「ねえねえ、お母さん、長いジーパンいるかな?」

いるに決まってるでしょ、北上するんだから。


ナマ足なんかでは、地吹雪が来たら遭難するぞ、このたわけ者めが。


と、呆れつつも、娘のひとつの変化に気がつきました。

この子は、少しでも荷物を減らそうと考えている!


ぬいぐるみやらおもちゃやら絵本やら、あれもこれも持って行くと主張し

荷物になるから必要最小限のものだけにしなさいと諭せば涙目になり

着替えも、あれも着るこれも着ると詰め込んで

小さな図体に反比例して荷物は大きく

大人二人の荷物よりはるかにガサさばっていたのに。

しかも、苦労して持ち運んだのに、ほとんど使わなかったことも。



いつの間にか、人は成長するものです。

記憶を辿ってみると、野外学習を体験したことは大きかったと思います。

パジャマがわりのジャージや、寒さ対策に羽織るものなど

たった一泊のわりには、かなりの大きさになってしまった荷物を

「重い~」と言いながら自分で持ち運びして

多少は考えを改めたのではないでしょうか。

可愛い子には旅をさせよ、であります。

若い頃の苦労は買ってでもしろ、とも言いましたっけ?

先生方には、多大なご苦労をおかけし、たいへんお世辞になったことと思いますが

本当に良い経験をさせていただきました。

ありがたいことです。


このまま、パッキング上手の旅上手に育ってほしいものです。

世界中を旅して、いろいろな土地で多種多様な暮らしを見聞きして

広い視野で物事を考えられる人間に。

そんな未来を思い描いたひとときでした。


だけど、必要なものはちゃんと持っておくれ~

出かけた先で、やっぱり必要と、買わざるをえなくなるのも悔しいから。


La vita e bella-金澤

illustrated by AkihisaSawada