寝不足になってでもリアルタイムでオリンピックを!

と入れ込むほどの根性は持ち合わせていない私。

いつもの時間に起きてから、新聞やニュースで結果を確認しています。

体操の様子さえわかればよいのだし。


選手の皆さんのこれまでの健闘に、思うところはたくさんありますが

ひとつだけ挙げるとすれば、内村選手の種目別の床です。

2位で同点のデニス・アブリジャン選手を抑えて銀メダル。

理由は、Eスコア(実施点)が勝っていたから。

表彰台に上った3人の選手のDスコア(価値点)とEスコアはそれぞれ

Zou Kai選手:6.9, 9.033
内村選手:6.7, 9.1
アブリジャン選手:7.1, 8.7

でした。


アテネ以来北京までは、難易度の高いはなれ技のほうがより評価され

出きばえは二の次という傾向でした。

乱暴な言い方をすると、質より量、といったところでしょうか。

つま先まで神経を行き届かせ、ひとつひとつの技の美しさにこだわってきた

日本の体操選手たちにとっては、苦難の時期だったと思います。

難易度重視の審査基準に耐えうる演技構成にしながらも

なおかつ美しさにもこだわり

ポイントにつながりにくいとわかっていても

技の完成度を高めることに心血を注いできた

選手の皆さんや関係者の方々の努力は、並々ならぬものがあったと思います。

その美しさが世界の体操界を動かし

北京オリンピック以降は再び審査基準が見直され

小さなミスに対する減点も厳しくなりました。

美しさも大切、という価値観が加わったのです。


内村選手の種目別床の、2位同点での銀メダルが

象徴のように思えて感慨深かったのは、私だけではないと思います。

そして、冨田洋之さんの気迫のこもった演技を思い出したのも

私だけではないと思います。


北京オリンピックの個人戦で、吊り輪から落下した後も

諦めずに競技を続行し、魅せてくれた冨田さん。

その完璧で美しい演技が多くの人々の心を動かし

審査基準見直しの原動力になった

…のではないかと、私が勝手に思っているだけなのですが

そんなに外れてもいないと思います。

もちろん、冨田さんひとりの力だけではなく

層の厚い日本の体操界の土台があったからこそだと思います。


くだんの冨田さん。

男子団体決勝戦で怪我をした山室選手を背負う姿が数秒間映っていました。

あ♪冨田さんだっ!と

心の中でキャーキャー言ったのも、私だけではないと思います。



一番影響されて変わったのは、私かもしれません。

北京以前は、オリンピックといえば

「柔道ばっか放送してるし、いつもの番組が見られないし」

そんなイメージでしたから(ろくに見てなかった奴)。

もちろん、柔道も応援しましたし、サッカーも卓球も応援しています。

でもやっぱり、私の中の一番は体操です。

田中兄弟の平行棒にも期待します。

今夜はリアルタイムで見ようかな。

illustrated by AkihisaSawada