1969年生まれ、山形県山形市出身。
筑波大学第一学群社会学類卒業。
2003年、『真夏の車輪』で第25回小説推理新人賞。
2008年、『傍聞き』で第61回日本推理作家協会賞を短編部門
で受賞、また2012年にはおすすめ文庫王国2012の国内ミステ
リー部門第1位。
2014年、『教場』で週刊文春ミステリーベスト10第1位、さらに第
11回本屋大賞6位。





八編からなる短編集。

『鏡面の魚』はこんな話。
三十四歳で総合病院勤務の魚住医師は二十三歳の看護師
氷守初菜とつきあっている。
といっても魚住は遊びのつもりで、結婚を考えている本
命の彼女市原千瑛は喘息で同じ病院に入院している。
千瑛(ちえ)と初菜は女の勘と優れた嗅覚で、三角関係に
気づいている。
千瑛は夜になると体調が悪くなるというので、魚住はス
テロイドホルモン剤のサクシゾンを投与することにした。
ナースステーションには運悪く初菜だけしかいなかった
ので、千瑛にサクシゾンを注射してくれるようにいい、
初菜にプレゼントしようと用意していた手鏡にホワイト
ボードマーカーでサクシゾンンと書いて渡し、帰宅した。
夜遅くに病院から電話で千瑛の容態が急変したと呼び出
された。
駆け付けたが手遅れだった。
泣きじゃくる初菜は筋弛緩剤のサクシンを注射したのだ
という。
魚住は誤った投薬指示を出した医師として社会的に糾弾
されて病因から去るしかなかった。
田舎に帰って父親の病院を継いだが、そこで鏡面に書い
た魚が泳ぐのを目にした…。