1960年6月24日、神奈川県横浜市の生まれ。
早稲田大学卒業。
2011年、『黒南風の海』で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」受賞。
2012年、同作品で第34回吉川英治文学新人賞。
2013年、『義烈千秋 天狗党西へ』で第2回歴史時代作家クラブ賞
の作品賞受賞。
同年、『巨鯨の海』で第4回山田風太郎賞。
2014年、『峠越え』で第20回中山義秀文学賞。
五年ほど前から毎年のように直木賞の候補になっている。







2020年ではなく1964年の東京オリンピックを翌年に控えて、高度
成長期に突入したものの、いまだに米軍との関係において戦争
の後遺症を引きずる横浜が舞台。
ソニー沢田はハーフだが、見た目は純粋な白人でも通る。
大学は出ていないが、その容姿と英語の能力をかわれて神奈川
県警に採用され、当然のように外国人の犯罪を扱う外事課に配
属された。
横浜港で若い女性の全裸死体が引き上げられた。
強姦され、アーミーナイフと思われる大型のナイフで腹部を刺さ
れており、爪の間からは金髪が見つかった。
県警は在日米軍に手を出せないので、内密に操作を行って犯人
の目星をつけ、証拠を握ったところで本国に送還して始末をつけ
ようと考え、ソニーの出番となった。
被害者の女性は函館出身の二十七歳で、東京で米軍用に安価な
米国産牛肉を大量に仕入れて余剰分を国内の卸業者に流すこと
で相当の利益を上げている浜中食品社員の赤沢美香子であるこ
とが分かった。
ところが警察上層部からの意向でこの件の捜査は打ち切るとい
うことになったが、ソニーのたっての願いで七月いっぱいまで、つ
まり残り十三日間だけ捜査を継続することになった。
浜中食品から入手した取引先リストの中の三軒のレストランが
気になった。
だが戦後の空気を色濃く残した横浜には日本人立ち入り禁止の
場所が多すぎた。
大きな白い外車に乗り日本語を話せるというだけのわずかな情
報からひとりの外国人にたどり着いたが、相手は横須賀基地内
で巡回説教師のロドニー・エイキンスという中佐で、下手をすれ
ば国際問題になりかねない。
第一、ソニーに与えられた二十二日間という期限は目前に迫っ
ている。
米海軍横須賀基地の犯罪捜査部に単身やって来たしソニーは
ショーン坂口という米国籍で日系三世の兵曹長と出会う。
ショーンはたったそれだけの情報でエイキンス中佐を尋問する
ことはできないと、すげなく追い返す。
だが、のちにソニーの熱意にほだされて二人は協力して事実を
明かしていく。