1969年生まれ、山形県山形市出身。
筑波大学第一学群社会学類卒業。
2003年、『真夏の車輪』で第25回小説推理新人賞。
2008年、『傍聞き』で第61回日本推理作家協会賞を短編部門
で受賞、また2012年にはおすすめ文庫王国2012の国内ミステ
リー部門第1位。
2014年、『教場』で週刊文春ミステリーベスト10第1位、さらに第
11回本屋大賞6位。







四編からなる中短編集。
巻頭の『赤い刻印』はこんな話。

中学三年生の羽角菜月は刑事の母、啓子と二人暮らし。
啓子には産みの母と育ての母がいて、育ての母は亡く
なっている。
老人ホームに入っている産みの母の秦野チサとは五年
前にあったのが最初で最後。
啓子のいる警察署では署長の発案で時効が迫っている
昔の事件をもう一度洗い直している。
新聞記者志望の菜月は母の仕事の影響もあって、図書
館で五年前の新聞の社会面に目を通していた。
刑務所から出たばかりの男が金目当てでたまたますれ
違った通行人に因縁をつけ、反対に突き飛ばされて打
ちどころが悪く死んでしまったという事件が目につい
た。
その時の通行人は死亡した男の衣服に親指の指紋をひ
とつだけ残して、いまだに出頭もしていなければ見つ
かってもいない。
差出人の名前が記されていない封書に入ったお守りが
毎年、啓子宛てに届き二十個ほどたまった。
ナナカマドの模様の入ったサテンの生地でできていた。
菜月は祖母に会いたくて老人ホームを訪れた。
祖母の部屋に入ってカーテンを見た菜月は絶句した…。