ロム教授に褒めてもらえそうなエージェンシー問題の解決方法だ。 ところが、J 氏の兄が亡くなり、彼はメキシコへ帰国してしまった。兄の経営する先祖 伝来の牧場を引き継ぐらしい。そこで、急遽、例のグループを雇って、そういう顛末にな った。ここまで尽くしたのに彼は帰ってこない。問題解決になっていない。ノーベル賞の 理論じゃないのか?まさか答えは風に吹かれているというのが今年のオチか? ああ、新しいパートナーを探さなければ。そんなことより、とりあえずコーヒー摘まな きゃ。苦し~!    

 

                                           2016年11月 山岸秀彰 」