「コト消費」もそうですが、「コト売り」「コトづくり」も、
「コトマーケティング」についても、様々なメディアで取り上げられています。
僕自身1400社以上の会社やお店とコトマーケティングを実践してきて、本当にその効果を実感しています。
「コト消費」について検索してみると、このような記事が出てきます。
高度経済成長期以降の日本人の消費行動は、三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、掃除機)や通称3C(乗用車、クーラー、カラーテレビ)に象徴されるように、モノの所有価値を重視してきた。
このような消費傾向はモノ消費といわれる。
コト消費ということばは、消費者の価値観やお金の使い方が、従来のモノ消費から大きく変化したことを印象づける意味で、2000年(平成12)ごろから使われるようになった。典型的な傾向は、所有のためではなく、趣味や行楽、演芸の鑑賞などで得られる特別な時間や体験、サービスや人間関係に重きを置いて支出することで、それが購買の判断基準となっている。
(コトバンクより抜粋)
【モノ消費】
個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費すること。価値の客観化(定量化)は原則可能。
【コト消費】
製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のこと
これらの検索結果からは「コト=体験」「コト=体験価値」
と受け取れますが、果たしてそうなのでしょうか?
そうだとしても、この「体験」という言葉の真意は?
これを、もう少し越し掘り下げて考えてみます。
まず最初に見てもらいたいデータがあります。
内閣府の国民生活白書からの抜粋です。
出典:内閣府国民生活白書
https://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/index.html
これは「物の豊かさを求めるか、心の豊かさを求めるか」を聞いたことをグラフにしたものです。
上に伸びているのは「心の豊かさ」、下に下がっているのは「物の豊かさ」です。
この差は、年々開いていく傾向にあるのが見て分かります。
少しさかのぼって、物と心が同じくらい欲求があった時代はというと、、、、
1979年(昭和54年)。この年を境に物と心のグラフが開き始めています。
この時代を振り返ってみると、こんな感じです。
- インベーダーゲーム大流行
- 第2次石油ショック
- 初の国公立大学共通一次試験実施
- 第1回東京国際女子マラソンが開催
- 『ドラえもん』放送開始
- 上越新幹線の大清水トンネル貫通(当時世界最長)
ヒット商品は、こんな感じ。
- ウォークマン TPS-L2(ソニー)
- パソコン PC-8001(日本電気)
- 日本語ワードプロセッサ JW-10(東京芝浦電気)
- カード電卓(シャープ)
まだまだ新しい商品は生み出されていますが、
正直「モノは一通りいきわたった」ということが言えるのではないでしょうか。
冷蔵庫、掃除機、クーラー、テレビもそうですし、衣料品やクルマなども。
もちろん、もっとイイものを欲しいという欲求はあるかもしれませんが、一通りの物は手に入れた。
例えば、洋服は毎年トレンドのものは欲しいですが、明日着ていく服には困らない。
そんな状況です。
そうなると、モノへの欲求よりも、心を満たすことが大切になってくる。
「モノよりココロ」
これが、コト消費の原点だと考えます。
- ココロを満たすってどういうこと?
- それが消費とどうつながるの?
これを紐解いていきたいと思います。
では、皆さんも最近買ったものを思い出してみてください。
そうですね、できたら1万円以上のモノを。
私はというと、最近ノイズキャンセル機能付きのヘッドフォンを買いました。
すこし購入に至った経緯をお話ししますね。
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ある勉強会で私の担当の方から、こう言われました。
担当者「松野さんは、出張で移動が多いでしょ」
私 「ええ、移動が仕事のようなものです」
担当者「移動中は、何をしてるんですか?」
私 「正直、仕事してるか、寝てることが多いですね」
担当者「だったら、いいモノがあるんですよ!」
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こうして紹介されたのが、ノイズキャンセル機能付きヘッドフォン。
彼の持っていたヘッドフォンを付けさせてもらって驚きました。
このヘッドフォンはホント優れもので、スイッチを入れると、ほとんどの騒音は消し去ってくれる!
付けてスイッチを入れると、す〜〜〜っと自分だけの世界に入れる感じ。
「へぇ〜こんなヘッドフォンがあるんですね!」
これなら仕事をしていても集中できるし、寝る時も雑音が一切気にならないからゆっくり寝れる。
「こりゃ買いだな」
ってことで、聞いたその日に購入しました。
さて、私はノイズキャンセル機能付きヘッドフォンは買いましたが、ノイズキャンセル機能付きヘッドフォンそのものが欲しかったのでしょうか?
それは「NO」です。
私は、「移動中の快適さ」が欲しかっただけ。
もっと細かくいうと
「移動中に集中して仕事ができるコト」
「移動中にスグに寝れる環境をつくるコト」
これを手に入れたかったのです。
それを叶えてくれるのが、結果的にこのヘッドフォンだっただけ。
まさに「コト消費」です。
伝わっているでしょうか?
実は、モノを買ってはいるのですが、モノそのものが欲しいわけでは無く、モノを通して「別のコト」を望み、買っている。
その時にもっている、
興味のある「コト」を満たすために消費する
不安に感じる「コト」を解消するために消費する
不満に感じる「コト」を解決するために消費する
これが「コト消費」なのです。
そう言う意味では、モノが一通りいきわたった時代、そしてモノ余りの時代には、心を豊かにする消費「コト消費」が起こる。
これに対応していくことが、商売をする上で非常に重要になってくることはいうまでもありません。
2016年後半から「コト消費」というキーワードがメディアにも出てきて、インターネットでの検索数が一気に伸びました。
その発端は、インバウンドの観光客がきっかけです。
「コト消費」で検索してみると、いろいろな記事がでてきますが、その中でもまずこちらをご覧ください。
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【旅行大手、コト消費深掘り】
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO15422740X10C17A4TI5000/
旅行大手が訪日外国人に人気が高まっている「コト消費」サービスを充実する。
日本旅行は手軽に着物レンタルをできるようにし、阪急交通社やJTBは研修・報奨旅行の獲得に乗り出す。
「爆買い」の沈静化で訪日客の1人あたり旅行支出は減る傾向にあり、「コト消費」を深掘りする。
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【訪日客のコト消費つかめ、旅行大手、そば打ち、陶芸などPR】
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO12087940U7A120C1TI5000/
カヌーやそば打ち、陶芸など体験型レジャーの予約サイトが訪日客の取り込みを急ぐ。
JTBやエイチ・アイ・エス(HIS)、楽天などが出資するサイトが、海外への販路拡大や多言語対応、メニュー拡充を進める。
個人で地方を巡るリピーターが増え、体験重視の「コト消費」にシフトしていることに対応する。
(日経電子版より)
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カンタンに言いますと、中国人観光客が「爆買い」をしなくなったので、次の消費はモノではなく、そば打ちや陶芸などの日本らしい体験だ!
そこを狙え!というような感じです。
この内容からすると、
『コト=体験』
目に見えた商品ではなくて、体験できる商品づくりをしないといけない。
という風に見えますが、それはあまりに表層的な見方です。
観光客は、日本のモノは手に入れたので、今度は日本のコトを手に入れたいと思っている。
日本のコト=日本の楽しいコト、怖いコト、信じるコト、驚くコトなど、こう言った「コト」に触れたいと思っているので、そこにしっかりアプローチして行く必要があるんですね。
そう、「コト」は人の中にあるのです。
その人の中にあるコトを、深めたり、解決したりするお手伝いをすることで「コト消費」に繋がるのです。
人の興味のあるコトを、深めるお手伝い
人の関心があるコトを、探究するためのお手伝い
人の不安なコトを、解消するお手伝い
人の、不便なコトを解決するお手伝い
こんな感じです^^
ひとつ具体的な事例で考えてみましょう。
例えば、あなたが旅行代理店の営業だったとします。
「爆買い」がなくなり商品が落ちた!どうしようか?と思てった時に、「コト消費」に対応するプランをつくりなさい!と言われたとしてください。
あなたはどう考えますか?
『よし!商品は売れなくなったから、体験商品を考えなくちゃ!!!』
蕎麦打ちや陶芸、あとステンドグラスなんかもいいかな?
乗馬も体験だよな?あれ!?でも乗馬は日本らしくないか?
日本らしい体験できるものって何だろう???
と考えるのか、
『よし!中国人観光客はどんなコトに興味があるのか考えよう!』
やっぱり、中国の上海や北京というと人が多く雑踏の中にいるので、
ゆっくりのんびりと日本らしく楽しみたいんじゃないだろうか?
だったら、温泉につかって蕎麦打ち体験なども喜んでもらえそうだな!
ね、まったく違うでしょ。
この感覚、伝わっているでしょうか?^^
前者の考えで、コト消費にアプローチしていくと、続けていくうちにお客様とどんどんかけ離れたことになる可能性が高いんですね。
でも後者の考えでいくと、続けていくうちに、お客様との接点を見出し、お客様が望んでいることが提供できるようになっていくので、どんどん売れるようになる。
前者は、蕎麦打ち体験や陶芸体験という、売れそうな体験商品ばかりに目がいっている。
後者は、喜ばせたいお客様に目がいっている。
前者は、商品を売ることを考えている。
後者は、人に喜んでもらうことを考えている。
前者は、結果的に売れなくなる。
後者は、結果的に売れ続ける。
そう言う意味でいうと、コト消費というのは体験消費ではなく、お客様の心を豊かにするコトの消費なのです。
コト消費につながる、コト売り。
コト売りを具体的に実践していくのがコトマーケティングです。
結果的に売り続けるために、まずは「人」にスポットを当てる。
あなたの一番喜ばせたい方は誰でしょうか?
人の興味のあるコト
人の関心のあるコト
人の不安に感じてるコト
人の不便に思ってるコト
これは、人それぞれ違います。
日本への外国人観光客でも「人」をきちんと見る。
きちんと見て、知ることで、その人の求めているコトが見えてくるはずです。
求めていることが見えてきたら、それに対して、どんな商品やサービス、そして付加価値が付けられるかを考えて情報発信していく。
「欲しがってるコト=提供できるコト」をマッチングさせることが重要です。
例えば、道頓堀ホテルをご存知でしょうか?
外国人観光客に大人気の、飛ぶ鳥を落とす勢いのホテルです。
僕の知る限りでは、最初に中国人観光客を中心に大人気になり、その後外国人観光客全般に広がっていったと感じています。
道頓堀ホテルの想いをホームページから抜粋しました。
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●道頓堀ホテルの想い
http://dotonbori-h.co.jp/brand/index.html
創業以来、生き続ける想い
1970年。
我が国が、アジア初・日本初の「万国博覧会」の熱気に沸き、大阪に世界中から観光客が集まった年に、道頓堀ホテルは開業しました。
やがて20年の歳月が流れ…
正面玄関に「四体像」を設置したのは1991年のことです。
この像は向かって左から東洋人、アフリカ人、アラブ人、西洋人を表現しており、世界中のお客様をおもてなししたいという
道頓堀ホテルの想いがこもっています。
この創業以来、脈々と流れる「おもてなしの想い」は、
時を経てさらに太い幹となり、
今では、世界のお客様の「あったらいいな」を実現するホテルとして
広く世界に知られ、「顔のホテル」として愛されています。
日本の文化とおもてなしを体験できるホテル
日本を旅する外国のお客様の真のニーズは、
「日本の文化に触れたい」「日本のおもてなしを体験したい」
ということに気づいた私たちは、社員みんなで考えました。
(道頓堀ホテルのホームページより抜粋)
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この思いを元に、外国人観光客をしっかり見て、知って、できるコトを考え実践された。
その「できるコト」が積み重なったって独自のサービスとなるのです。
●日本に来た時の不便さを解消したい!
→観光案内book
●母国の家族がチョット心配な時もある
→国際電話5分無料サービス
●地元と同じように自転車で日本を回りたい!
→自転車貸し出しサービス
このように、それぞれの外国人のことを考えて創り上げたサービスがこちら
【ALL0円!無料21サービス】
http://dotonbori-h.co.jp/service/index.html
そして、日本らしい体験をしてもらおうと、このようなことも実施されています。
毎日変わる!【日本文化 体験イベント】
http://dotonbori-h.co.jp/event/index.html
本当に素晴らしいなと感じています。
人を見て、人を知ることで、人が望むコトが見えてきます。
望むものを得ようとする消費が「コト消費」です。
そう言う意味では、「爆買い」もコト消費なのです。
だって、その時期はそれを望んでいたのですから。
でも、商品を一通り得てしまうと、別のものを望むようになる。
モノの豊かさではなく、心の豊かさを望むようになるんですね。
これは、外国人観光客もそうですし、いまの日本の消費もそうです。
この視点を忘れずにしたいですね。