「YouTubeのニホンオオカミ」3回目になりますが、前項コメント欄に下記文面の掲載がされました。
“柴犬と亀達日記“さんからで、5月21日の投稿でした。
【私は、何頭もの日本犬(北海道犬、紀州犬、甲斐犬、柴犬)を飼育して来ました。
現在も飼育しています。
宅の周りには、本土キツネも沢山居ます。
私も 動画を何回も観ましたが、体型、尾尻、頭部の様子から、キツネではありません。
キツネと言う人は、キツネを見た事が無い方だと思います。
犬でもキツネでもない、ニホンオオカミだと思います。】
国立科学博物館剥製
国立科学博物館全身骨格
ただ、写真の動物が何物であるか・・・を、多数決で決めることは出来ない訳で、非オオカミ論の中には“キツネ”と特定した意見も多く有りました。
【1. 役所で自然保護や野生動物に関する問題に対処する部門にいました。
この映像の動物はキツネの可能性が高いですね。
キツネとは特徴が違うというコメントが散見されますが、おそらくそれはキタキツネやアカギツネをイメージしているからだと思います。
映像の動物は特徴から察するに日本の本州四国九州に生息するホンドギツネだと思われるので、創作物や動物園等でしかキツネを見たことが無い人はイメージとの乖離
があるかと思います。
2. 石の台に撒いてある粒状に見えるエサは、米それとも他の穀類でしょうか?
雑食性の強いキツネが喜んで食べるエサで、オオカミがこのエサにおびき寄せられてやってくるとは考え難いです。
そしてオオカミのエサとなる動物がカメラで頻繁に撮影されていないと、この近辺がオオカミが生息するのに適した環境とは考えられないと思います。
生態が適応変化して体も小さくなり雑食性になったニホンオオカミが、ひっそりと種を繋いでいる可能性もありますが、この外見だと野鼠や野鳥の卵やカエル程度しか
捕食できない雰囲気です。最後の全身シルエットは、ホンドギツネかなと思いました。
石の上の餌を食べる動物
3.今からめっちゃ夢のない事言うけど… オオカミは知っての通り肉食性で肉しか食べない 狐は雑食性で肉や芋とか米を食べる。 カメラの前に置かれてるのは多分穀物類。
カメラマンは狐を撮ったんじゃない?
4.尻尾の長さを見ると多分狐かな?ニホンオオカミ何処かで生きていたら良いですね。
尻尾の長さに注目
5.モノクロだから無骨に見えたりするけど彩色すればいつものキツネになりますよ。
八木撮影のキツネ-1
八木撮影のキツネ-2
6. 思っていた以上に狐ですね。だからと言って命の価値は同じですのでこれからもがんばってください。
7.(映像が)アップの時に瞳の虹彩が縦に見えるのでキツネです。犬とオオカミは丸。
瞳の虹彩が縦に見える
8. これはキツネの可能性大。
キツネは光を受けたときネコのように縦型に瞳孔が収縮する。
イヌやオオカミは人間と同じように丸いかたちのまま収縮する。
9. 残念ですがキツネの目の特徴を持っているようです。キツネの瞳孔は、イヌ科では唯一、猫と同じ縦長だそうです。
10. 正面口の細さ、口から顎にかけての白毛の特徴、眼、目下のくま模様、耳裏の黒、体格… ニホンオオカミよりホンドギツネの特徴が多い。
耳の裏が黒い
耳の裏注目
11.縦長の瞳がキツネのそれに見える。尾の長さや毛量もキツネっぽいなあ。
確かに一般的な狐は顔がもっとほっそりした印象だが、ググってホンドキツネの写真を見るとこの映像によく似た個体もいる。
しかもニホンオオカミの剥製と見比べるとかなり違った印象。本当に生きていればそれはそれでロマンがあるのだが。
東京大学所蔵剥製
和歌山大学所蔵剥製
4月21日の当欄で、
【本来の問いは「どんな動物をニホンオオカミと呼ぶのか」であるはずなのに、現実には逆転して「ニホンオオカミとはどんな動物か」という問題になってしまっている。】…と、京都大学の田隅元生助教授が著した「ニホンオオカミの実体を頭骨から探る」からの文面引用をしています。
つまり今現在、ニホンオオカミの形態云々を述べるには、分類学上のルールである「タイプ標本」との比較が最良の方法なのです。
ニホンオオカミタイプ標本
同じく、キツネのそれですと、「瞳孔が猫と同じ縦長」「耳の後ろが黒い」等が知れている訳で、YouTube上の動物との一致点が見出される訳です。
私達は30年近く山中にトレイルカメラを設置しニホンオオカミの姿を追っているのですが、今回の動物の姿はカメラ設置当時から得ています。
トレイルカメラで捉えたキツネ
ただ驚く事は、閲覧数が50万件を超え800件以上のコメントが有り、その6割超の人達が「ニホンオオカミ論」なのです。
とすると、私達に届いた「ニホンオオカミ目撃情報」の再吟味をする必要が生じた…と云う事です。