皆さんこんにちは。

インターネット講座、「ツンデレ総論」のお時間です。

講師はわたくし、「講師と呼ぶには私見が入り過ぎる」でお馴染みのキャンです。よろしくお願いします。

さて、第1919回となります今回は、「形式化されるツンデレ」と題して学習していきましょう。


…飽きたから普通の口調に戻していい?(早いなおい)


おそらくは皆さんご存知の通り、いわゆる「ツンデレ」と言えば、多くの場合アニメや漫画などにおいて、「普段はツンツンとキツい態度を取っているのに何かのきっかけで好意を表に出したデレデレした態度に変わる」といった性質を有するキャラクターに対して用いられる用語だ。


一言でツンデレと言っても、その歴史は意外と古く、いくつかのタイプに分類することも可能で、詳しく知りたい方はマインフロイント(我が友)ウィキペディ男に聞いてもらえば、ちょっと引くくらい熱い解説を披露してくれるだろう。


いずれにしてもツンデレキャラの主眼は、「ツン」と「デレ」のギャップを愛でるものであり、あるいは、本当は好きなのに素直になれない二律背反な乙女心にキュンキュンするものであり、今や絶大な人気を誇る萌え要素の一つだ。


確かにその魅力は認める。

そりゃ可愛いよ。萌えるよ。大好物だよ。

だが待ってほしい。

それでも俺はあえて警鐘を鳴らしたい。


人気があるがゆえに、「ツンデレ」がいつの間にか形式化、テンプレ化されていないだろうか?と。


つり目でツインテ、あと貧乳。

「ツンデレ」と聞いてこのようなビジュアルを思い浮かべる人は多いのではないだろうか。

そして必ずと言っていいほど登場するのが、「べ、別にアンタのために○○したわけじゃないんだからね!」このリリックである。


「べ、別にアンタのために作ったわけじゃないんだからね!(お弁当)」


「べ、別にアンタのために編んだわけじゃないんだからね(マフラー)」


「べ、別にアンタのために取得したわけじゃないんだからね!(危険物取扱乙種第4類)」


等々…。


いくら魅力的だからと言っても、あまり安易にテンプレに頼りすぎるというのは、ともすればキャラクター軽視にもなりかねない。

また、かねてから指摘していることではあるが、何事もバランスが重要だ。

我々は誰もが、多かれ少なかれツンデレ要素は持っている。

善の心と悪の心があるように、ツンデレ要素もあればヤンデレ要素もあり、アッパー系要素もあればダウナー系要素もある。

それら多種多様な要素がそれぞれに独自の割合で配合されることで、一個の人格を形作っているのだ。


非現実のキャラクターをしっかりと起て、より実存感を持たせるためにも、このあたりの繊細なバランス感覚が大切なように思う。


「べ、別にアンタのために発見したわけじゃないんだからね!(STAP細胞)」


言えばいいというわけではない。


「べ、別にアンタのために征服したわけじゃないんだからね!(世界)」


説得力があるだろうか?


これから先、おそらくは数多くのキャラクターを産み出していくであろうクリエイターさんたちにおかれましては、是非ともテンプレに囚われない新機軸なツンデレ表現によって、我々の心をがっちりハートキャッチプリキュア!して欲しいところである。


それはそれとして、今からおよそ45年も前にテンプレに囚われない最強のツンデレキャラが存在していたことを、皆さんはご存知だろうか?

『成龍拳』

ジャッキーじゃねぇか!!

世界のジャッキー・チェンが遂に登場!
若き日のジャッキーが挑むゴリゴリの武侠アクション!
真の敵はツンデレ姐さんか寝とり野郎か!?
愛憎渦巻く三つ巴の戦いが、今始まる!

それではストーリー!

舞台は、ちょっと昔の中国のどっか。
今日は、この地を治める総督の還暦の誕生日ということで、祝いの宴が催され、各地から多くの有力者が集まっていた。
そんな中、召し使いの女性の一人、千千(チェンチェン)は、こっそりと酒席を抜け出すと、いずこかへと駆けていく。

「千千の桁が一つ上がったら万万(マンマン)か…」などと俺が考えているうちに、彼女はとある男性のもとに辿り着く。
どうやら恋人と密会するために抜け出してきたらしい。

その恋人こそが総督の一人息子小雷(シャオレイ)…すなわちジャッキーだ!

「さすがジャッキー!身分違いの恋もお手のものだぜ!」と盛り上がったのも束の間、せっかく可愛い彼女が息を切らせて駆けて来たというのに、ジャッキーは仏頂面のままだ。
千千に服に付いた血を指摘されれば、「処女を抱いて来たからだ!お前と同じようにな!」などと乱暴に言い放ち、浮気したのかと咎められれば、「召し使いのくせに女房面すんな!」と逆ギレ、挙げ句に、ジャッキーとの子供を身籠ったと聞かされればまさかのビンタ一閃、「誰の子か分かったものか!」などと言ってはいけない台詞を繰り出し、千千を屋敷から追い出してしまう。

…ジャッキー…さん…?

さらに、おっとり刀で父総督の宴席に現れたジャッキーは、せっかく集まった参列者たちを「どうせ女目当てだろ!浅ましい奴らめ!ペッ」と罵倒し、空気を読んだ参列者たちもそそくさと退散してしまうのだった。

これには、仁徳で知られた総督も切れましてねぇ…。
「よくもワシの顔に泥を塗りおって!お前なんかもう息子じゃないわい!出て行け!」とわめき散らすが、ジャッキーは動こうとしない。

「今夜は誰もいない方がいい。殺されるのは俺一人で十分だ」

そう、一連のジャッキーの言動には理由があった。
残虐無比な盗賊集団、「花蜂党」が今宵、この屋敷を襲うという情報を掴んでいたのだ。
きゃつらは冷酷で、獲物は皆殺しにする。
ジャッキーは敢えて泥をかぶり、参列者や恋人の千千を危険から遠ざけたのだ!

そしてこの「花蜂党」と父総督には、浅からぬ因縁があった。
15年前、総督は花蜂党と戦い、これを壊滅寸前まで追いやった。
しかし僅かな情けをかけたがために、15年の歳月をかけて再起を図り、今宵ついに、積年の恨みを晴らすためにやって来るのだ!

「あなたと結婚した時に誓いました。お側を離れません」

既に事情を知り覚悟を決めていた総督の妻が隣に寄り添う。

「これまでの恩を忘れ逃げることなどできませぬ!」

いくたりかの忠心溢れる部下たちも、屋敷に残り迎え撃つ構えだ!

「良き部下を持った…。良き家族を持った…。ワシは幸せ者だ」

遂に始まる花蜂党の大襲撃!
あやかしの術で翻弄する花蜂党!
とても還暦とは思えない身のこなしで善戦する総督夫妻!
無双の強さを誇る花蜂党女党首の前に、遂に倒れる総督夫妻!
↑花蜂党女党首さん。はえ~、すんごい美人。

こうして屋敷には火がかけられ、ジャッキー家は一族郎党皆殺しの憂き目に会ってしまうのだった…。

『成龍拳』完!

嘘です。まだ序盤に過ぎません。

まだ序盤に…序盤に…ジョバンニ…?
カンパネルラー!!(忘れかけたお約束)

惨劇から一夜明け、ジャッキーは屋敷の外で意識を取り戻した。
まだ命はある。
目の前には、両親を殺したあの花蜂党女党首が佇んでいる。

「これでお前は天涯孤独の身となった。私と同じ苦しみの中で生きるがいい!これが私の復讐だ!」

女党首は高笑いしながら去っていくのだった。

家族も殺され、家も焼かれ、おめおめと一人だけ生き延びてしまったジャッキー。
唯一の希望は恋人の千千だ。
死を覚悟していたジャッキーは、千千とお腹の子のことを、親友である金川(ジンチュン)に託していた。
↑親友の金川。いかにも寝とりそうな顔してますわ…。

しかし、深く傷付いた千千は、もうこの町にはいたくないと言い、金川と共にいずこかへ旅立った後。

「チェンチェーン!カムバーック!!」

ジャッキーの叫びも虚しく、二人の行方は杳として知れないのであった。

その夜、一人寂しく床についたジャッキーの元に、再びあの花蜂党の女党首が現れる。

「お前はただのケダモノよ!」

嘲笑うかのように言い放つ花蜂姐さん。
心身共に疲弊し切っていたジャッキー。

「俺はケダモノ…俺は…あれ?千千?

よほど参っていたらしく、愛しい恋人の幻覚を見てしまったジャッキーは、親の仇である花蜂姐さんを千千と思い込んで押し倒してしまう。
花蜂姐さんも花蜂姐さんで、あれほどの強さを誇っていたのに急にしおらしくなって、「キャッ」などと可愛い悲鳴を上げて押し倒されてしまうのだった!
↑「キャッ」

…花蜂…姐さん…?

チュンチュンチュン(朝チュン)

翌朝、事後の余韻のままスヤスヤと眠る半裸のジャッキーの姿が、そこにはあった。
人のことを押し倒しておいて、なおもうわ言で「千千、千千」と口走るジャッキーになんだかムカついた花蜂姐さんは、寝顔にビンタをぶちかまして去っていくのだった。

花蜂姐さん!?

しかし、アクション映画で事後と言えば襲われると相場が決まっていますよ。
謎の三人組が事後のジャッキーを急襲!
花蜂党の手の者ではない。
奴らの名は悪名高い殺し屋集団「血雨党」
何者かの依頼でジャッキーを捕えに襲ってきたのだ。

懸命に応戦し、どうにか三人のうちの一人は倒したジャッキーだったが、やはり多勢に無勢、あと多分、昨夜のぶつかり稽古で足腰にきていると思うので、遂には毒ガスを浴びて身動きが取れなくなってしまう。

そこへ現れたのは、関羽っぽい出で立ちのヒゲの立派なオッサンと愉快な仲間たち!
彼らこそが血雨党への依頼人であった。

痺れて動けないジャッキーを見たオッサンは言う。

「アイヤー!人違いアル!!」

おい、いい加減にしろよオッサン!

どうやら、「この家にいるはずだった別の男」を狙っていた様子のオッサンたち。
さすがに無実の男を手にかけたとあっては道義が立たないので、ジャッキーの命を助けることを即断即決。
しかし、それでは収まりがつかないのが血雨党の殺し屋さんたちだ。
何せ仲間を一人殺されている。
報復としてジャッキーを殺させろと要求。
しかし、存外男気に溢れるヒゲのオッサンは命を懸けてもジャッキーを守ると高らかに宣言!
ジャッキーをも倒した二人を向こうに回して見事撃退に成功するのだった!

…そんなに強いんならなんで殺し屋雇ったの…?

人違いのお詫びにオッサン邸で介抱を受けつつ、説明されたところによると状況はこうだ。
オッサンの名は龍四(ロンスー)、この辺りを守る警備隊飛龍隊の隊長だ。
飛龍隊はこの度、さる貴人から輸送警護の任を仰せつかった。

サル貴人…ウキー!

ごめん、なんでもない。

しかしその道中、貴重な宝石が一人の男によって盗まれてしまった。
宝石は、とても龍四隊長の財産であがなえるものではない。
そして何より、与えられた任を全う出来なかったとあっては名誉が失われる。

宝石を盗んだ男は、龍四隊長が親友と信じた男。
名は金川!
そう、ジャッキーが恋人を託した、あの寝とりそうな顔の男だ!

自身の親友でもある金川を盗人呼ばわりされ、命を救われた恩義は感じつつも一度は龍四らに背を向けるジャッキー。
しかし、花蜂党の襲撃の後、両親らの亡骸を弔ってくれたのも龍四と知り、兄弟の盃を交わして飛龍隊に同行することを決めるジャッキーなのだった。

…あれ、やっぱり関羽かな?

金川の手がかりを探りつつ旅を続ける飛龍隊とジャッキーだったが、その道中、「逆らったやつには血の雨が降る」でお馴染みの血雨党の襲撃を受ける。
龍四隊長が殺し屋さんの要求を突っぱねて痛め付けたことへの報復にやって来たのだ。

「俺は…龍四隊長の弟、龍五だ!」

兄弟の盃を交わしてすっかりやる気のジャッキーは、恩に報いるのはまさに今!とばかりに、この場を買って出る。
兄弟扱いされてすっかり感無量の龍兄ちゃんも、ジャッキーの勇姿を見守る。

…いや、龍兄ちゃん強いんだからちょっとは加勢しなよ…。

案の定というか何と言うか、かなり奮闘するも敵のビックリドッキリ武器によって遂に瀕死の重傷を負ってしまうジャッキー。
絶体絶命のピンチに颯爽と現れたのはそう、花蜂姐さんだ。
↑姐さんカッケェ…。

ジャッキーでさえ敵わなかった血雨党の殺し屋どもを、たった一人で次々と討ち倒し、遂にはこれを全滅させる花蜂姐さん。

「べ、別にアンタのために殺し屋集団を皆殺しにしたわけじゃないんだからね!」

血雨党は退けたものの、ジャッキーの危機が去ったわけではない。
「彼の命を救えるのは私だけよ」と、ジャッキーの身柄の引渡しを要求する花蜂姐さん。
龍兄ちゃんとしては、いくら腕っぷしが強くても、どこの誰とも知れない女に大切な兄弟を預けるのは承諾しかねる話だったが、ジャッキーの傷は医者も匙を投げるほど深く、花蜂姐さんの提案を飲むしかなかった。

ジャッキーを花蜂姐さんに託し、依頼を受けていたさる貴人の元へ向かう龍兄ちゃん。

…サル貴人…ウキー!

ごめん、二度と言わないよ。

結局宝石は取り戻せず、任務の期日を迎えてしまった。
かくなる上は、その命をもって失敗を償う覚悟だ。
しかし、そこに待っていたのは思いもかけない意外な人物だった!

「お前がさる貴人だと…!?」

そう、サルだ。
ウキー!!

ごめんなさい、嘘です。

その男こそが飛龍隊が追っていた男!
龍兄ちゃんを欺き、宝石を盗んで消えた憎いアンチクショウ!
寝とり顔でお馴染みの金川だ!

だがなぜ?
自分で命じて自分で盗むなど一体何のために?
実は金川には、寝とり野郎以外にもう一つ裏の顔があった。

そう、サルだ。
ウキー!!

うん、自分でもやり過ぎなのは分かってる。

何を隠そうこの金川のもう一つの顔とは、あの血雨党の党首であった!(もったいぶったネタバレ)
血雨党による支配を目論む寝とり野郎としては、飛龍隊の存在が邪魔だった。
全ては、任務失敗の咎で龍兄ちゃんを殺すために仕組まれた卑劣な策謀だったのだ!

全ての秘密を明かし、龍兄ちゃんを始末するために襲いかかる寝とり野郎。
しかしこの寝とり野郎、いちいち策謀を巡らせる意味が分からないくらい強かった!
龍兄ちゃんに加え、飛龍隊副隊長のオッサンまで向こうに回し、1対2のハンディマッチをものともせず圧倒!
拳一つで二人を葬り去ってしまうのだった!
↑龍兄ちゃん!サルにやられたのか!?

こうしてすっかり邪魔者を始末した寝とり野郎は遂に本領発揮。
事情を知らない千千に満を持してプロポーズ!
千千も千千で、「お腹の子のためだからね、仕方ないね」といった塩梅でこれを承諾してしまう。

一方その頃のジャッキーはと言えば、花蜂姐さんの甲斐甲斐しい介抱によって命は取り留めたものの、なんかもう色々あってめんどくさくなったのか、体育座りで虚空を眺めるだけのお人形さんに成り下がっていた!
↑体育座りジャッキー。

世話をしていた仲間の女性によると、意識が戻っても飲まず食わずで、ただ「千千」と呟くだけと…。

これには花蜂姐さんもキレましてねぇ…。

「千千と龍四がどうなっか知りたいか?生きているなら頷きな!」

千千がさる貴族(ウキー)に嫁ぐこと、龍兄ちゃんが血雨党の党首に殺されたこと、そして両者とも相手は同じ、ジャッキーが親友と信じた金川であることを、早口で全部ネタバレする花蜂姐さん。
怒りでようやく生きる気力の沸いてきたジャッキーは、そのままの勢いで花蜂姐さんの屋敷から飛び出そうとするが、そうは問屋が卸さない。
鉄砲玉みたいなジャッキーをボコボコにして制止し、花蜂姐さんが告げる。

「今のアンタじゃあの寝とり野郎には敵わない。ここから出たけりゃアタイを倒してからだよ!

こうしてジャッキーの過酷な修行の日々が始まった。
一人で黙々と鍛練を積み、花蜂姐さんに勝負を挑んでは返り討ちにされる毎日だ。
勝負に負ければ、焼けた炭を食わされる、焼きごてで顔面を焼かれるなどの苛烈なペナルティーを受けるが、ジャッキーの心は折れることはなかった。

そうして迎えた最後の勝負。
結局最後まで花蜂姐さんに勝つことは出来なかったジャッキー(勝てへんのかい!)。
最後に課せられた試練は、姐さんお手製の毒酒を飲むことだった。
「ここから出られるのなら」と、躊躇なくこれを飲み干すジャッキー。
しかしそれは、毒酒などではなかった。
花蜂姐さんの血を滴らせた秘伝の薬酒で、飲めば不死身の肉体を手に入れることができると言われている。
これまでの過酷な試練も、全てはジャッキーの覚悟を試すためのものだったのだ!

真実を伝え、花蜂姐さん一族に受け継がれる「成龍拳」の秘伝書まで授け、ジャッキーを送り出す姐さん。
敵はかつて友と呼んだ寝とり野郎!

遂に激突するジャッキーと寝とり野郎!
言われるまでジャッキーだと気付かない千千!
相変わらず圧倒的強さを誇る寝とり野郎!
唐突に弱点を看破するジャッキー!
いつになっても使われない成龍拳!

果たしてジャッキーは、強敵寝とり野郎を倒し龍兄ちゃんの仇を討ち、千千を取り戻すことができるのか!?
そんなことより、花蜂姐さんの想いは報われるのか!?





…花蜂姐さん可愛いすぎ…。

さて、意外なことに当ブログでは初登場となったジャッキー・チェン。
もちろん、我々のような人間にとってはジャッキー・チェンと言えば必修科目なので、これまで見てこなかったわけではない。
中学の時に見た『酔拳』ですっかり魅了されて以降、ジャッキーの主演作は概ねチェックしてきた。
同じく映画好きの友人なおやんと一緒に、酔拳の型を真似してはしゃいでいたのもいい思い出だ。

もう20年くらい会ってないけど元気かなぁ、なおやん!

とは言えこのブログを始めてからは、なぜかジャッキー作品を紹介する機会がなく(ヒント:ハゲマッチョ)今日に至る。
「まぁそのうち、酔拳でも紹介すればええか」そんなスタンスだった俺が、『酔拳』より以前、ブレイク前のジャッキー作品を敢えて取り上げたのには、深い訳がある。

とあるブログで紹介されてて気になったからっすね。

「お前はそればっかじゃねぇか!」

その、とあるブログがこちら。


ちゃんとリブログの許可は頂いたので大丈夫!
多分大丈夫だと思う。
大丈夫じゃないかな?
ま、ちょっと覚悟はしておけ(さだまさし)

一応ざっくり紹介しておくと、こちらのブログの明石家いわしさん、俺と同じくアクションとホラーの二本柱でお送りする男の中の男ながら、その知識量は尋常のものではなく、紹介される作品の8割は見たことも聞いたこともないというとんでもないマニアっぷりである。
また、『ミミズバーガー』や『スラッグス』といった不朽の名作虫系ホラーをオススメ頂いたのも彼で、俺としてももう、「俺はいわし兄さんの弟…いわ五だ!」などと意味の分からない供述をしながら殺し屋集団の前に躍り出るしかない!

話を『成龍拳』に戻そう。
ご覧の通り本作は、ジャッキー・チェン主演作ではあるものの、今現在のパブリックイメージにあるようなコミカルなアクションやとんでもねぇデスウィッシュスタントは鳴りを潜め、ドシリアス、ド硬派なカンフーアクションに仕上がっている。
また、ドラマ部分にかなりの重点が置かれていたり、ジャッキーが何度も敵に倒されていたりと、「いつものジャッキー」とはかなり毛色の異なる作風となっている。
いつものジャッキーを期待すると肩透かしを食ってしまうことだろう。

もちろん、「いつものジャッキー」と作品の出来不出来は必ずしも一致しないが、それでもストーリー的にも荒唐無稽さが見え、中でもラスボスである寝とり野郎とのラストバトルはグダグダ感が拭えず、「へー、成龍拳の極意って首吊りだったのかー」と白目を剥きそうになったものだ。

この辺りの背景には、当時のジャッキーを取り巻く環境や製作者の思惑など、いくたりかの事情があったようだが、詳しくはいわし兄さんの記事をご参照下さい。(丸投げ)

それでは本作を、ジャッキー下積み時代の微妙な作品として、その他有名作品の下に積んでしまっていいだろうか?
答えは「不是」だ(中国語でノー)。

まずそもそもの話、ストーリーがどうとかジャッキーがどうとか以前に、格闘シーンに関してはさすが中国4000年の歴史。
安定と信頼のカンフーアクションを披露している。
登場人物のほぼ全て、老若男女に至るまで息をするように当たり前に拳法を嗜み、それぞれのバトルシーンもかなりの長尺、息つく暇もなく次々に攻防が繰り広げられるなど、全編これ見せ場といった風情でアクションの平均点が異様に高い。
さすがにワイヤーアクション丸分かりなシーンもあるが、その見せ方もお手の物。
改めて、選手層の厚さを実感させられる。

信じられるかい?45年前の作品だぜ?

そしてもう一つ、映画を評価するのにこの言葉はあまり使いたくないのだが、「キャラクターが魅力的」これに尽きる!

まずは主役のジャッキーである。
先述の通り、いつものコミカルさや陽気さは封印し、凛々しい若武者をぶりを披露するジャッキー。
恋人を危険から遠ざけるために泥を被ることも厭わず、天の邪鬼で頑固者だが義に厚く、受けた恩は返さずにはいられねぇ男の中の男!
「たまにはこんなジャッキーもいいもんだ」と、誰もがきっと惚れ惚れとしてしまうことだろう。

そんなジャッキーの気骨溢れる性格に惚れ込んでしまうのが、龍兄ちゃんこと龍四だ。
元々、強さと優しさ、そして公正さを併せ持つ人格者として描かれていた龍兄ちゃん。
彼らと出会った当初のジャッキーは全く心を開かず、「あなたとは友達ではないし、これからそうなる予定もない!」などと言い捨てて取りつく島もなかった。
しかしひとたび兄弟の契りを交わせば態度は一変。
高らかに弟宣言をすると、我が身の危険も省みず血雨党の刺客たちの前に立ちはだかる。

さらに、力及ばず瀕死の重傷を負ってしまったジャッキーと龍兄ちゃんの会話も奮っている。

「友達になってくれるか?」
「友ではない。言ったでしょう?弟の龍五だ
「…!!そうだ、友ではない!我々は最高の兄弟だ!!」

この時の龍兄ちゃんの、顔をくちゃくちゃにして目を細めて喜ぶ表情は必見だ!
こうして見ると、ジャッキーもある意味ツンデレキャラと言えないこともないのだった。

だが、本作の肝心要、影の主役、あるいは真のヒロインと言えばそう!
花蜂姐さんだ!

これまで数多くのツンデレキャラを嗜んできた俺だが、花蜂姐さんには完全にノックアウト!
彼女の一挙手一投足に胸のトキメキが止まらなかった!

アイドリングトークでは、あまりに濫用され形式化、テンプレ化してしまった「ツンデレ」を憂いたが、本作の花蜂姐さんはまぎれもなくツンデレキャラでありながら全くもってテンプレの埒外!
その加減知らずなツンと加減知らずなデレに圧倒されてしまうだろう。

例えばこうだ。
作中では負け知らずの圧倒的強者、神出鬼没でいつも高い場所から高笑いしながら登場、さらには様々な陰謀やら真相やら森羅万象委細承知之助という、完全にチート級のキャラクター設定ながら、押し倒されて惚れるという想定外の乙女っぷりを披露!
とんでもない高低差のギャップに掴みはバッチリで、鑑賞中の俺も『ウォッチメン』のDr.マンハッタンのような心境になったものだ!

さらに特筆すべきは、彼女はそのデレの部分を一切ジャッキーには見せないという点だ。

例えばこうだ。
恋人千千の行方が分からず、「ごめんよ千千…ワイはケダモノや…!犬畜生と一緒や!」と自罰的になるジャッキーの前に(高笑いしながら)登場。
「犬が聞いたら気を悪くする」とエッジの効いた嫌味を披露する。
さらに、「千千の居場所教えて欲しい?ん?ならちゃんとお願いしな?」などと散々煽り倒し、結局キレたジャッキーは自力で探すと去って行く。
そんなジャッキーの背中を見送りながら花蜂姐さんは、「女ならここにもいるじゃない!名前くらい聞いたらどうなの!?私はディン・ツァンヤンよ!ディン・ツァンヤンよー!!」と大絶叫。
その声はジャッキーには届かず、荒野に虚しく響くのみだ。

あるいはこうだ。
血雨党との戦いで瀕死の重傷を負ったジャッキーを、「命を救えるのは私だけ」と啖呵を切って引き取った花蜂姐さん。
しかし実は、姐さんにも特に策はなかった。
「じゃあ何で引き取ったのさ?」
仲間の女性に問われた姐さんの答えはこうだ。

「死んでも側にいたいの。他の人の前で死ぬなんてだめ」


映画史に残るレベルの名台詞で重たい愛を見せつける姐さんだが、当のジャッキーは気絶しているので聞こえていない!

さらにはこうだ。
強敵金川に対抗する力を付けるべく、ジャッキーとの手合わせを繰り返す花蜂姐さん。
せっかくジャッキーが「負けたら何でも言うこと聞く」っつってるのに、やったことと言えば焼けた炭を食わせる、焼きごてで顔を焼く、毒酒(本当は姐さんの血入り)を一気飲みさせるという苛烈の極み。
さっきまでジャッキーのために四時間かけて薬草を摘んで来てたのに!

そんな全力投球なツンの末に、いよいよジャッキーを送り出すシーンも奮いに奮っている。

姐さんから成龍拳の秘伝書を受け取り、無言で去って行くジャッキー。

「どうしてそこまで?」

お付きの女性が問いかける。

「分からないでしょうね、愛しているからよ…」

力なく項垂れる姐さん。

とそこへ、去ったはずのジャッキーが戻って来る。

「一生の借りができた。この恩は永遠に忘れない」

それだけ言うとジャッキーは、今度こそ去って行く。
振り返らずに駆けて行く。
愛しい恋人を取り戻すために…。

ジャッキーの背中を見送りながら、とうとうポロポロと泣き出してしまう花蜂姐さん。
もちろんジャッキーが去ってしまった後でだ!

その涙を見せろよ!ジャッキーに!

そしてラストカットも、「この恩は永遠に忘れない」というジャッキーの言葉を反芻しながら一人で微笑む姐さんの姿で締められる。

姐さんアンタ本当にそれでいいのかい!?「恩を忘れない」なんてそんな、愛でもなけりゃ恋でもないそれっぽっちの言葉を大切に胸にしまって、アンタこれからもたった一人で生きていくつもりかい!?

もうね、ジャッキーは姐さんと幸せになればいいと思うよ。
千千?彼女は寝とり野郎と幸せになればいいと思うよ。
寝とり野郎寝とり野郎言うてますけどね、千千に対しては何も悪いことしてないもん。
むしろ、傷付いた彼女を甲斐甲斐しく世話してゆっくりと心を解きほぐし、その上できちんとプロポーズするという誠実さ。
多分幸せにしてくれると思うよ?

そんなわけで、硬派なジャッキーと安定のカンフーアクションを堪能しつつも、最終的には花蜂姐さんのことで頭が一杯になってしまった本作。
気付けば、花蜂姐さんの表情を中心に120枚くらいスクショを撮っていたと言えば、どれぐらい頭が一杯だったか理解して頂けるだろうか?
スマホからじゃ画像は15枚しか貼れないのにね!

いずれにしても、「最高に萌えるツンデレ」のベストアンサーがここに示された形だ。
すなわち、まずは相手の両親を殺せ!
手作り弁当を食わせる前に焼けた炭を食わせろ!
焼きもちを焼くなら焼きごてで焼け!顔面を!
そして一人で泣け!!

そんなハードなメッセージを見る者に与えてくれるのだった。

といったところで、本日のインターネット講座「ツンデレ総論」はここまで。
それではまた次回、「炭を美味しく食べる方法」でお会いしましょう!

…べ、別にアンタのためにレビューしたわけじゃないんだからね!