前項「ライチョウ、翔んだ。」上で記した、神経孔6個を持つイヌの頭骨関連の記事ですが、事実誤認である事が解りました。

下記の内容が正しいものですが、実は此れ!

2015年3月27日の当欄「世古 孜論」にて掲載された文面です。

ただ、写真の様に内容を汲み取れない形での掲載になっておりますので、今回再掲載する事によって事実の再確認をして戴きたいと思います。

そして、事実誤認に対し謝罪させて戴きます。

 

2015/04/27日の当欄

 

「二ホンオオカミ」をタイトルに出版された書籍ってそれ程多く有りません。

西田智著「二ホンオオカミは生きている」・世古孜著「二ホンオオカミを追う」・柳内賢治著「幻の二ホンオオカミ」・藤原仁著「まぼろしの二ホンオオカミ」。

オオカミ、狼、日本のオオカミ、・・・範囲を広げるとそれ相応の件数になりますが、二ホンオオカミでは私の知る限り上記4点となります。(2015年3月27日現在)

その中の1点、世古孜著「二ホンオオカミを追う」は1989年7月の出版ですが、

翌年1990年、今泉博士に大内山系(?)の血が混じったとする、神経孔が左右共6個有る雌イヌの頭骨を送っています。

 

「二ホンオオカミを追う」

 

関西方面で二ホンオオカミの民間研究者として著名だった故「岩田栄之」氏をご存知でしょうか。

 

故岩田栄之氏

 

大阪府枚方市在住で、私も幾度か書簡のやり取りをする中、多くの事を学ばせて戴きました。

岩田氏によると、昼夜の別無しに辟易する程電話を掛けて来るのが世古氏だったそうです。

 

故世古 孜氏

 

「二ホンオオカミを追う」中の学術的な部分は岩田氏からの伝授ですし、岩田氏から私への書簡中にこんな文面も有ります。

 

『伊勢市在住の中井健也さんの飼い犬を私(岩田)が見て「このイヌは変っている。亡くなったら頭骨が欲しい、と頼んでおりました処、神経孔

世古さんが中井さんから(岩田氏の文言を)聞いてそのイヌを貰い受けて、死ぬのが待ちきれず、直ぐ殺して頭蓋骨を見たら神経孔が6孔有り今泉先生に送りました。

今泉先生は、私にも『神経孔が6個有るのは、イヌでは初めての事』と言っていました。』

 

『昭和63(1988)年12月。十津川村清杉の猟師のイヌをヤマイヌだとやかましく云って、岐阜大の田名部教授、馬場助教授、京大の田隅博士、

東海TV等を同伴して、噂を確かめようと計り、私(岩田)には案内が有りませんでした。

が、毎日新聞の京大出身記者から同行を求められ、私も十津川に行きましたら、彼(世古)は嫌な顔をしておりました。

現地で三人の博士は長時間熱心に観察されましたが、私は10分間位見て只の雑犬と判りましたので下山しました。

それから十何日か後、その猟師は地元の若い猟師に誤射されて亡くなり、そのイヌを世古氏が引き取りました。

その数年後彼は妻に撲殺されると云うアクシデントが起こり、そのイヌはどうなったか知りませんが、

二人の主人を殺した(殺す事になった)魔犬だと猟師達は云っておりました。

若しかすると、死ぬのを待たずに殺した(神経孔が6孔有った)イヌがそうさせたのかも知れません。

兎も角、十津川行きの前から、世古氏は正常心を欠いておりました。』

 

『奈良県天理市のN氏から電話があり、和歌山県古座町村上和潔氏(シマヤマイヌ=オオカミを提唱)からニホンオオカミの頭骨を譲られて、

私(岩田)に鑑定してもらって欲しい旨の依頼が申し添えられていたとの事でした。

 

故村上和潔氏

 

頭骨を持参されたので、計測数値用紙一枚をN氏に渡し、私が必要な要点を測って記入をしてもらい、

改めて復唱確認をしたのですが、計測中も「オオカミですか?オオカミですか?」とせっかちに問われます。

一巡の計測を終えて、上下顎関節を結合して卓上に置くと、鼓室胞がピッタリ着いて動きません。

 

鼓室胞がピッタリ着いて

 

平岩米吉氏の本を示しこの状態がどう云う事なのか説明しました。

 

故平岩米吉氏

 

そして、私が記した「二ホンオオカミと日本犬の頭蓋に見られる相違点について」を示して各部位について説明しました。

それでも相変わらずN氏の口から「オオカミですか?」が出ますので、私は村上氏の病状容態を聞いてから、

村上氏のご期待に反して神経が高まり、悪化でもすると私の本意とする処ではないですから、

返答はN氏に託しますと云い、

「この頭骨は十余年前、世古さん在世中にこの頭骨の写真を私に送って来て、所見を求めて参りました。

写真をコピーした不明瞭なもので鑑定や所見を求められても、責任の有る事は発表出来ないが、

  1. 本頭骨は潜病質か大病をして成熟期まで生きる事が許されない、幼く若間のイヌの頭骨と見る。
  2. 私の長い研究期間にも一度も見ていない、二ホンイヌとしても標準外れのものである、等を世古氏に返事を致しました。

返事が届くと世古さんから電話が有り、得意そうに、あの頭骨を見られた今泉先生から「二ホンオオカミ的な気配が濃厚だとの返事を戴いている」と言って来ました。

私は平素めったに怒ったり表面に出さないのですが、

「世古さん!人を馬鹿にするのも程々にせよ。今泉先生に頭骨を送って鑑定を仰ぎながら、私には不明瞭なコピーで所見を求める等、あなたの常識を疑うよ。

研究者はそれぞれ研究者生命を懸けている。あなたの様にマナー礼儀をわきまえぬ人は今後交流をお断りする」と怒りました。

彼は「本当に失礼しました。」と平身低頭で謝りましたので、

「今泉先生はオオカミとは言って居られない筈だ!。

頭全長170mm、M1 20.2mm,頭長幅比49.7%等、二ホンオオカミで56~56.5%、日本犬で58~59.5%、

ボルゾイ、コリー等長等型でショー的に誇張したものは別として、二ホンオオカミ、日本犬で50%を割っては生存出来ない。」と申しました。 

すると「ご慧眼、恐れ入りました。実はこのイヌはバーベシアにやられて、7ヶ月で死亡したイヌです」・・・と。

村上氏に依頼されN氏が持参した頭骨は、十余年前世古さんとやり取りした頭骨です。』 と伝えました。   

 

岩田氏からの書簡で世古氏関連の文面を記すと、こんな感じなのですが、

平岩由伎子氏主催の動物文学誌上では、考え方に依ってはもっとひどい事になっています。

 

故平岩由伎子氏

 

「これまでにも何度か(動物文学)にとりあげたことだが、科学とは無縁のオオカミの残存説がくりかえされ、全身の毛をバリカンで刈った狐の子まで狼の子として出現する紀州の山には、

すでに、先の世古氏らの手によって、シベリアオオカミの雌と白い紀州犬の牡を交配した子が放たれているのである。

これは私が世古氏から直接聞いたことだ。」

 

バリカンで刈った狐の子?

 

日本鳥類保護連盟三重県常任委員の肩書きを持つ世古氏でしたが、どう考えても私たち後世の研究者には、大きな汚点を残した様に思えるのです。

1996年10月14日、秩父の林道を走らせる私の車の前に現われた秩父野犬。

私では無く世古氏の前に現われたのだったら、ニホンオオカミの生存の証明が為されていたかも知れないのですが・・・。

 

秩父野犬