2012年に絶滅宣言された二ホンカワウソ。
最後の捕獲例は、1975年(昭和50年)4月8日に愛媛県宇和島市九島で捕獲されたもの。
生きた姿が最後に確認されたのは、1979年(昭和54年)6月に高知県須崎市の新荘川におけるものです。
通常、絶滅の定義は最後の生存確認から50年経った事なのですが、1975年が最後の確認とすると37年、1979年なら33年で絶滅宣言された事になります。
切手になったカワウソ
私の友人がオオカミ探しに行ってカワウソの足跡の写真を撮ったのが、1988年(昭和63年)12月20日ですからそれを最後の確認とすると、僅か24年で絶滅宣言となるのです。
この写真に関しては今泉吉典博士からお墨付きを頂戴していますし、高知大学の町田吉彦名誉教授からも、「前後の足跡がある極めて貴重な写真だと思います。」の書面が届いています。
そんな訳で、ニホンオオカミと共に二ホンカワウソの絶滅も全く信じる事無く、フィールドワークを続けている私です。
1988年12月20日撮影
そんな或る日、オオカミ探しの仲間Y氏を通して、静岡県在住のT氏から「カワウソを撮影出来た!」旨の連絡が有りました。
となると、誰しもその映像を確認したいものです。
T氏飼育の梓山犬
ウィキペディア(Wikipedia)上の形態として記されている下記の文面
【体長64.5-82.0cm、尾長35-56cm、体重5-11kg。
外部計測値は韓国産のユーラシアカワウソとほぼ同じだが、頭骨形状に特徴があった。
眼を水面から出して警戒できるよう、眼と鼻孔が顔の上方にあった。
カワウソの泳ぐ姿
岸辺の二ホンカワウソ
鼻孔は水中で閉じることができた。
毛皮は二層からなり、外側に見える部分は粗い差毛、内側は細かい綿毛であった。
差毛は水中で水に濡れて綿毛を覆い、綿毛に水が浸入するのを防いだ。
このことにより水中での体温消耗を防ぐ効果があった。】
を頭の中に叩き込み映像に臨んだのですが、何かしっくりしないものが有りました。
そうした中、最終判断を専門家の町田名誉教授にお願いすべく、電話を掛けたうえ速攻でデーターを郵送しました。
すると、
【撮影されていた動物はヌートリアです。
尾が細い(カワウソの場合は尾の付け根の幅が尻の幅の1/3は十分にあります)、顔がはっきり分かり、明らかにネズミの仲間の顔。
件の動物/尾が細い
明らかにネズミの仲間の顔
耳が大きい(カワウソは耳が小さく、泳いでいる時はあるかないか分からないぐらい小さい)、泳いでいる時、鼻、頭頂から背中。
尻にかけて完全に水中から出ており、尻が浮いている。
これは前脚と後ろ脚を使っての犬掻き泳法の証拠(カワウソは尾を使って泳ぐので、背中から尻にかけてそっくり出ることはない)、
全体がずんぐりしている(カワウソはもっと細長い)。
尻が浮いた姿
ヌートリアは水生植物を餌にしています。
ヌートリア
上陸して野菜に大きな被害をもたらし、社会問題になっています。
画像で見る限り、いかにも彼らに好適な環境です。
なお、日本産のカワウソがペア(ペアでなくとも、少なくとも二頭)で撮影された画像はこれまでないはずです。
二頭で泳いでいる
ただし、日本産と同種かどうかは別にして、サハリンのカワウソではそのような例があったと記憶しています。
撮影された川の水質はあまり良くないと思われます。
しかしカワウソにとっては水質より餌になる動物の量が重要で、現在の韓国では下水が流れ込むような川でカワウソが繁殖し、活動しています。
私が韓国に通っていた30年ほど前とはえらい違いです。
増殖のスピードが速いので、一旦増え出すと急激に個体数が増加するようです。
今回の撮影された場所のような水質でも、餌が豊富であれば生息可能と思われます。
ただし、休息できる場所、寝ぐら(一頭が複数の寝ぐらを使用する)が確保できる環境が必要なのはもちろんです。
地図から判断する限り、そのような場所はないと考えられます。】・・・とする、詳細なお返事を戴いたのです。
二ホンカワウソ全身骨格
二ホンカワウソの生存に続きオオカミも・・・の目論みは今回外れましたが、それにめげず、明日のカメラメンテナンスの準備に取り掛かる私です。