年明け早々、国有林内に設置していたカメラ11台を引き上げて来ました。
昨秋山中で、すれ違いざま云いがかりを受けトラブった事が有り、その人物が指摘していた箇所と合致しますので、その人物が国有林管理者に告げ口したのだと思っています。
国有林内にカメラを設置する場合、1年間の借地使用料が生じまして、台数が重なるとそれなりの費用が必要となりますので、台数の少なかった20年前は兎も角、現在は正直無許可での観察でした。
カメラ内には管理者の姿が映っていますので、外部からの通報が無ければ、或る意味で黙認されていたと思います。
カメラ設置の目的は「山域における野生動物調査」ですので、決してやましい事は無いのですが、この欄で掲示した様々な嫌がらせの通り、色々な価値観を持った人たちが存在しているのです。
つまり、私たちの活動を好意的に捉えてくれる人ばかりでは無い、と云う事です。

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中津川・西沢の入口

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中津川・西沢の大カツラ

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戸門剛さんの概略図、20146/13の体験
 
処で下記後半の文面は、皆さんの殆どが初耳の事だと思います。
敢えて公にしなったのは、現在同様、色々な問題が生じていたからです。
当時、同じ志を持ってオオカミ探しをしていた仲間の中に、違う考えを持っていた者が居り、私たちの行動を筒抜けにし、大きな弊害をもたらしました。
秩父市内の毛皮の所有者名を、秩父野犬の撮影場所を筒抜けにされ・・・。
その事実を知ったのは後々の事ですが、それ以降私は「来る者は拒まず」と云う訳には行かなくなったのです。
それは、現在のNPO法人になってからも同様です。

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この小冊子が問題の発端

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この小冊子にヌケヌケと実名で投稿

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毛皮と最初の所有者内田さん

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秩父野犬の撮影現場
 
1996101616時、秩父野犬と遭遇し写真撮影に成功したのですがそれは有馬渓谷での出来事でした。
 
【毛色は似通っていたが、10分前に出会ったカモシカとは雰囲気が全く違った動物が、左前方の小さな沢から顔を覗かせ、そして私の車の前に立ち塞がった。
大血川集落の名猟師黒澤武次氏から以前、既に絶えたとされる秩父の地犬「秩父犬」に付いて詳しい話しを聞いていたので、若しかしたら・・・と思ったのだが、ボンネットの先1mの位置から動こうとしない動物を観察していると、秩父犬とは似て非なる動物で、私が探し求める動物にそっくりで有る事に気が付いた。

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これしか残っていない秩父犬の写真
 
まだ何処かに幼さが残る動物は、私に対して興味津々のようで動こうともせず、車の窓ガラス越しに私を見つめていたし、動物の全てを脳裏に刻み込もうと、私も瞬きせずに見つめていた。
しかし自分の記憶力に自信を持てない事と、この喜びを共有せんが為、師と仰ぐ和歌山在住の井上百合子氏に携帯電話を掛けていた。
幾度掛けても繋がらない携帯の画面を見ると“圏外”の二文字が浮かんでいて、我に返った私は、ここが山中の谷底で有る事を認識したのだが、次の瞬間心に悪魔が忍び寄って来て、「目の前の動物を得ろ!今この体験が嘘でない証をする為に、車のアクセルを踏むべきだ」と、他人事の様に何かが囁いているのを感じていた。

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井上さん・右、と吉行瑞子博士
 
ブレーキに置いた足をアクセルに移そうと思った時、1年前私の腕の中で突然亡くなった愛犬の顔が浮かんで来ると同時に、乗っている車が車検切れで有った事にも気が付き、結局悪魔の選択を採る事は出来なかった。
弱い人間である私は、それをやらないで済む理由を、瞬間的に見つけていただけだったのかも知れない。
実を言うと大滝村山中からの帰りに、国道140号線を通らず、浦山から名栗に抜ける林道を選択したのは、’野性動物と会う機会を得る’ といった綺麗ごとだけでは無く、警察の取締りを避ける事も重要な要素だったのである。

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19951017日に逝った愛犬 

悪魔の誘惑を断ち切った私は、最後の手段として「写真を撮れば何とかなるのかな」と考えを変え、助手席に眼を向けたのだが、有るべき筈のカメラはそこに無かった。
その日に限って、正しくその日に限って、トランクにカメラを閉まっていたのだ。
一瞬なりとも眼を逸らしてしまった私だが、心配しつつ視線を戻すと、動物は相変わらず私に対峙した状態だった。
そこで私は「動物との信頼関係が築けた」と勝手に理解して、静かに運転席のドアーを開け、視線は動物から逸らさず、後ずさりしながら後部のトランクまで辿り着いた。
 
動向に細心の注意を配りながらカメラを取り出したのだが、元に戻した視線の先に動物の姿は無かった。
眼を逸らした時間は数秒だったので、安心していたのだ。
気配を残さず忽然と消えた状態だった。
最初に顔を覗かせた沢筋を探して見たものの、追い求めていた動物と出会えた満足感から、写真撮影の事はあっさりと言える程のあきらめようで、再び車のハンドルを握った私は、林道を下りだした。
20数年間オオカミ探しをしていた訳だが、「たった一回のチャンスで全て上手く事が進む訳が無い」と、心に言い聞かせてもいた。

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秩父野犬との遭遇現場
 
そもそもその日の山入りの目的は、ニッポン放送の企画で、来月始めに収録を行う場所の下調べの為だった。
言うならばそれ以外のことはプラスアルファー、おまけであった。
増して、私の人生を大きく左右する1日になるとは、思っても見ない・・・この周辺で何時かまた遭える・・・そんな気持ちが支配していた。

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番組のロケ現場

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ロケが終わった翌日参加者と
 
多分距離にして1km位だっただろうか?撮影をあきらめた動物とは違う、2頭のイヌ科動物が私と同じ方向を目指して歩いているのを発見した。
私は彼らの行く手を阻む様に車を停めて、少し様子をみた。
すると先ほどの動物と同じように私を見てはいるが、逃げる素振りもみせない。
私は車を降りて彼らに近づいてみた。
2頭は♂♀でほとんど同じ様な姿態をしており、明らかにカップルと思える。
側に近づくと異様に臭い。
何処かで見た動物の様だが何故か思い出す事が出来ない。
兎も角臭い動物だった。
 
当時、京都在住の民間研究者と“ニホンオオカミの爪は黒く在るべきか?”と言う点で議論をしていたため、爪を見てみる。
雄は見える範囲で全て黒い。
雌は・・・黒く無い爪も在る。
乳房も少し垂れた状態で、授乳が少し前に終えた様だ。
しかし、身近な所で出会っている筈なのに、思い出せない。

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タイプ標本の前肢の爪
 
先ほど用意したカメラでとりあえず写真をとらなければ・・・と考えていた処、私が今しがた下って来た方から,1台の車が来ると2頭の動物の後ろに止まった。
丁度2台の車が2頭の動物を挟み込む様に。
運転していた若者が私に近づくと「おじさん、そのイヌ、おじさんのイヌ?」と聞いてきた。
「いや、私のイヌではないけど変な動物だよね」と答えるとその若者は「変なイヌって上の方にもっと変なイヌが居たけど」と言い出して来た。
驚いた私は「上ってどの辺?これこれこんな感じじゃなかった?」と無理矢理同意を求めながら場所の確認だけすると、Uターンの出来る場所を求めて急いでアクセルを踏んだ。
 
少し走ると広いスペースではなかったが、何とかUターンできる場所があったので、何度か切り返しをしながら必死の思いでハンドル操作をしていると、後ろのバンパーに思わぬ衝撃が走った。
ガードレールに車がぶつかったその時、胸のつかえが降りるように、ほんの少し前まで観察していた2頭のイヌ科動物の正体が明らかになった。
『ライデンのタイプ標本』だ!。
何ということだ。
両方撮れれば其れに越した事はないが、24枚撮りのフイルム1本しかないし・・・。
どちらを選択すべきか迷いつつ先ほどのところに戻ると、運良く()つがいのイヌ科動物は、そこにはもう居らなかった。

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この標本そっくりの動物がペアーで
 
選択肢の無くなった私は、吹っ切れた状態で青年から教えられた所まで戻ったのであるが、そこにはもう何も居らず、上の方へ移動したのか?との思いでゆっくり探しながら車を運んだ。
10分以上走りながら、ここまでは来ていないと判断できる広いスペースを見つけると、落胆の気持ち一杯に“やはり縁が無かったんだな!”と自分に言い聞かせながら、それでも諦めきれず心の隅に“もしかして・・・”の思いも抱いて、林道を下って行った。
この林道上で一番嫌らしい場所-二つのヘヤピンカーブに挟まれた上、急斜度で狭い沢沿いの箇所―を過ぎてホット一息つくと、進行方向右手の沢底から道路に出ようとしている動物が居ることに気がついた。

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秩父野犬を探し回った周辺