先月中旬、当ブログにこんなコメントが届きました。

1.【今後もニホンオオカミが分類学上どのような扱いになっていくのか注視します。

遺伝子レベルでの識別により、これまで形状からイヌだと鑑定されていた頭骨に、実はニホンオオカミの血が入っていることもあるかも知れませんね。】

Ans【過去に「イヌ」と鑑定された頭骨標本が「実はオオカミだった(血が混じっていた)」とされる例は遺伝子解析に於いて充分考えられると、私も思います。

但し、詳細な情報を得られる「核遺伝子解析」が為されないと、不十分な結果のままだと思います。

実際、直良信夫著「日本産狼の研究」等を読み返すと、ニホンオオカミとは別に「ヤマイヌ」として扱っている頭骨が数例有りますが、そうした頭骨がそれに当たる

かも知れません。】

 

直良信夫著「日本産狼の研究」

 

【分類学上の扱いに関しては、以前(昨年4月7日の当欄「国際動物命名規約」で)詳細を記しています。

 そして再度、高知大学名誉教授町田吉彦先生から戴いた書面の一部を紹介します。】

 

町田吉彦先生

 

【タイプ標本とは何か

生物の新種を発表するときには、その基準となる標本を指定することになっています。

この標本のことをタイプ標本と呼びます。

新種発表の基準であるタイプ標本は博物館や研究機関で大切に保管されています。

 

ニホンオオカミのタイプ標本

 

選定基準標本(後模式標本)

或る新種を発表した研究者が、その新種の基準となる複数の標本の中から一つの標本を指定しなかった場合、後の研究者がその複数の標本の中から最適とされる標本を一つ選ぶことがあります。

これを、選定基準標本(後模式標本)と云います。

タイプ標本及び選定基準標本等が事故などで失われてしまった場合に、新しく選定されたタイプ標本が動物の場合「新模式標本(neotype)と呼びます。

 

ここまでが、動物命名規約の初歩的部分ですが、質問に対する答えは「選定基準標本」から・・・と云う事でしょうか。

ライデン博初代館長テミンクが命名した「Canis hodophilax」のタイプ標本は『(個体1)頭骨Aと全身骨格』『(個体2)頭骨B』『(個体3)頭骨Cとその毛皮剥製』で、

複数の標本の中から一つの標本を指定しなかった訳です。

 

ライデン博初代館長テミンク

 

タイプ標本『(個体1)全身骨格』

 

後の研究者が複数の標本の中から最適とされる標本を一つ選ぶとしたら、「個体1はイヌ(とされています)」「個体3はニホンオオカミとイヌのハイブリッド」でしたから、

「個体2の頭骨B」が最適だと思います。

 

タイプ標本『(個体1)頭骨A』

 

タイプ標本『(個体2)頭骨B』

 

タイプ標本『(個体3)頭骨C』

 

私が知り得ることは此処までで、選定基準標本へのプロセス等は判りませんので、新たに勉強して、いずれこの続きを記したいと思います。】

つまり、専門家でも非常に難しい問題だと云う事でしょうか。

そして、他の方からも

2.【日本の在来犬はニホンオオカミと近縁でしょうか?

オオカミと言うと、どうしても大陸オオカミのイメージが先行するんですが、エゾオオカミを除く日本在来のオオカミが日本在来犬に近いイメージで、在来犬に野生味を加えた姿なら地味に生き続けているのではと想像します。身近にツキノワグマがいても人生一度も目にしないことはあります。ツキノワグマは用心深い性質なのか姿を見せませんね。オオカミはクマよりも更に用心深いならなお一層見かけないはずです。】こんなコメントが寄せられました。

Ans【山中に動体感知カメラ(トレイルカメラ)を設置観察してから20年の歳月が流れています。

そして得られた映像の中に、質問者が仰る「在来犬に野生味を加えた姿」的なイヌ科動物の姿が存在しているのです。

そうした動物の姿を詳細に…と考え、多数のカメラを設置すると、人間の匂いを感じるのでしょうか!?

2度とカメラの前に姿を現わさないのです。

そうしたケースが幾度かあります。

 

カメラ設置中の私

 

半年くらい前、「カメラで姿を撮らえられないのだから、私たちの捜索方法は間違っているのでは?」とのコメントが寄せられた事が有りました。

が、私たちの活動は、ゆっくりでは有りますが、ニホンオオカミの真実に迫っているのです。