昨日ヤホーで凄い歌手を見つけたんですけどね。(ナイツ風)
Adoって知ってます?
「あなたが思うより通暁です」
どうも、今さらながらAdoちゃんのCDを借りてみた僕です。
思えば今から数年前、ネットのストリーミングチャートで『うっせえわ』なる曲が破竹の勢いで盛り上がっていた。
まさに彗星の如く現れた新時代の歌姫、この曲から彼女を知ったという人がほとんどだろう。
しかし、当時既にオッサンだった俺としては、ストリーミング再生数などというステータスはピンとこず、『うっせえわ』などというふざけたタイトルも相まって、「どうせネットだけで盛り上がってる内輪ネタみたいなやつだろ?そんなんで日本のヒットチャートを汚染してもらっちゃあ困るなぁ!」などと思っていた。
イエモンとアニソンしか聞かないにも関わらずだ!
しかしその後のAdoちゃんの活躍は皆さんご存知の通り。
まず『うっせえわ』が子供たちの間で流行り始めたあたりで異変に気付いた。
「これ社会現象になるやつじゃね?」と。
案の定その後も彼女は、初ライブでドカン、『ワンピース』とタイアップでドカン、紅白でドカンと、ドデカい花火を打ち上げ続けた。
そうして迎えた過日のゴールデンウィーク、実家に里帰りした際、長いドライブのお供にとこの期に及んでAdoちゃんのアルバムを借りてみたという寸法だ。子供も喜ぶしね!
結論から言えば、そりゃ売れるのも納得だ。
なんせ聞いていて気持ちいい。
力強い低音に跳ね上がるような高音、隙あらば発動する「がなり」と、カタルシスさえ覚えるレベルだ。
自分で上手に歌えればさらに気持ちいいのだろうが、まぁ難しい歌ばっかだよね…。
そもそも、いい年したオッサンが「Adoちゃん」などとちゃん付けで呼んでる時点で、色々と察してくれ!という話ではある。
…おや?
今さらながらAdoちゃんAdoちゃんとはしゃぐ俺を見つめる『ギラギラ』した視線が…?
まずは冒頭、舞台はウクライナ、キエフ。
みんな大好き地下闘技場で圧倒的強さを誇る絶対王者として君臨する男ユーリ・ボイカ、すなわちアドキンスの姿が、そこにはあった。
ソフトモヒカンに口周りの髭、全身にビシバシ入った刺青という厳ついビジュアルの通り、荒い気性ととんでもねぇ闘争本能をリングの上でこれでもかと見せつけるアドキンスに会場も大盛り上がり、盛大なボイカコールが今日もこだまする。
一方で、ファイトマネーで教会に寄付をするなど、プライベートでは予想外の信心深さを併せ持っていた。
しかし神父様は、救いを求めながらも闘争に身を投じていくアドキンスを、「神はお許しになるだろうか?」と危惧していた。
そんな折り、アドキンスのマネージャーである小太りのオッサンから朗報がもたらされる。
試合のオファーがあったのだ。
地下での賭け試合ではない。全うな試合だ。
しかもその試合には格闘技協会のスカウトも訪れ、勝てば欧州大会のビッグイベントへのチケットを手にできる。
対戦相手の男ヴィクトルも、技術、経験共に十分で闘志に漲り、相手にとって不足ないくらいに強かった。
しかし、「絶対王者」と称されるアドキンスの強さは尋常のものではなかった。
その有り余る闘争心をこの大舞台でも爆発させ、見事に強敵を打ち倒し、欧州大会へのチケットを手にする。
だが、思いがけない試練が待っていた。
対戦相手のヴィクトルはダウンの際に頭を強打、意識を失い救急搬送されそして、そのまま帰らぬ人となってしまう…。
そう、『ハード・ターゲット2』と同じ展開だ。
公の試合で、正々堂々と戦った上の事故である。アドキンスに罪はない。
しかし皆さんご存知の通り、アドキンスは信心深かった。
死んだ対戦相手が、自身と同じくロシア出身で、しかも故国に妻を残していたと知っては、もう居ても立ってもいられない。
欧州大会を二週間後に控え大事な時期ではあるが、小太りマネージャーの制止も聞かず、ヴィクトルの遺品を届け直接謝罪するため、一人ロシアへと旅立ってしまうのだった。
しかし、小太りマネがロシア行きを止めるのには理由があった。
実はロシアでは脱獄囚としてお尋ね者の身であるアドキンス。
裏ルートでなんとか入国に成功し、ヴィクトルの妻アルマを探し出すが、そこには黒い喪服に身を包んだとんでもねぇ美人未亡人の姿があった。
「こいつぁますますほっとけねぇ!」とアドキンスが思ったかどうか分からないが、この美人未亡人にはさらなる事情があった。
子供たちのために養護施設を運営する彼女だが、その資金としてロシアンマフィアから金を借りていたのだ!
美人未亡人…マフィアから借金…あっ…(察し)
そんな俺の期待不安を裏付けるように、彼女に金を貸したマフィアのボスは、偽物のデニーロみたいな面の好色そうな男。
旦那の稼ぎを失ったアルマの元に早速現れ、「割りのいい仕事を紹介してやるよ…(ニチャア)」と迫る。
こいつ、やっぱり…。
果たして紹介された仕事は、偽デニーロが経営する地下闘技場でのウェイトレスさんだった!
制服がちょっぴりエッチなのはご愛嬌だが、どにでもあるな、地下闘技場!
そんなわけで、マフィアのボスに囲われることとなってしまった美人未亡人。
お陰様でアドキンスもなかなか話さえさせてもらえないというか、「誰か知らんが近付いたら殺す」と脅しを受ける始末だ。
だがその程度の脅しで芋を引く絶対王者ボイカではない。
昼間、養護施設で働く彼女を訪ね、正直に事情を話し、自分に何かできることはないかと問うアドキンス。
しかしアルマも、エロ漫画のようにただただ男にいいようにされて「あなた…ごめんなさい…」と涙を流すような大人しい未亡人ではなかった!
「できること?なら旦那を生き返らせてみろや、ハァン!?それが無理ならとっととウクライナに帰れ!」と、取り付く島もない。
子供に優しくて美人で気も強いとか…最高かよ!?
しかしそれでも、何かしなくちゃ気の済まないアドキンス。
タイミングがいいのか悪いのかちょうどその頃、例の偽デニーロは、最近マンネリ気味な地下闘技場に新たな人材を求めていた。
格好だけいっちょまえのヒヨッ子ではなく、殴り方も殴られ方も知っている歴戦の猛者だ。
そう、アドキンスですね!
そんなわけで、アルマの借金をチャラにすることを条件に、偽デニーロの地下闘技場でファイトすることとなったアドキンス。
一週間で三戦というタイトにもほどがあるスケジュールで、最後に現チャンピオンを倒せばアドキンスの勝ち…美人未亡人は晴れて自由の身だ。
こうして早速始まった第一戦。
頼んでもいないのに勝手な世話を焼かれてご機嫌斜めなアルマが(エッチなウェイトレスコスで)見守る中、初戦をサクッと勝利で飾るアドキンス。
このまま三戦突破してAT(アドキンスタイム)突入か!?と思いきや、そうは問屋が卸さない。
問屋っていうかまぁ偽デニーロがね。
二戦目はまさかの2対1のハンディマッチ!
しかも相手は兄弟でコンビネーションもバッチリだ!
「ここでは俺がルールだ」
偽デニーロが嫌らしい笑みを浮かべる。
しかしそれでも一試合は一試合だ。
三戦して勝たねばアルマは解放されない。
前から後ろから襲いくる敵の猛攻に耐え、どうにか二人をマットに沈めるアドキンス。
しかし当然のことながらダメージも大きかった。
中でも背後から食らった痛撃により腰の痛みがひどい。
それでもボロボロの体に鞭打って、最後の試合に向けてトレーニングを始めるアドキンスに、さすがにほだされてきたのか、謎の自家製塗り薬を調合してアドキンスの腰に手ずからヌリヌリしてあげる美人未亡人。
こうしてちょっぴり二人の距離が縮まったのでした。
こうなると面白くないのがそう、偽デニーロですね。
最初のうちこそあの嫌らしい笑みで余裕の構えを見せていた偽デニーロだが、やはり本心では美人未亡人を自分の物にしたくてしたくて堪らなかったらしく、アドキンスにあれやこれやと世話を焼くアルマにぶち切れ。
「あいつは人殺しだぞ!今度あいつに近付いたら奴を殺す!」と切れ散らかし、軽く『ドメスティックでバイオレンス』を披露して去っていく。
こうして遂に迎えた運命の三戦目。
相手はこの地下闘技場でマンネリ化する程度には勝ち続けているチャンピオン。
対するアドキンスは腰を痛め、ダメージも蓄積している。
相手にとって不足はねぇ!
なんやかんやあって!
激しい攻防の末見事チャンピオンを撃破したアドキンス!
会場内にはロッキーのテーマが流れ(大嘘)美人未亡人アルマも満面の笑みでアドキンスに駆け寄る。
しかしそこへ立ちふさがる人影が一つ。
そう、偽デニーロだ。
「あいつがチャンピオンだなんて誰が言った?」
最早約束なんてクソ食らえ、アドキンスを無事に帰す気もアルマを自由にする気も微塵もない偽デニーロは、真のチャンピオンとして北の刑務所から最強最悪の戦士を呼び寄せていた!
さすがに話が違い過ぎる上に、アドキンスにはウクライナに戻るためのバスの時間が迫っている!
だがしかし、美人未亡人アルマの自由を盾に取られては、アドキンスに選択肢はない。
歯を食いしばり、最後の戦いに身を投じるアドキンス。
対戦相手は通称「悪夢(ナイトメア)」と呼ばれ恐れられた男!
そんなナイトメアさんのご尊顔がこちら!
ファッ!?う~ん…
遂に始まる命懸けのラストバトル!
チートじみた化物相手に『阿修羅ちゃん』と化して戦うアドキンス!
クズ過ぎて最早死ぬしかない偽デニーロ!
さすがにどうかと思うくらいボロボロになるアドキンス!
美人未亡人に膝枕されて半泣きのアドキンス!
果たしてアドキンスは、最後の強敵を倒しアルマの自由を勝ち取り、無事に欧州大会に参加することができるのか!?
そして、美人未亡人はなぜこんなに魅力的なのか!?
…やっぱアドキンスのアクションを…最高やな!
「ネクスト・ヴァンダム」筆頭として確かな実力を持ちながら、いまいち代表作に恵まれない男として一部俺界隈で近年話題沸騰中のアドキンス。
そんなアドキンスにとって「代表作」と呼べるのがこの『デッドロック』シリーズ並びにユーリ・ボイカではないだろうか。
そう、実は本作は『デッドロック』シリーズの四作目。
元はと言えばなんとあの俺たちみんなの脱税番長ウェズリー・スナイプス主演で幕を開けた本シリーズ。
二作目ではこれまたマーシャルアーツアクションの実力者、マイケル・J・ホワイトを主人公に、その敵役として登場したのがユーリ・ボイカだ。
敵ながら天晴れなそのキャラクター造形に、三作目では主役に大抜擢、アドキンス主演での二本目となるのが本作だ。
知ったげに語ってはいるが全部アメブロの先輩に聞いた話で、自分では一本も見たことはないがな!
完璧主義者の俺としては前三作も鑑賞した上で本作をご紹介したかったところだが、円盤化など諸々の事情でそんなことしてたら人生三周くらいしてしまいそうだったので、まぁいっかスピリッツを発揮して今回のレビューと相成った次第。
こうして改めて見ると、アドキンスのアクションとAdoちゃんの楽曲には共通点が多いことに気付く。
…気付く!
Adoちゃんの歌が聞いていてシンプルに気持ちいいとするならば、アドキンスのアクションも見ていてシンプルに気持ちいい。
長身と長い足から放たれる足技はそれだけでもう見栄えがいい。
上へ下へと目まぐるしく打ち分けられる蹴りの尋常でないスピード。
「地面に足が着いている時間より飛んでいる時間の方が長いのでは!?」という人間離れした滞空時間で繰り出されるトリプルアクセルを勘違いしたとしか思えない回転蹴り。
かてて加えて、時おりカットインする闘志剥き出しの野性が、ただ見栄えがいいだけに留まらない魅力を与えている。
思い返してみれば同じくアドキンス主演(主演とは言っていない)の『ノー・サレンダー』においても、敵役にも関わらずそのアクションには胸のすくようなカタルシスを覚えたものだ。
公式には「Ado」というアーティスト名は狂言の「アド」「シテ」からきているということになっているが、これを見ればAdoちゃんがアドキンスにインスパイアされたことは明らかだ!
例え綴りが違ったとしても!
また本作は元々ネットフリックス(略してネトリ)で公開された作品。
そのためかどうか分からないが本作の上映時間はエンドロールを含めてもまさかの89分!
本編中のアドキンスも一週間で三試合(厳密には五人と四試合)というタイトにもほどがあるスケジュールをこなしていたが、負けず劣らずのタイトさだ。
しかも89分のうちのほとんどがアドキンスのバトルで占められているのだから恐れ入る。
Adoちゃんの楽曲も常人なら舌を三回ほど噛みちぎりそうなほど早口でがなり立てる歌が多いが、この上映時間の短さとそれに比しての内容の忙しさも、やたらタイパが求められる令和のニーズに即した共通点と言えなくもない。
…とまぁ、無理矢理Adoちゃんにこじつけてはみたものの、本作のストーリーはと言えばこれはもうアドキンスの贖罪の物語。
どちからと言うとさだまさしの『償い』がぴったりな内容だ。
奇しくも本作の主人公の名は「ユーリ・ボイカ」…そう、『償い』と同じく「ゆうちゃん」だ。
しかし歌のゆうちゃんと違い、戦うことしか知らないゆうちゃんの償いは壮絶の一言。
かつて『ハードターゲット2』では試合の中で親友を死なせてしまいやさぐれまくっていたアドキンスだが、本作で戦ったのは全くの初めまして、見ず知らずの赤の他人だった。
ましてや正々堂々と戦った上での事故だ。
それでも、自らの夢への道が塞がれる危険を犯してでも、命を懸けて自分ができる唯一の罪滅ぼしのために戦う、そんな悲壮感に溢れた物語だ。
当初は神父様に「救いの答えは暴力ではないよ?」と忠告されても「神から与えられた格闘の才能を活かさないのは逆に罪!」というとんでもないビッグマウスで応じていたアドキンス。
しかしリングの上で対戦相手を殺めてしまい、あの時の神父様の言葉が脳裏をよぎり、即座にロシア行きを決意する。
目的はただ一つ、許しを得るためだ。
実際作中のアドキンスは、リスキー過ぎるロシア入りを前にして、「今生の心配はしていない」と言っている。
だが許しを得ることは並大抵のことではなかった。
まずは歌のゆうちゃんと同じく、ファイトマネーを丸っと美人未亡人に渡そうとするアドキンスだが、「金のために殺したの?ほーん」みたいな感じで完全拒否。