前回までのあらすじ!

俺はヴィン・ディーゼルじゃないと感じない体になっちまったぜ!ハァン!?

というわけで、『ワイルド・スピード』の新しいやつの公開が待ち遠しい今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』について巷では、死んだはずのハンことサン・カンが復帰するだとか、とうとう宇宙に進出するだとか、小出しにされる情報に大いに盛り上がっている。
驚くには値しない。
ハゲマッチョたちがこうもナチュラルに空を飛ぶようになってしまっては最早、宇宙に出るしかないという話だ!

とは言え『ジェットブレイク』は、皆さんご存知のコロナの影響で、公開は来年まで延期されてしまった。

コロナの野郎、許せねぇ!!

何が「ウィズコロナ」だ、ふざけんじゃねぇ!
早々に諦めてんじゃねぇぞ人類!ハァン!?

とまあ、荒ぶってみたところで何が変わるわけでもないので、大人しく『ジェットブレイク』の公開…というかDVDレンタルを待つしかないわけだが、ここで問題が一つ。
ヴィン・ディーゼル禁断症状を発した俺が来年までもつかということだ!

ここは一つ、軽くヴィン・ディーゼル分を摂取して症状を和らげる必要があるのではないか!?
そんなのっぴきならない事情から鑑賞したのが、本日ご紹介するこちらの作品!
『トリプルX』

見て下さい、このドヤ顔を!

迷惑系ユーチューバーのヴィン・ディーゼルがスパイに転身!?
景気よく空を飛びまくるハゲ頭!
若いヴィン・ディーゼルの過激な道徳の授業が今始まる!!

それではストーリー!

NSA(国家安全保障局)のお偉方は困っていた。
この度、局のエージェントが任務に失敗した。
理由は簡単だ。
エージェントたちの出で立ちがスパイのテンプレ過ぎて、敵にすぐ正体がバレてしまうのだ!
例えば、パンクロックの会場にスーツでキメて乗り込むなどだ!

この難題に対し、NSAきっての食わせ者、サミュエル・L・ジャクソンには妙案があった。
すなわち、民間のゴロツキを鍛えてスパイに仕立てあげる作戦である!

「ちょっと冷静になれよサミュエル!」という気持ちは否めないが、サミュエル・L・ジャクソンが冷静なことは滅多にないのでOKだ!

そんなトラストミーな妙案で白羽の矢がたったゴロツキの一人が、ザンダー・ケイジことヴィン・ディーゼルだ。
今作のヴィン・ディーゼルは、スケボーやラップ、果てはテレビゲームまで禁止しようとする頭の固いクソ議員の車をパクって崖下に叩き落とし、その様子を動画でネット配信するという、いわば迷惑系ユーチューバーのような男であった!
↑ユーチューバー的決め台詞。

しかしそこは男の中の男、ヴィン・ディーゼル。
そんちょそこらのユーチューバーとはわけが違った。
チートじみた身体能力、スジを通さずにはいられない熱い男気、ダース単位で集まる人望、このあたりは標準装備だ!

今回も、クソ政治家の車と見事なダイブを決めたヴィンの元には大勢の仲間が集まり、打ち上げパーティーに興じていた。

すげぇよ、また袖無しだよ!サイコー!!

宴もたけなわですが、そこへ武装した警官隊が突入。
パーティーはお開き、ヴィン・ディーゼルは麻酔銃で眠らされいずこかへ連行されるのであった。

目を覚ましたヴィン・ディーゼルは、なぜかどこかの食堂にいた。
そこのウェイトレスやら客やらは、なんかもうあからさまに怪しい!
唐突に強盗事件が発生するが、ヴィン・ディーゼルは強盗犯たちを、頭髪と同じく涼しげな顔でボコボコにして納める。

そんなヴィン・ディーゼルの姿に、「やぁ、お見事ケイジくん」などと全く心のこもっていない祝辞を述べながら現れたのはサミュエル・L・ジャクソン。
今の強盗事件はヴィン・ディーゼルの腕を試すために劇団NSAが仕組んだ茶番劇だったのだ!

くっ…こいつの顔ムカつく…!

並みの器の人間であれば、サミュエル・L・ジャクソンのこんなしたり顔を見れば殴っちゃうところだが、我らがヴィン・ディーゼルも負けてはいない。
「客のリーマンは日曜なのに経済新聞で株式情報を読んでいた。なにより、デブのウェイトレスが高いヒールを履いている。演技がバレバレだし!

冷静に考えて、演技と分かっていながら相手を後遺症が残るレベルでボコボコにするヴィン・ディーゼルのラジカルっぷりがハンパないが、ともあれ、戦闘力のみならず洞察力の高さにもサミュエルは大満足。
「おめでとう、合格だ」と言いながら、再び麻酔銃をぶち込むのだった。

次にヴィン・ディーゼルが目を覚ましたのは、軍用輸送機の中だった。
ヴィンと同じく、例の食堂での試験に合格したゴロツキたちと共に、いずこかへ移送されている。
かなりワイルドに降ろされた場所は、コロンビアの大麻畑だった!
速攻で現地麻薬組織に連行されるヴィン・ディーゼル他二人。
どうやら今度は劇団NSAではなさそうだ。
やたら強面のオジサンに拷問されたりしたけど、私は元気です!

…ダニー・トレホなんていなかった。いいですね?

といったところで、麻薬組織のアジトを軍が襲撃。
そう、ヴィン・ディーゼルたちは囮にされたのだ。
あっという間に修羅場と化したアジトでヴィン・ディーゼルは、負傷したもう一人のハゲを担いで銃弾の中を駆け抜けたり、今度はバイクで空を飛んだりという活躍を見せ、見事に地獄の一夜を生き延びる。
さすがにヘロヘロのヴィン・ディーゼルの前に、再びしたり顔で現れたのは、そう、サミュエル・L・ジャクソンですね!

「ユーいいね!スパイになっちゃいなyo!」
こっちは訳も分からず危うく死にかけたのに、そんなしたり顔で熱烈スカウトされても、ヴィン・ディーゼルとしては「ざけんな!頬傷野郎!」という話だ。
それでもサミュエルに、「刑務所にはスノボもサーフィンもないぞ?」と脅され、「そうか、スノボもサーフィンもないのか…」としょんぼりしてしまうヴィン・ディーゼルなのだった。
↑「それはちょっとヤダな…」

こうして無事NSAのエージェントとなったヴィン・ディーゼル。
与えられた任務は、冒頭でテンプレスパイがしくじった案件だ。
元ソ連軍の軍人たちによって結成された「アナーキー99」なるテロ組織に接触し、情報を集めよというミッションだ。
場所は、チェコはプラハ!

しかしそこは、迷惑系ユーチューバーというアナーキーな出自のヴィン・ディーゼルである。
速攻で組織のボス、ヨーギだかヨモギだかいう名前の…、うーん、髪がモヨモヨしてるからヨモギでいいか!
冷酷非道な組織のボス、ヨモギと接触しそこそこ打ち解けるヴィン・ディーゼル!
↑アナーキーな打ち解け方。

ヨモギさん曰く、彼らは1999年、祖国ロシアの軍を去ってチェコに拠点を構え、「これからは好き勝手に生きるんや!」というアナーキーな思想のもと、ヤクザな商売で勢力を拡大してきた。
しかし、このヨモギさん率いる「アナーキー99」、ただのアナーキストたちの集団ではなさそうだ。
何かとんでもない陰謀を隠していそうな雰囲気である。
そして何より、ヨモギさんの愛人である、やたら目付きのキツいクールビューティー美女、イレーナが、アーシア・アルジェントだ。
↑まさかのアーシア・アルジェント。

あのダリオ・アルジェントの娘が単なる愛人のはずがなかった。
何やら訳ありの身の上らしく、こっそりとヨモギボスの秘密を探っている様子だ。
そんなアーシアちゃんの秘密を盾に、速攻で彼女を朝飯に誘い、自分がNSAのエージェントであることを明かすヴィン・ディーゼル。
これにはアーシアちゃんも大爆笑。

「お前のようなスパイがいるかハゲ」という気持ちがアーシアちゃんにあったかどうか分からないが、爆笑してちょっぴり打ち解けかけた二人。
しかし何者かの密告により、ヴィン・ディーゼルの正体がバレてしまった!
アーシアちゃんと一芝居うってどうにかその場を逃れるヴィン・ディーゼルだが、そんな彼をNSAの愉快な仲間たちが強引に連行。
目の焦点が定まらないサミュエル・L・ジャクソンが告げる。

「正体がバレたからお前は帰んなさい。あとは我々が綺麗にお掃除しとくから
↑目がキマってるサミュエル。

これには、道徳の塊ヴィン・ディーゼルとしては黙っていられない。
彼らだって悪人ばかりじゃない、皆殺しなんて作戦は受け入れられない。
具体的には、アーシア・アルジェントとはチューをした仲だ。

そんなわけで、敵のアジトに単身舞い戻るヴィン・ディーゼル。
そこで遂に、アナーキー99の真の目的を知ることとなる。
彼らはアジトの地下で科学者たちを集め、特殊な潜水艇を建造していた。
そしてその潜水艇には、毒ガス入りのミサイルを搭載する。
一度に大勢を殺せる強毒でありながら、水に通せば無毒化できるというその毒ガスは、「静かな夜」という、アナーキストらしい中二病感溢れるネーミングだ。

そして今夜、潜水艇と毒ガスミサイルは完成した。
この毒ガスで各国の都市を攻撃することで世界大戦を誘発させ、各国が共倒れしたところで覇権を奪おうというのが、ヨモギさんたちの計画だ。
秘密を知る科学者たちは「静かな夜」の実験台となり皆殺し。

恐ろしい計画と非道なやり口に怒りに震えるヴィン・ディーゼル。
チェコの現地警察と、あと実は元ロシアのスパイだったアーシア・アルジェントと協力し、アナーキー99の計画阻止に動き出す!
スノボで空を飛んだり、銃の安全装置を外し忘れてわたわたしたり、タバコが体に悪いということをかなり力業で証明したりしながら、ヨモギさんをなんとか仕留めるが時既に遅し。
毒ガスを積んだ潜水艇は自動運転で発進してしまった!

標的はプラハの街!
時速150キロで爆走する潜水艇!
ゴリゴリに改造したポンティアックGTOで追走するヴィン・ディーゼルとアーシア・アルジェント!
星条旗のパラシュートでまたまた空を飛ぶヴィン・ディーゼル!
無意味にプラハの街を走るサミュエル・L・ジャクソン!
ザンダー・ゾーンへようこそ!!

果たしてヴィン・ディーゼルは、潜水艇を止めプラハの街を救うことができるのか!?





…うーん、これはアナーキー。

まあそもそも、アナーキーと言われても、「え、穴開き!?」と、いらんことを考えてしまう俺だが、本作がただごとでないことは分かる。
いつも通り、俺の茶化した説明では一ミリも伝わらんだろうが、まずアクション映画としてのスケールやクオリティは十分過ぎるほどに十分だ。

アクション映画全盛期を思わせる火薬量多目のドンパチシーン、アクロバティックなカースタント及びバイクスタント、雪崩と共にスノボで滑走する大スペクタクル、各種エクストリームスポーツなど、見せ場は満載だ!
もう、四捨五入すれば『ワイルド・スピード』と言えなくもない!
実際、終盤に登場したポンティアックの改造車は、ワイスピのドムの愛車、ダッジ・チャージャーに見えなくもないし、水上を走る潜水艇との異種格闘技的カーチェイスなど、途中から、「あれ?俺ワイスピ見てたかな!?」と錯覚すること間違いなしだ!

また、サミュエル・L・ジャクソンやアーシア・アルジェントなど、インパクトのある豪華共演陣もワイスピシリーズに通じるところがある。

…すぐに死ぬダニー・トレホなんていなかった、いいですね?

それはともかく、やはり本作最大の見所はヴィン・ディーゼルですよ!

今回のヴィン・ディーゼルはまだ比較的若く、やることも一々ビンビンに尖っている。
すなわち、ヴィンヴィン・ディーゼルですな!

そんなヴィン・ディーゼルのアナーキーっぷりは冒頭から奮っている。
首に「XXX」とビシバシ入れ墨を入れ、どう控えめに見ても三つくらいの法に抵触するような行為をネット配信するアナーキーっぷりはどうだ!
しかし、そんな彼の行動には、彼なりの譲れねぇサムシングがあってのことだ。

パクった車を走らせながら、動画撮影用のカメラに向かって、やたら若者文化を規制しようとする議員先生に対するメッセージをぶちかます!

「ラップは暴力的だから禁止だって?…音楽だぜ!?

「ゲームは子供に悪影響だから禁止だって?…あれこそ教育だぜ!?

思えば現在の我々の社会にしても、何かあればすぐに規制規制だ。
ここにしたってそうですね。
ちょっとエッチな単語や画像を載せればすぐに記事が消される!

…煩悩だぜ!?

何かとままならない世界にあって、このちょっと間を置いてから「○○だぜ!?」とシャウトする姿勢は、我々も常に持っていたいものである。

それからも、アナーキズム全開のラップを口ずさんでテンション上げたり、雪の中からひょっこりはんばりに顔を出して「新雪サイコー!」とシャウトしたり、銃の安全装置を外し忘れるという初歩的なミスをして慌てたりと、若くて初々しい感じのヴィン・ディーゼルと、そして、車で空を飛ぶ、バイクで空を飛ぶ、スノボで空を飛ぶ、パラシュートで空を飛ぶといった、いつものヴィン・ディーゼルと、さらには、素肌にモコモコの襟付きコートというドフラミンゴばりのコーディネートでアナーキー精神を叩きつけるヴィン・ディーゼルと、各種ヴィン・ディーゼルを堪能できるお得セットとなっている。
↑こりゃ真似できねー!

しかし、俺が最も印象に残ったシーンはラストだ。
無事に事件を解決し、アーシア・アルジェントと二人でボラボラ島でバカンスを楽しむヴィン・ディーゼル。
「どこだよ!?」という話だが、とにかくこの画像を見てほしい。

…乳首にまで入れ墨入れてやがる!!

冒頭で袖無しのピチT姿を披露し、「この頃からこれがフォーマルだったのか!?」と、一部俺に衝撃を与えたヴィン・ディーゼルだが、まさかの見えないところのオシャレである!

いや、まあ正確には乳輪周りであって乳首ではないが…授乳器官だぜ!?
もちろん、俺が常日頃から嗜んでいるアナーキーな漫画(エロ漫画)などでは、乳首ピアスでさえ日常茶飯事だが、ヴィン・ディーゼルの乳首となるとなぜか妙に目についてしまう俺なのだった!

そんなわけで、派手な爆発、エクストリームスポーツを取り入れたアクション、豪華共演陣、割りとどうでもいいストーリー、そして各種ヴィン・ディーゼルと、予想以上にエンジョイできた本作。
何かにつけ我慢を強いられる昨今、社会に対する不平不満は「…○○だぜ!?」と腰にくる一言で済ませ、心の乳首にビシバシ墨を入れる、そんなアナーキー精神は常に持ち続けていたいものである。

最後に、「ヴィン・ディーゼル若いなぁ!」と思っていたがそれもそのはずで、本作はもう17年も前の作品であり、当時のヴィン・ディーゼルは36、7才だ。

…同い年だぜ!?