1955年10月23日、東京都の生まれ。
東京学芸大学教育学部卒業。
1990年、『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞。
1997年、『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞。
同年、『女たちのジハード』で第117回直木賞。
2009年、『仮想儀礼』で第22回柴田錬三郎賞。
2011年、『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞。








三編収録。
巻頭の『田舎のポルシェ』はこんな話。

岐阜の郷土資料館勤務の増島翠(ますじま・みどり)は
東京の八王子で農業を営んでいた実家にコメ150キロを
引き取りに行くことになり、同僚の友人に車を出しても
らうことになった。
軽トラでやってきた瀬沼剛(せぬま・たけし)は倒産し
た酒屋の息子で、紫のツナギの坊主頭に金ぴかのネック
レスと太い指輪をしていて、これからの1000キロが思い
やられた。
翠の実家は先祖代々、米作農家で自分達が食べるだけの
旨くもない米を作り続けていた。
だが、祖父母が死に両親が死んで跡を継いでいた兄が死
んだ今、翠に多額の固定資産税が重くのしかかっていた。
三ヶ月以内に相続放棄の手続きをしておけばよかったと
悔やんでも遅かった。
田んぼの面倒を見てくれている近所の野沢喜一郎、寿子
の夫婦も自分の田んぼの米で充分だから全部持って行け
という。
トータル360キロの玄米のほかに大きなおにぎりを十五
個をくれ、嫁の千尋は小麦粉の袋を持たせてくれた。
帰りに検問に遭い、小麦粉の袋を違法薬物を疑われて警
察署に連れていかれた。
余計な時間がかかったために台風のど真ん中にぶち当た
り、避難したのが火葬場だった……。