昨日ヤホーで凄い歌手を見つけたんですけどね。(ナイツ風)


Adoって知ってます?


「あなたが思うより通暁です」


どうも、今さらながらAdoちゃんのCDを借りてみた僕です。

思えば今から数年前、ネットのストリーミングチャートで『うっせえわ』なる曲が破竹の勢いで盛り上がっていた。

まさに彗星の如く現れた新時代の歌姫、この曲から彼女を知ったという人がほとんどだろう。

しかし、当時既にオッサンだった俺としては、ストリーミング再生数などというステータスはピンとこず、『うっせえわ』などというふざけたタイトルも相まって、「どうせネットだけで盛り上がってる内輪ネタみたいなやつだろ?そんなんで日本のヒットチャートを汚染してもらっちゃあ困るなぁ!」などと思っていた。

イエモンとアニソンしか聞かないにも関わらずだ!


しかしその後のAdoちゃんの活躍は皆さんご存知の通り。

まず『うっせえわ』が子供たちの間で流行り始めたあたりで異変に気付いた。

「これ社会現象になるやつじゃね?」と。

案の定その後も彼女は、初ライブでドカン、『ワンピース』とタイアップでドカン、紅白でドカンと、ドデカい花火を打ち上げ続けた。


そうして迎えた過日のゴールデンウィーク、実家に里帰りした際、長いドライブのお供にとこの期に及んでAdoちゃんのアルバムを借りてみたという寸法だ。子供も喜ぶしね!


結論から言えば、そりゃ売れるのも納得だ。

なんせ聞いていて気持ちいい。

力強い低音に跳ね上がるような高音、隙あらば発動する「がなり」と、カタルシスさえ覚えるレベルだ。

自分で上手に歌えればさらに気持ちいいのだろうが、まぁ難しい歌ばっかだよね…。


そもそも、いい年したオッサンが「Adoちゃん」などとちゃん付けで呼んでる時点で、色々と察してくれ!という話ではある。



…おや?

今さらながらAdoちゃんAdoちゃんとはしゃぐ俺を見つめる『ギラギラ』した視線が…?

『デッドロック 絶対王者ボイカ』

ア、アドキンスさん!?

AdoAdoAdoAdoうっせえわ!
Adoと言えばキンスやろがい!
地下闘技場王者アドキンスの「私は最強!」な戦いが、今始まる!

それではストーリー!

まずは冒頭、舞台はウクライナ、キエフ。

みんな大好き地下闘技場で圧倒的強さを誇る絶対王者として君臨する男ユーリ・ボイカ、すなわちアドキンスの姿が、そこにはあった。

↑ボイカ(迫真)

ソフトモヒカンに口周りの髭、全身にビシバシ入った刺青という厳ついビジュアルの通り、荒い気性ととんでもねぇ闘争本能をリングの上でこれでもかと見せつけるアドキンスに会場も大盛り上がり、盛大なボイカコールが今日もこだまする。


一方で、ファイトマネーで教会に寄付をするなど、プライベートでは予想外の信心深さを併せ持っていた。

しかし神父様は、救いを求めながらも闘争に身を投じていくアドキンスを、「神はお許しになるだろうか?」と危惧していた。


そんな折り、アドキンスのマネージャーである小太りのオッサンから朗報がもたらされる。

試合のオファーがあったのだ。

地下での賭け試合ではない。全うな試合だ。

しかもその試合には格闘技協会のスカウトも訪れ、勝てば欧州大会のビッグイベントへのチケットを手にできる。


対戦相手の男ヴィクトルも、技術、経験共に十分で闘志に漲り、相手にとって不足ないくらいに強かった。

↑闘志漲るヴィクトル。

しかし、「絶対王者」と称されるアドキンスの強さは尋常のものではなかった。

その有り余る闘争心をこの大舞台でも爆発させ、見事に強敵を打ち倒し、欧州大会へのチケットを手にする。


だが、思いがけない試練が待っていた。

対戦相手のヴィクトルはダウンの際に頭を強打、意識を失い救急搬送されそして、そのまま帰らぬ人となってしまう…。


そう、『ハード・ターゲット2』と同じ展開だ。


公の試合で、正々堂々と戦った上の事故である。アドキンスに罪はない。

しかし皆さんご存知の通り、アドキンスは信心深かった。

死んだ対戦相手が、自身と同じくロシア出身で、しかも故国に妻を残していたと知っては、もう居ても立ってもいられない。

欧州大会を二週間後に控え大事な時期ではあるが、小太りマネージャーの制止も聞かず、ヴィクトルの遺品を届け直接謝罪するため、一人ロシアへと旅立ってしまうのだった。


しかし、小太りマネがロシア行きを止めるのには理由があった。

実はロシアでは脱獄囚としてお尋ね者の身であるアドキンス。

裏ルートでなんとか入国に成功し、ヴィクトルの妻アルマを探し出すが、そこには黒い喪服に身を包んだとんでもねぇ美人未亡人の姿があった。

↑美人未亡人アルマ。

「こいつぁますますほっとけねぇ!」とアドキンスが思ったかどうか分からないが、この美人未亡人にはさらなる事情があった。

子供たちのために養護施設を運営する彼女だが、その資金としてロシアンマフィアから金を借りていたのだ!


美人未亡人…マフィアから借金…あっ…(察し)


そんな俺の期待不安を裏付けるように、彼女に金を貸したマフィアのボスは、偽物のデニーロみたいな面の好色そうな男。

旦那の稼ぎを失ったアルマの元に早速現れ、「割りのいい仕事を紹介してやるよ…(ニチャア)」と迫る。

↑いろいろ(意味深)

こいつ、やっぱり…。


果たして紹介された仕事は、偽デニーロが経営する地下闘技場でのウェイトレスさんだった!

制服がちょっぴりエッチなのはご愛嬌だが、どにでもあるな、地下闘技場!

↑エロ衣装を着せられる美人未亡人。

そんなわけで、マフィアのボスに囲われることとなってしまった美人未亡人。

お陰様でアドキンスもなかなか話さえさせてもらえないというか、「誰か知らんが近付いたら殺す」と脅しを受ける始末だ。

だがその程度の脅しで芋を引く絶対王者ボイカではない。

昼間、養護施設で働く彼女を訪ね、正直に事情を話し、自分に何かできることはないかと問うアドキンス。


しかしアルマも、エロ漫画のようにただただ男にいいようにされて「あなた…ごめんなさい…」と涙を流すような大人しい未亡人ではなかった!


「できること?なら旦那を生き返らせてみろや、ハァン!?それが無理ならとっととウクライナに帰れ!」と、取り付く島もない。


子供に優しくて美人で気も強いとか…最高かよ!?


しかしそれでも、何かしなくちゃ気の済まないアドキンス。

タイミングがいいのか悪いのかちょうどその頃、例の偽デニーロは、最近マンネリ気味な地下闘技場に新たな人材を求めていた。

格好だけいっちょまえのヒヨッ子ではなく、殴り方も殴られ方も知っている歴戦の猛者だ。


そう、アドキンスですね!


そんなわけで、アルマの借金をチャラにすることを条件に、偽デニーロの地下闘技場でファイトすることとなったアドキンス。

一週間で三戦というタイトにもほどがあるスケジュールで、最後に現チャンピオンを倒せばアドキンスの勝ち…美人未亡人は晴れて自由の身だ。


こうして早速始まった第一戦。

頼んでもいないのに勝手な世話を焼かれてご機嫌斜めなアルマが(エッチなウェイトレスコスで)見守る中、初戦をサクッと勝利で飾るアドキンス。

このまま三戦突破してAT(アドキンスタイム)突入か!?と思いきや、そうは問屋が卸さない。

問屋っていうかまぁ偽デニーロがね。


二戦目はまさかの2対1のハンディマッチ!

しかも相手は兄弟でコンビネーションもバッチリだ!

「ここでは俺がルールだ」

偽デニーロが嫌らしい笑みを浮かべる。


しかしそれでも一試合は一試合だ。

三戦して勝たねばアルマは解放されない。

前から後ろから襲いくる敵の猛攻に耐え、どうにか二人をマットに沈めるアドキンス。


しかし当然のことながらダメージも大きかった。

中でも背後から食らった痛撃により腰の痛みがひどい。

それでもボロボロの体に鞭打って、最後の試合に向けてトレーニングを始めるアドキンスに、さすがにほだされてきたのか、謎の自家製塗り薬を調合してアドキンスの腰に手ずからヌリヌリしてあげる美人未亡人。

こうしてちょっぴり二人の距離が縮まったのでした。

↑はぁ~エッロ…

こうなると面白くないのがそう、偽デニーロですね。

最初のうちこそあの嫌らしい笑みで余裕の構えを見せていた偽デニーロだが、やはり本心では美人未亡人を自分の物にしたくてしたくて堪らなかったらしく、アドキンスにあれやこれやと世話を焼くアルマにぶち切れ。

「あいつは人殺しだぞ!今度あいつに近付いたら奴を殺す!」と切れ散らかし、軽く『ドメスティックでバイオレンス』を披露して去っていく。


こうして遂に迎えた運命の三戦目。

相手はこの地下闘技場でマンネリ化する程度には勝ち続けているチャンピオン。

対するアドキンスは腰を痛め、ダメージも蓄積している。

相手にとって不足はねぇ!

↑空手道!?

なんやかんやあって!


激しい攻防の末見事チャンピオンを撃破したアドキンス!

会場内にはロッキーのテーマが流れ(大嘘)美人未亡人アルマも満面の笑みでアドキンスに駆け寄る。

しかしそこへ立ちふさがる人影が一つ。

そう、偽デニーロだ。


「あいつがチャンピオンだなんて誰が言った?」


最早約束なんてクソ食らえ、アドキンスを無事に帰す気もアルマを自由にする気も微塵もない偽デニーロは、真のチャンピオンとして北の刑務所から最強最悪の戦士を呼び寄せていた!

さすがに話が違い過ぎる上に、アドキンスにはウクライナに戻るためのバスの時間が迫っている!

だがしかし、美人未亡人アルマの自由を盾に取られては、アドキンスに選択肢はない。


歯を食いしばり、最後の戦いに身を投じるアドキンス。

対戦相手は通称「悪夢(ナイトメア)」と呼ばれ恐れられた男!

そんなナイトメアさんのご尊顔がこちら!




ファッ!?う~ん…


遂に始まる命懸けのラストバトル!

チートじみた化物相手に『阿修羅ちゃん』と化して戦うアドキンス!

クズ過ぎて最早死ぬしかない偽デニーロ!

さすがにどうかと思うくらいボロボロになるアドキンス!

美人未亡人に膝枕されて半泣きのアドキンス!


果たしてアドキンスは、最後の強敵を倒しアルマの自由を勝ち取り、無事に欧州大会に参加することができるのか!?

そして、美人未亡人はなぜこんなに魅力的なのか!?






…やっぱアドキンスのアクションを…最高やな!


「ネクスト・ヴァンダム」筆頭として確かな実力を持ちながら、いまいち代表作に恵まれない男として一部俺界隈で近年話題沸騰中のアドキンス。

そんなアドキンスにとって「代表作」と呼べるのがこの『デッドロック』シリーズ並びにユーリ・ボイカではないだろうか。


そう、実は本作は『デッドロック』シリーズの四作目。

元はと言えばなんとあの俺たちみんなの脱税番長ウェズリー・スナイプス主演で幕を開けた本シリーズ。

二作目ではこれまたマーシャルアーツアクションの実力者、マイケル・J・ホワイトを主人公に、その敵役として登場したのがユーリ・ボイカだ。

敵ながら天晴れなそのキャラクター造形に、三作目では主役に大抜擢、アドキンス主演での二本目となるのが本作だ。


知ったげに語ってはいるが全部アメブロの先輩に聞いた話で、自分では一本も見たことはないがな!


完璧主義者の俺としては前三作も鑑賞した上で本作をご紹介したかったところだが、円盤化など諸々の事情でそんなことしてたら人生三周くらいしてしまいそうだったので、まぁいっかスピリッツを発揮して今回のレビューと相成った次第。


こうして改めて見ると、アドキンスのアクションとAdoちゃんの楽曲には共通点が多いことに気付く。

…気付く!


Adoちゃんの歌が聞いていてシンプルに気持ちいいとするならば、アドキンスのアクションも見ていてシンプルに気持ちいい。


長身と長い足から放たれる足技はそれだけでもう見栄えがいい。

上へ下へと目まぐるしく打ち分けられる蹴りの尋常でないスピード。

「地面に足が着いている時間より飛んでいる時間の方が長いのでは!?」という人間離れした滞空時間で繰り出されるトリプルアクセルを勘違いしたとしか思えない回転蹴り。

かてて加えて、時おりカットインする闘志剥き出しの野性が、ただ見栄えがいいだけに留まらない魅力を与えている。

↑空中トリプルアクセル。

思い返してみれば同じくアドキンス主演(主演とは言っていない)の『ノー・サレンダー』においても、敵役にも関わらずそのアクションには胸のすくようなカタルシスを覚えたものだ。


公式には「Ado」というアーティスト名は狂言の「アド」「シテ」からきているということになっているが、これを見ればAdoちゃんがアドキンスにインスパイアされたことは明らかだ!

例え綴りが違ったとしても!


また本作は元々ネットフリックス(略してネトリ)で公開された作品。

そのためかどうか分からないが本作の上映時間はエンドロールを含めてもまさかの89分!

本編中のアドキンスも一週間で三試合(厳密には五人と四試合)というタイトにもほどがあるスケジュールをこなしていたが、負けず劣らずのタイトさだ。

しかも89分のうちのほとんどがアドキンスのバトルで占められているのだから恐れ入る。

Adoちゃんの楽曲も常人なら舌を三回ほど噛みちぎりそうなほど早口でがなり立てる歌が多いが、この上映時間の短さとそれに比しての内容の忙しさも、やたらタイパが求められる令和のニーズに即した共通点と言えなくもない。


…とまぁ、無理矢理Adoちゃんにこじつけてはみたものの、本作のストーリーはと言えばこれはもうアドキンスの贖罪の物語。

どちからと言うとさだまさしの『償い』がぴったりな内容だ。

奇しくも本作の主人公の名は「ユーリ・ボイカ」…そう、『償い』と同じく「ゆうちゃん」だ。


しかし歌のゆうちゃんと違い、戦うことしか知らないゆうちゃんの償いは壮絶の一言。

かつて『ハードターゲット2』では試合の中で親友を死なせてしまいやさぐれまくっていたアドキンスだが、本作で戦ったのは全くの初めまして、見ず知らずの赤の他人だった。

ましてや正々堂々と戦った上での事故だ。

それでも、自らの夢への道が塞がれる危険を犯してでも、命を懸けて自分ができる唯一の罪滅ぼしのために戦う、そんな悲壮感に溢れた物語だ。


当初は神父様に「救いの答えは暴力ではないよ?」と忠告されても「神から与えられた格闘の才能を活かさないのは逆に罪!」というとんでもないビッグマウスで応じていたアドキンス。


しかしリングの上で対戦相手を殺めてしまい、あの時の神父様の言葉が脳裏をよぎり、即座にロシア行きを決意する。

目的はただ一つ、許しを得るためだ。

実際作中のアドキンスは、リスキー過ぎるロシア入りを前にして、「今生の心配はしていない」と言っている。


だが許しを得ることは並大抵のことではなかった。

まずは歌のゆうちゃんと同じく、ファイトマネーを丸っと美人未亡人に渡そうとするアドキンスだが、「金のために殺したの?ほーん」みたいな感じで完全拒否。


ならばと黙って偽デニーロと交渉するアドキンスだが、即座に本人の知るところとなり、「私を買うつもり!?」などとキレられる始末。

…え、売ってくれるんっすか!?

ここまで完全拒否されても、ボロボロになりながらも戦い続けるアドキンス。
その試合運びはと言えば、圧倒的不利を根性で巻き返すというドストレートなスポ魂もの!
下手をしたら『ロッキー』を見ているんじゃないかというような胸熱展開で、試合後は思わずボイカコールを叫んでしまうことだろう。
↑ボイカ!ボイカ!

だが戦うゆうちゃんの苦難はまだ終わらない。
1対2の戦いで腰に深刻なダメージを負い、それでも根性で現チャンピオン(空手道)を倒し、さらには一人だけ『マッドマックス』な世界観のナイトメアさんとの死闘も制し、勝利の雄叫びを上げるも既に満身創痍。
そこへ、最早アドキンスを無事に帰す気などさらさらない偽デニーロの部下がバットでめった打ち。
それでも根性で立ち上がるアドキンスに容赦なくぶち込まれる銃弾。

もう常人なら6回くらい転生しているレベルのダメージを負いながらも、最後は鬼神か羅刹のような様相で、結局偽デニーロをくびり殺すという身も蓋もない結末を迎える。
そうして、(網タイツ姿の)美人未亡人さんに膝枕をされて半泣きなアドキンスが、息も絶え絶えに絞り出す。

「望みは何もないと言ったが、本当は一つだけある。…君に許して欲しい…」


…許した!100万回許した!!

はっきり言ってもうこの時点で欧州大会に出場するもクソもなく、あとはアドキンスが許しを得られるかどうかが唯一の救いとなっていた。
が、それでも未亡人の口から「許す」の一言は出てこない!

結局アドキンスは、半死半生のまま警察に連行されていく。
償いとは、許しを得るとは、どれほど困難なことか、これでもかと叩き付けてくるのだった。
例え刑法上はアドキンスに罪はなかったとしてもだ!

そして半年後…半年後!?
本編中の黒い喪服姿とは対照的な白い衣装に身を包み、服役中のアドキンスに面会にやってくる美人未亡人アルマ。
彼女の口からようやく告げられた「許すわ」という言葉を聞いた時、神様!って僕は思わず叫んでいた。
彼は許されたと思っていいのですか?

「アドキンスはキャリアを棒に振ってるんだからもっと早く来いよ!」と思われる向きもあるかも知れないがご指摘には当たらない。
思い出してみて欲しい。
『償い』のゆうちゃんは許しを得るまでに7年の歳月を要した。しかも「許された?」と疑問符が残る形だ。
それを思えばボイカのゆうちゃんは半年に短縮できたのだから大したもんですよ!

ご覧の通り、罪を犯し十字架を背負ってしまった人間が許しを得ることがいかにハードな道であるか、ゴリゴリに描いて見せた本作だが、一方で我々は、本作が示す「もう一つのメッセージ」を見逃してはならない。

本当に「最強」なのは誰なのか?という話だ。
それは、絶対王者として君臨するボイカでも、町を牛耳るマフィアのボスでもない。
そう、美人未亡人ですね!

我ながら人でなしだとは思うが、男は「美人未亡人」というステータスに抗えない。

「それはお前がエロ漫画読みすぎなだけだよ!」と思われるかも知れんが、残念ながら男はみんなそうだ!
なので世の奥さま方は十分に注意をして欲しい。
理由はまぁ各々が推察して頂くとして、とにかくただの「美人」とは一味も二味も違う抗い難い魅力が、「美人未亡人」にはある。
特に本作のアルマは、「ぼくがかんがえたさいきょうのみぼうじん」と言わんばかりのキャラクター造形で、彼女のためなら『マッドマックス』の世界でも頑張れちゃうことだろう。

悲しみを堪えながら伏し目がちな表情が印象的な彼女だが、一方で言うべきことは相手の目をキッと見据えて言う気丈さを併せ持ち、かてて加えて子供たちの未来のために借金を背負ってでも擁護施設を運営するバブみのオーナー!
↑ママァ…

本編中のほとんどを黒い喪服姿で過ごし、一方で「仕事中」は胸元のパックリ開いたエロコスチュームを披露。
しかしそのエロコスは実に悪趣味な感じで描かれており、美人未亡人の魅力の本質が露出の多寡にはないことを見事に表現している!

また、自身の借金帳消しのために傷付きながら戦うアドキンスの勇姿に、ちょっぴりほだされそうになりながらも、それでもそんな簡単に許すことなんてできない、そんな感情の揺れ動きの表現力も素晴らしい。
特に、偽デニーロの汚ぇ作戦で2対1のハンデマッチを強いられたアドキンスが、苦戦しながらも押し返し始めた時に思わずニヤリとしてしまう彼女の姿は必見だ!
↑ニヤリ…

さらに言えば、「マフィアから借金を背負った美人未亡人」などという、エロ漫画なら2ページ目ではもう黒ストッキングをビリビリに破られてそうな設定ながら、濡れ場などというものは完膚なきまでに皆無!
一番エロかったのがアドキンスの腰にお薬をヌリヌリしてあげるシーンだったと言えば、その徹底っぷりを察して頂けるだろうか?
だがしかし、美人未亡人に腰をヌリヌリされて奮起しない男がいるだろうか?いや、いない!(反語)
例え薬の成分は謎だったとしてもだ!
↑わざわざ指輪まで映してお前…

もちろん表向きはアドキンスの贖罪の物語。
許してもらえるかどうかの世界であり、そこに色恋などを差し挟む余地などない。
当のアドキンスも許し以外に望むものはなく、実際になんの見返りもなかった。
強いて言うなら腰にヌリヌリしてもらったのと網タイツで膝枕してもらったくらいだ!

だが冷静に考えてみて欲しい。
これが美人未亡人じゃなかったらアドキンスはあそこまで頑張れただろうか?と。
あれほどボロボロになりながら、何度も何度も何度も立ち上がることができただろうか?と。
極端な話、残されていたのが息子のファイトマネーに集って生きるアル中のクソ親父で借金もギャンブルでこさえたとかだったら、いくら信仰に厚いアドキンスでも「もうええわ!」と途中で諦め、きっちり欧州大会に参加していたのではないかと思う。
そう考えると件の美人未亡人は、メガンテばりに命を削った底力を引き出すとんでもねぇバフ効果を持っていたと言えるだろう。

しかし、「美人未亡人」という最強カードに人生を狂わされたのはアドキンスだけではない。
忘れてはならないのが偽デニーロだ。
当初は町を牛耳る支配者、圧倒的強者として余裕の振る舞いを見せていた彼氏。
収入源の一つである地下闘技場を盛り立てるためにカリスマ性のあるアドキンスを引き入れたまでは良かった。
しかし次第に嫉妬に狂い、最後の試合ではバットやら銃やらでアドキンスを本気で潰しにかかり満員の観衆をドン引きさせ、挙げ句には想像以上の阿修羅ちゃんと化したアドキンスにくびり殺されるという哀れな末路を辿る。

物語を盛り上げる悪役に相応しいクズっぷりではあるが、彼にはもう一つ、大きな役割があったように思う。
そう、美人未亡人のエロさを引き立てる役割ですね!

まずは冒頭、葬式の会場に乗り込んでくると、ネットリとした視線で見つめながらアルマの手にキッスしながら、悔やむ気など微塵も感じられないお悔やみを申し上げる偽デニーロ。

取って返す刀で「僕の借金はどうするのかな~?(ニチャア)」などと言いながら頬にソフトタッチ、「色々面倒見てやるよ~(ニチャア)」と黒い喪服の袖から伸びる白い二の腕にソフトタッチと、効果的なジャブを矢継ぎ早に決めてくる。

この、隙あらばボディタッチを狙ってくるナチュラルセクシャルハラスメンタリストムーブには、我々同じ男としても「クソッ!チ○コでかそうな鼻しやがって!」と悪態をつくしかなかった。

そんな偽デニーロのいやらしさが最高潮に達するシーンがある。
これはもう、何も聞かず画像だけを見て欲しい。






こいつやりやがった!!

この完全に寝取られ系エロ漫画のような流れはどうだ!?
うらやま…もとい、うらやま…もとい、うらやま…もとい、けしからん!!

しかもこの前に、「お前さてはアドキンスとヤッたんやろ!?」というゲスの極み発言も投下していますからね。
合わせ技一本で死刑ってところか…。
ぶっちゃけて言うと、結局偽デニーロは唇以上のものは奪えなかったわけだが、風情あるエロスの描き方であると同時に、監督の二の腕への熱い拘りも見て取れる名シーンなのだった。

そんなわけで、無理矢理Adoちゃんにこじつけて始まった今回のレビュー。
途中、さだまさしに飛び火しつつも、短い時間の中でアドキンスのアクションを存分に堪能できただけでなく、その重たいストーリーに見合った演技力に息を飲み、最終的には美人未亡人のことで頭が一杯になった本作。

ただ一つ、圧倒的後悔もある。
やっぱシリーズの過去作も見とけば良かったなって…。
本作が名作であればあるほどに、ユーリ・ボイカが名キャラクターであればあるほどに、過去のエピソードを知っていればより一層楽しめたのにと歯噛みする次第だ。
ユーリ・ボイカがかつて犯した過ちとは何だったのか。
圧倒的カリスマとして君臨した彼が敗れ、落ちぶれ、再び立ち上がる中で、どのようにして信仰に目覚めたのか。
知っていればさらに熱くなれるポイントもあったはずだ。

「どこかにデッドロック2のDVD落ちてねぇかなぁ!?」
そんなことを考えながらBOOK・○FF(伏せ字)の店内を油断なく見渡しつつ、気付けば最近薄着になってきた道行くMilfの二の腕を凝視しているそんな俺なのでした。

Ado「くせぇ口ふさげや限界です」

…それでは皆さん、次回、三周目の人生でお会いしましょう!