1965年11月9日、大阪府堺市の生まれで在住。
大阪芸術大学美術学科卒業。
2010年、『女騎手』で第30回横溝正史ミステリ
大賞の優秀賞。





二十社以上不採用が続いている就活中の野並砂羽(の
なみ・さわ)は重い足取りで神戸の三宮を歩いていた。
「北野工房のまち」という体験型の観光スポットに入
ると、「あなたの人生が変わります」という看板を掲
げた出店が目についた。
接客中の白髪頭の店主は万年筆のペン先を削っていた。
周りがどんどん内定をもらっていく中で、砂羽と同じ
く一向に内定の通知の来ない山口美海(やまぐち・み
なみ)を誘って、例の万年筆屋の店舗に行ってみた。
その店の名はメディコ・ペンナといいイタリア語でペ
ンのお医者さんという意味だった。
砂羽は入学祝に両親からもらったきり、ほとんど使っ
ていないモンブランのマイスター・シュテュック146
という万年筆を持参した。
店主は使われない道具ほど可哀相なものはないといい、
就活の履歴書をモンブランで書くといいと言ってイン
クを選んでくれた。
その後、美海は内定をゲットしたが、砂羽は相変わら
ず駄目だった。
美海に引っ張られるようにしてまたメディコ・ペンナ
にやってきた。
店の前の立て看板にスタッフ急募の張り紙があった…。