1967年、福井県の生まれ。
上智大学文学部哲学科卒業。
2004年、『静かな雨』で第98回文學界新人賞を受賞して
作家デビュー。
2016年、『羊と鋼の森』で第13回本屋大賞。







高二の二学期、外村直樹(とむら・なおき)は担任に言わ
れてピアノ調律師の板鳥宗一郎を体育館に案内した。
そこでピアノの調律に魅せられ、板鳥に勧められて卒業後
に本州にある調律の専門学校に進んだ。
二年間の課程を終えて北海道に戻り、板鳥のいる江藤楽器
に就職した。
七年先輩の柳伸二について仕事を覚えた。
ふたごの高校生姉妹の家に行ったときに、柳は用があって
先に帰り、姉妹から出ない音があるからもう一度見てほし
いと言われた。
ひとりでもなんとかなるだろうと思ったが、いじればいじ
るほどひどくなり、翌日に出直すといい謝って帰社した。
肩を落として会社に戻った外村に板鳥は自分が使っている
チューニングハンマーをあげた。
「外村君のスタートのお祝いです」と言った。
遅れて帰ってきた柳は外村を連れてまた姉妹の家に行った。