旅がしてぇなぁ…。

めっきり春めいてきたここ最近、俺の胸中に去来する素直100%の気持ちだ。

思えば学生時代の俺はと言えば、相棒のママチャリを「アルタクス」と呼んで全面的に信頼し、暇さえあれば自転車一人旅をエンジョイしていたものだ。
もしも18年くらい前に、夜の夜中の中国山地をママチャリで爆走している頭の悪そうな男を目撃したことがあるなら、それが僕です。

大学の四年間で幾度となく広島~島根間をチャリで往復したわけだが、旅先では必ず、その時の気持ちにジャストフィットしたエロ本をゲットして帰ったことも、今となってはいい思い出だ。

もちろん今現在の俺はと言えば、コロナ禍云々以前に貧乏暇なし、おまけに体力もないときた。
学生時代のようにチャリで走り回るようなことは現実的ではないが、それでも、無計画に放浪の旅に出たい気持ちは常に持っている。
幸いにもこのブログを通して、遠方の方とのコネクションもできたので、旅の計画だけは膨らむ。
国内なら石川県、あるいは東京八王子、人生初の海外旅行に行くならカンボジアと決めている。
インドは…やめとこう!

そんな、「旅が人生なのか、人生が旅なのか」と言わんばかりの俺が、ロードムービー好きなのも無理からぬことであった。

といったところで今回は、俺の大好きなロードムービーの第二弾をご紹介したいと思います。
『ゾンビランド:ダブルタップ』

ゾンビじゃねーか!

ゾンビの名を借りたハートフルロードムービーが10年ぶりに大復活!
愉快なバカアクションと熱い家族愛が俺たちの心をダブルタップ!
アフターコロナならぬアフターゾンビの世界で、ニューノーマルな旅が今始まる!

それではストーリー!

前作でゾンビパニックによって終わっちまった世界をタフに生き抜いた(多分)主人公のコロンバス、瞬間最大風速でステイサムに見えなくもないタラハシー(ウディ・ハレルソン)、ウィチタ(エマ・ストーン)とリトル・ロック(アビゲイル・ブレスリン)の美人姉妹の四人。
↑冴えない(多分)主人公、コロンバス。

↑偽ステイサム、タラハシー。

↑美人姉妹の姉、エマ・ストーン。

↑アビゲイル・ブレスリ…太っとるやないかい!

さすがに10年も一緒に居ればもはや家族同然の四人は、まさかのホワイトハウスに居を構え、毎日がクリスマスのような適当な暮らしぶりだが、家族ともなれば家族なりの問題もあった。
具体的には、主人公とエマ・ストーンのカップルは若干の倦怠期で、そんな中で空気も読まずにホワイトハウスにあったファーストレディ用のホープダイヤの指輪でプロポーズしてくる主人公がウゼェ!
そして(太った)アビゲイル・ブレスリンとしても、父親面をしていつまでも高圧的に子供扱いしてくる偽ステイサムがウゼェ!

そんなわけでエマ・ストーンとアビちゃんの二人は、知性の欠片もない置き手紙を残して家出を敢行。
残された男二人は憂さ晴らしにショッピングと決め込むが、そこで、知能がゾンビレベルのビーガンのギャルと出会う。
↑ビーガンギャル、マディソン。

キャンキャンうるせえギャルなど偽イサム的にはNGだが、プロポーズを断られて傷心の主人公はビーガンギャルをホワイトハウスにご招待!
ビーガンのくせに肉食系だったギャルに押し倒される形で、神速のベッドインを決める主人公なのだった。

その夜、タイミングがいいのか悪いのか、家出をしたはずのエマ・ストーンが一人で帰還する。
なんでもアビちゃんが、道中で知り合った胡散臭いヒッピーの男に惚れてしまい、二人で愛の逃避行をカマしてしまったという。
どのくらい胡散臭い男かと言えば、出会い頭に礼儀正しく「ナマステ」と挨拶、非暴力の平和主義者で、ギター片手にパクりラブソングをつま弾き、おまけにロン毛だ。

いけないアビちゃん!そいつは信用したらダメだ!!

そんな俺の心の叫びも届かず、アビちゃんはナマステ野郎にうっとりしてしまうのだった。
↑うっとり…いや、太っとるやないかい!

エマ・ストーン的にも、こんな愉快なゾンビランドで頼りにならんヒッピー野郎に妹を任すことはできないが、話を聞いて誰よりも黙っていられないのがそう、偽イサムパパだ!

「俺が神と崇めるエルビス・プレスリーを否定するようなクサレ野郎に俺の可愛い娘を!」

こうして、主人公と偽イサムパパ、エマ・ストーンお姉ちゃんと、ついでにビーガンギャルの四人パーティーで、アビちゃんを探す旅に出発だ!
途中、タフな変異種ゾンビ(通称T-800)に襲われたり、ビーガンギャルがあえなく脱落したり、脱落したと思ったら復帰したり、エルビス・プレスリー記念館みたいな所で主人公たちのそっくりさんと邂逅したりしながら突き止めたところによると、アビちゃんは「バビロン」と呼ばれるヒッピーたちが寄り合って暮らす集落にいると言う。

こうして遂にバビロンに辿り着いた四人。
そこは、高層ビルの周りをバリケードで囲み、銃器の持ち込みは禁止、マリファナはOKだがグループセックスは禁止という、まさに人類最後の希望と呼ぶに相応しい場所だった!

そんな、意識高い系、知能低い系なバビロン内で、わけの分からん集会に精を出すアビちゃんと無事に再会を果たす一行。
「いつまでも子供じゃない。私は彼とここで暮らす!」というアビちゃんの確固たる決意を聞き、我が子の巣立ちを感じた偽イサムパパは、10年間共に過ごしたファミリーたちに別れを告げ、一人バビロンを去ってゆくのだった…。
ドラムサークルって何…やっぱり太っとるやないかい!

と、しんみりしたのも束の間。
バビロン内では意識は高いが知能は低いヒッピーたちがお祭りを始め、盛大に花火なんぞを打ち上げたもんだから、変異型ハイスペックゾンビT-800が大量に引き寄せられて来た!
これには偽イサムパパも黙っていられませんよ!
速攻でバビロンにとんぼ返りして危機が迫っていることを伝える偽イサムパパ。
迎撃しようにも、銃は全て煮溶かされ、スピリチュアルなペンダントに作り替えられている!

奴らを迎え撃つには、知恵と勇気とファミリーの絆が必要だ!

敵はタフなハイスペックゾンビの大群!
味方はマリファナとグループセックスにしか興味のない丸腰のヒッピーども!
相手にとって不足はねぇ!!

四人対数百のとんでもねぇハンデマッチ!
モンスターカーで爆走する姉御!
何もしねぇヒッピーども!
乱用される「地獄で会おうぜ、ベイビー」!
空を飛ぶステイサム!
オチに使われるビル・マーレイ!!

果たして彼らは、ゾンビの猛攻を退け、家族の絆を取り戻すことができるのか!?






…うーん、この安定感よ!

ゾンビ映画と言えば、低予算低クオリティの有象無象が乱立する掃き溜めのようなジャンルだ。
思えば俺もこれまで、二度とない人生の欠けがえのない時間を盛大に浪費してきたような気がするが、それに比べて本作は、エンターテイメントとして抜群に安定した良作と言わざるを得ない。
理由は簡単だ。
やっぱゾンビ映画じゃねぇわ、これ。

身も蓋もない言い方だが、前作同様、開始3秒で真面目にゾンビで怖がらせるつもりはないことが分かる。
冒頭から(多分)主人公の語りで、アホなゾンビ、ちょっと頭のいいゾンビ、ニンジャゾンビと、10年かけて分析したにしてはおざなりな分類を披露し、あるいは、「今週のゾンビ殺し」「今年のゾンビ殺し」などとゾンビ殺しアワードを競い合い、アフターゾンビの世界でも逞しく不謹慎に生きる人類の描写をカットイン。
本作が気安いポップコーンムービーであることを一瞬で教えてくれるのだった。

それでは、本作がゾンビ映画ではないとすればなんなのかと言えば、そらもう家族の絆をテーマにしたロードムービーよ。
毎度引き合いに出して恐縮だが、同じくアビゲイル・ブレスリン出演の名作ロードムービー、『リトル・ミス・サンシャイン』を彷彿とさせる構成だ。
思い返してみれば当時から、アビちゃんは肥える素養があった気がするがそれはともかく!

「バラバラになりかけていた家族がアビちゃんのために旅に出て家族の絆を取り戻す」と言えば、これはもう99%一致!
唯一違うとすれば、本作では家族四人の誰一人死なないのに対して、『リトル・ミス・サンシャイン』では一人死ぬことくらいだ!

さて、旅の魅力と言えばなんと言っても、旅先で行き合う人々との出会いだ。
行きずりならではの心地好さもあれば、思いがけず生涯のパートナーになったりもする。
俺もかつて、自転車旅の途中に立ち寄った古本屋の店員のオバチャンに、「一度男同士を味わったらもう女には戻れないらしいよ」という腐りきった話をされたことが未だに忘れられない!
改めて思い返してみても、店員が客にする話としても不適切、オバチャンが男子学生にする話としても不適切という、不適切のダブルタップだったなぁ!

すまない、ちょっと脱線した。
とにかく本作にも、男同士を推してくるオバチャンに負けず劣らずの濃いキャラクターが目白押しだ!

まずなんと言っても、主人公たちが最初に出会うビーガンのギャルだ。
映画に出てくるビーガンキャラはだいたいイカれているものだが、彼女もご多分に漏れずどうかしている。
ただでさえ低かった本作の偏差値をさらに下げてくる頭の悪さ、気の利いたやつなんか一人もいないファミリーの面々でさえ頭を抱えるような軽さとウザさ、エマ・ストーンと同乗した車内のヒリついた空気を意に介さない空気の読めなさ。

中でも、ビーガンなのにベッドの上では超肉食というギャップ萌えをはき違えたようなキャラクター造形が俺の心をガッチリハートキャッチプリキュア!
エマ・ストーンへの罪悪感から据え膳を遠慮しようとする主人公に対し、「こっちは冷凍庫生活でたまってんだよ!お前がヤらないなら目をつむってあのハゲ親父とヤる!とタンカを切るシーンには、「やっぱり肉は食わんとあかんな…」と思わされるのだった。

ビーガンギャルとは対照的に、大人の魅力と姉御気質に溢れた危険な熟女との出会いもある。
それが、ミセス・ネバダだ。

キングことエルビス・プレスリーとビル・マーレイへのリスペクトに溢れ、不法侵入者には銃でもって答える女傑。
そうかと思えば、エルビス談義を肴にタラハシーと酒を酌み交わし意気投合、そのままベッドインを決める情熱家である。

…あれ?ビーガンギャルと同じじゃん!?

まぁ、ゾンビランドではみんな溜まっているということにしよう!
それはともかく、そんなネバダ姉御が主人公たちの窮地にバカでかいモンスターカーを駆って颯爽と登場し、ゾンビの大群をバタバタとなぎ倒していく様にはテンションがマックスになること間違いなしだ!

その他にも、『T-2』好きをアピールして盛大にゾンビ化した主人公とタラハシーのそっくりさん、隙あらばグループセックスに持ち込もうとするヒゲモジャ、あとビル・マーレイなどなど、意味があるかないかは分からないが無駄にインパクトのあるキャラクターたちが旅の空を極彩色に彩ってくれるのだった。

だがなんと言っても、本作のメインは主人公らファミリー四人だ。
前作から10年が経ち、四人それぞれが何らかの作品で主演を張ってもおかしくないキャリアの持ち主に成長してきた!多分!
そんな四人が、前作から一人も欠けることなくこうして一同に会する…それだけでも十分に感慨深い。

まずは主人公コロンバス。
相変わらずいい男からはほど遠いビジュアルと挙動の彼氏だが、エマ・ストーンとイチャついたり痴話ゲンカを繰り広げたり、行きずりのギャルと神速のベッドインを決めたりと、乾く暇もないほどのモテっぷりだ。
正直、世界がゾンビランドになっていなければよくてキョロ充止まりとしか思えない主人公が、(性格に難があるとは言え美女をとっかえひっかえできるという事実は、我々ボンクラ男子には間違った希望を与えてくれるのだった。
また前作のラストでも、「仲間がいなければゾンビと同じだ」というシンプルかつ力強いメッセージで締めてくれたものだが、今作でのラストでも、「家族が一緒にいる場所こそがホームだ!」という、最早ゾンビと関係ないコメントで、数少ない主人公らしさを見せてくれる。

そんな主人公の恋人というかもはや内縁の妻といった風情の存在が、エマ・ストーンだ。
エマ・ストーンの出演作で『○○ランド』と言えばほとんどの人が『ラ・ラ・ランド』を挙げることだろうが、俺は迷わず『ゾンビランド』を推したい!
『ラ・ラ・ランド』ではその表現力が評価され、見事主演女優賞に輝いた彼女だが、表現力という意味ではこちらも負けていない。
主人公と神速のベッドインを決めたビーガンギャルと初邂逅した時の目をひん剥いてドン引きする表情、狭い車内でビーガンギャルから交尾の時のエピソードを聞かされている時の死んだ魚の瞳で怒りの炎をたたえる表情、ビーガンギャルがゾンビ化した(と勘違いした)時の全く心のこもっていないお悔やみの表情等々、さすがのアカデミー女優の演技力で、これにはライアン・ゴズリングもドン引きすること間違いなしだ!
↑ゴゴゴゴゴ…

そして、問題のアビゲイル・ブレスリンだ。
ある意味、10年という時間経過を誰よりも実感させてくれる出で立ちの彼女。
作中では「リトル・ロック」という役名で、いつまでも小さな女の子扱いされることに我慢がならない風のアビちゃんだったが、「大丈夫、(ある意味)大人の風格があるよ!」と言ってあげたくなったものだ。
しかし芸歴の長い彼女のことだ。
『コップランド』のスタローンをリスペクトした役作りだったのかも知れん!

それはともかく、ロードムービーの名作『リトル・ミス・サンシャイン』と、シュワちゃん主演のゾンビ映画の名作『マギー』の双方に出演し、なおかつ、ゾンビ映画とロードムービーのハイブリットのような本作にも出演するアビちゃんは、言わば旅とゾンビの架け橋のような存在に相違ない!
また本編クライマックス、偽ステイサムパパのピンチを助けつつ、序盤のしょーもない伏線を見事に回収してみせる勇姿は、最高にアガる瞬間だ!
それでも太っとるやないかい!

しかしなんと言っても、本作の真の主人公とでも言うべき存在は、偽ステイサムことタラハシーだ!
もうジャケットからして堂々と真ん中にポジショニングし、本編中でも、ドラマ、コメディ、アクションと各要素を一人でこなす縦横無尽の活躍で、もはやタラハシー無双状態だ!

まずドラマ部分で言えば、これはもう、タラハシーの『I am father』っぷりが全編に渡って迸っている!
10年も一緒にいた他の面々の中ではすっかり父親ポジションのタラハシー。
中でも最年少のアビちゃんに対してはやたら父親がましい態度で接する。
しかしそこは、チョイ悪どころではない荒くれハゲ親父である。
クリスマスプレゼントと称してエルビス・プレスリーの銃をアビちゃんに贈るなど、気の利かなさとウザさはマックス。
結果としてアビちゃんは家出してしまうという、この不器用な父親っぷりはどうだ!?

さらにアビちゃんが、ギターをつま弾くロン毛のナマステ野郎に付いて行ったと聞いた時のどうかと思う顔芸や、アビちゃんを探すために文句タラタラで乗りたくもねぇミニバンで旅に出る展開、バビロンの武器持ち込み禁止のルールを鼻で笑いながらもアビちゃんに会うために渋々銃を差し出す態度など、まさにゾンビランドのベストファザー賞!
中でも、皆との決別を決意した時の、娘の成長を知って嬉しいような寂しいような気持ちの、複雑なドヤ顔は必見だ!

前作からの彼の身の上を知っていると、ここらへんの彼の心情は、かなりグッとくるものがあるのだった。

またクライマックスでは、大量のゾンビ軍団を率いてバビロンの屋上から決死のダイブを敢行。
それはまさに空飛ぶハゲの様相で、前作に引き続き、瞬間最大風速でステイサムを越えた瞬間だ!

その他にも、サンタコスで一人で悪ノリするタラハシー、意気揚々と発進したバスを三秒でパンクさせるタラハシー、エルビスコスでハッスルするタラハシー等々、全編に渡って各種タラハシーを胸焼けするほどエンジョイできる!
ここまでくるとさすがに、ウディ・ハレルソンといういずれ名のある俳優さんを、いつまでも偽ステイサム呼ばわりするのも失礼な話だ。
今後は彼のことを、最大限の敬意を込めて、ウディ・ハゲルソンと呼ぶことにしよう!

誤解しないで頂きたいのだが、俺にとってハゲとは最早敬称の一つなので、イジッてるとかバカにしてるとかは一切ナッシング!
逆に、「髪がフサフサで…バンドマンみたいですね」とか言い始めたら、それはそいつのことを信用していない証拠なので注意しよう!

そんなわけで、アビちゃんのために旅に出た家族が絆を取り戻すという面では『リトル・ミス・サンシャイン』、エマ・ストーンがライアン・ゴズリングもドン引きするほどの表現力で魅せるという面では『ラ・ラ・ランド』、熱いハゲがその身をもってファミリー愛を叩き付けるという面では『ワイルド・スピード』、イカれたビーガンが主人公にウザがらみしてくるという面では『スコット・ピルグリム』、もしくは『マキシマム・ソルジャー』!ヴァンダムの!と、各種ジャンルの名作的要素を兼ね備えた名作であった本作。

俺も次に旅に出る時は頭を剃りあげてワイルドにいこう!そして、やたらホモセ○クスを推してくる古本屋のオバチャンと神速のベッドインを決めよう!と思わせてくれる一本だ。

最後に、やたら太ってるを連呼してしまったアビゲイル・ブレスリンさんにおかれましては、もう10年もすればいい感じに包容力のあるオバチャンになって、一部界隈から人気が出ると思うよ!