私の中ではまだ余韻が尾をひく豊田国際体操競技大会。

すでに一週間が経過しましたが

気になっていたことを書きたいと思います。

体操に興味のない方には退屈な内容だと思いますので

スルーしてください。




二日目最後の競技が「体操の華」と言われる男子鉄棒でした。

日本体操協会の大会結果 にも載っているように

1位:ザン・チェロン選手(中国)  15.975点
2位:内村航平選手(日本)     15.875点
3位:ルジェリ・ポール選手(USA) 15.750点

でした。

トータルだけを見ると僅差ですが

うちわけを見ると目指す体操に違いがあるのがわかります。

3人の選手のDスコアEスコアのうちわけは次の通りです。

1位:ザン・チェロン選手(中国)  7.58.475 = 15.975
2位:内村航平選手(日本)     7.18.775 = 15.875
3位:ルジェリ・ポール選手(USA) 6.98.850 = 15.750

でした。

※私が会場でメモったものなので、誤りを含む可能性があります。
 しかし、合計点が一致しているのでたぶん大丈夫だと思います。

技の難度への評点がDスコア正確さへの評点がEスコアです。

Dスコアには上限がなく、難しい技をたくさんするほど高くなります。

Eスコアは10点を上限とし、ミスをするごとに減点されます。



1位のザン選手のDスコアが高いのに対して

Eスコアでは2位の内村選手と3位のルジェリ選手が

上回っていています。

といってもその差は0.4点とか0.3点とかなので

大きな違いには見えないかもしれませんが

技で換算するとC難度あるいはD難度ひとつぶん相当します。

ウルトラCくらではないかと思います。

古い世代の方にしか通じない(失礼!)かもです。

正確さでいうと中程度あるいはかなりの減点1回ぶんに相当します。

ひざを伸ばすべきところで「だいぶ」曲がってしまったぐらい。



あくまでも私の印象ですが

ザン選手のは”勝ちに行く”体操

内村選手とルジェリ選手のは”美しさにこだわる体操”

だったと思います。



私の個人的な好みで言うなら

内村選手やルジェリ選手の演技のほうに

心が動きました。

二人とも決して簡単な技だけで済ませたわけではありません。

解説の池谷氏によれば

Dスコア6点を越えたらすごいことで

7点台の演技にお目にかかれる機会はまれだそうです。

それを実現しつつ9点に近いEスコアは驚愕です。

いくつもの技を織り込んで

そのひとつひとつを

ほとんど減点なしで行っていることになります。

離れ技ひとつにしても

尋常ではない力で飛んでいるはずなのに

そんなことは微塵も感じさせず

ふわりと舞っているように見えます。

再び鉄棒に戻ってキャッチするときも

手のひらや手首や腕や肩への衝撃は

相当大きいはずなのに

何かで重力を打ち消しているのかと思うほど

ふわりとぶら下がり

涼しい顔で次の技へと進んでいきます。

もう視線がくぎづけです。

本当に私個人の思い入れにすぎないのですが

そうした美しさを

Eスコアでは評価しきれていないのでは

と思うほど惹きつけられました。



と、もう極めて主観的なことしか書けないのですが

私は美しい体操をする選手が好きです。

完成度にこだわり極力ミスを無くし

しかも正確さ以上の“美しさ”を目指すというタイプの選手。

美しさが現れるまで完成度を上げつつ

難度の高い技を行うのはとても大変なことだと思うので。



今後の体操競技は

高得点をねらって

ますます難度の高い演技構成になっていくと思われます。

選手にとってはジレンマだと思います。

技の難度正確さの狭間で

最終的に自分が何を目指すのかを

選手ひとりひとりが問われていると思います。



自分の理想を表現するために毎日過酷な練習に絶え

その成果を大会の70秒という制限時間の中で爆発させ

そして0.1点とか0.025点といった僅差で勝敗が分かれてしまう。

そんな体操選手たちを応援し続けたいと思います。




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採点方式については

大会中の池谷幸雄氏の解説と

DスコアとEスコアについて~第1章~

DスコアとEスコアについて~第2章~

DスコアとEスコアについて~第3章~

DスコアとEスコアについて~第4章~

を参考にしました。


illustrated by AkihisaSawada