文学界新人賞、山本周五郎賞そして芥川賞受賞作家。
保険外交員の女性が殺害された。
加害者はナンパしてきた男なのか、あるいは出会い系で知り
合った男なのか。
被害者の女友達でさえ、その夜の相手を特定しかねる。
それぞれの男がまた別の女性とからみあう。
だれが被害者で、だれが加害者なのか。
複雑に交差する人間関係をきわめて短い場面展開の繰り返
しで描いていく。
オレの固い頭ではストーリーのつぼを押さえていくのに苦労し
たが、終盤に近くなってどんどん一つの方向に収束していった。
『悪人』と言う小説の題名は、ありそうでなかなかない大仰な
ものだ。
たとえば『世界』とか、『人生』とか、『恋』とか、『若者』とか…。
こんな大きな題を自分の作品につけるのは、きっと素晴らしい
自信があるのだろう。
親も双子の妹も会社も友人も世間も捨てて、ろくでもない男に
ついて一緒に逃亡したあげく、最後の最後になって、
『俺は……、アンタが思うとるような、男じゃなか』
と言われた女の気持ち…。
読み終えて、結局だれが「悪人」なのだろうと思う。
