前回からの続きです。


リミッタ解除 完了。

ストマックリフト 完了。

大西賢治治召喚 完了。

行っきまーす!


丹臍に力を込めてコアを固め、肋骨の中いっぱいに空気を吸い込み、野太い声で

白がんばれ!白がんばれ!白がんばれ!

リレーでは、原則としてビリのチームを応援することにしている私ですが

今回は特別ルールを適用し、白組限定で

行けーーー!飛ばせ!追い上げろ!

ぶっちぎれ!

赤組の中で、コースアウトで失格になったチームがあった

というアナウンスがありました。

がっかりしてるだろうな、赤組も応援しようかな。

一瞬心が揺れましたが

いや待て、まだまだ白組が劣勢だ、と白組応援を続行しました。

騎馬戦では

行け行け行け行け!

攻めろ!取れ!倒せ!


私の前にいた中学生のお姉さんたちが、怪訝な顔で振り返りました。

「うるさいなあ。何を熱くなってるんだろ、この人。」

目がそう言っていましたが、知ったこっちゃありません。

さらにさらに大きな声で、物騒な単語を叫び続けました。

そのせいか、いえ、まちがいなくそのせいで

お姉さんたちは場所を移動してしまいました。

迷惑かけてごめんなさい。

今は反省しています。今はね♪

でも、あのときは遠慮できませんでした。

遠慮どころか

ボーっと座ってないで、あんたたちも少しは応援しなさい。

というオレ様的発言が、喉元まで出かかりました。

言わなかったけどね♪

目が言っていたと思います。

申し訳なかったと思っています。

思ってはいますが

もしもまた同じことがあれば

やはり、今回と同じように大きな声で応援します。何度でも。


伝えたかったのです。

がっかりするみんなを見て、私も同じように心が痛かったこと。

そして、ここにも味方がいるよ、ということ。

意気消沈すると、強い孤独を感じるものですよね。

深い穴に落ちたような孤独感が、傷んだ心をますます苛むという

そんな経験、誰しも一度や二度はあると思います。

このときの白組がちょうどそんなふうに見えて

だから、君たちは孤立していないよと、伝えたかったのです。


でも、大人気なかったですね。



白組はといえば、かなり早い段階で気持ちを切り替えたようでした。

優勝の望みが無くても、みんなでよく声を出し合い

最後まで力いっぱい競技しました。

リレーでは粘り強い走りを見せ、3チーム中2チームが勝って点差を詰め

騎馬戦でも果敢な闘いぶりを見せ、勝って同点に追いつきました。

そうです。引き分けに持ち込んだのでした。

大人でさえ立ち直るのが難しい状況の中で、ちゃんと気持ちを建て直し

あきらめずに食い下がって手に入れた、価値ある引き分けでした。


閉会式の成績発表では

「赤白両チーム優勝」

という粋なはからいで、両チームに賞状が授与されました。

赤組にとっては「勝ったと思ったのに…」という表彰式だったかもしれません。

でも、負けたわけではありません。

往々にして、追うほうの勢いが追われるほうを上回りがちなものです。

大玉送りのときに、1回戦では負けても、3回戦まで持ち込んで、赤組が勝った

それと同じことが白組にも起こった、ということです。

赤組も決して、劣ってはいませんでした。

どちらも本当によく頑張りました。

そんなみんなを、僭越ながら、いち保護者として誇りに思います。



illustrated by AkihisaSawada





ほどよく曇ってほしいという、私の身勝手な願いに反し

晴天に恵まれた、良い運動会でした。

顔にも首周りにも日焼け止めをこってりと塗り

帽子とアームカバーを着用し、紫外線防止のスカーフも巻いたのに

襟とスカーフの隙間から紫外線が侵入し

襟元が、三日月形に焼けてしまいました。

テッテレー♪月の輪熊ーーー!
$La vita e bella

餌を与えないでください。

illustrated by AkihisaSawada