最近下の娘が、テレビで流れるジャニーズのライブ映像などを見て、「かっこいい!」と口走るようになってきた。

ゆゆしき事態だ。

我々大人が子供に教えるべきことは多い。
教育の重要性については、今さら俺などが云々する必要もない。
今のこの社会で生きる上で知っておくべきことは沢山ある。
やっていいこと、悪いこと、他者を思いやりいたわること、自分の思いを伝えること、近付いてはいけない危険な場所、危険な行動。
社会のルールや道徳倫理、さらには身を守るための危険予知と、教育の範囲は多岐にわたり、時に、互いに相反するような難しい問題にも直面するので、一概に「これが正しい!」と断じることのできない難しさもある。

だがそんな中でも、これだけは真理であると自信を持って言えることもある。

「前髪の長いバンドマンは信用するな」

この真理である!

なんだかこのままでは、熱心なジャニーズファンにサイバー的な攻撃を受けかねないので、念のため言っておくと、俺は必ずしもジャニーズタレントが嫌いなわけではない。
特に近年のジャニタレはみんな芸達者で、俺の好きなバラエティ番組などでも若手芸人顔負けの全力投球で、実に好感が持てる。
特に某T越くんには、あのビンビンに起ったチャラ男キャラと反応速度の早いリアクションなどで大いに笑わせてもらったものだ。
あ、もうジャニーズじゃねぇか!

まあそれはそれとしてですよ!
いくらテレビの人としては好きでも、娘が連れてきた彼氏だったらどうかという話ですよ!

「お父さん、わたしの彼氏の祐也くん」

「どうも~、てごにゃんで~す!テイッ!あなたの娘さんとワッショーイ!」

これはもう、昔秋葉原で買ってきたエクスカリバーの模造刀を抜くしかない。

では逆に、どんな男なら信用できるのか?
そらもうハゲマッチョよ。

世のお父さんは想像してみて欲しい。
自分の娘が連れてきた彼氏が、ヴィン・ディーゼルだった場合を。

もうなんとなく話の流れは分かってきたとは思うが、とりあえず想像してみて欲しい。

「お父さん、わたしの彼氏のドム

「俺にはルールもクソも関係ねぇ。ただ一つ、彼女のことは空を飛んでも守るぜ

こちらとしてはもう、「今から俺たちはファミリーだ!」と言って頭を剃りあげるしかない!

といったところで、お察しの通り、今回ご紹介するのはこちら!
『ワイルド・スピード ICE BREAK』

今、世界で最も信用できる男たちが奏でる男気の三重奏!
今度の舞台は極寒のロシア!
だが奴らには氷さえ熱すぎた!!

それではストーリー!

まずは冒頭、ミシェル・ロドリゲスと遅ればせながら新婚旅行にキューバを訪れていたドミニク・トレットことヴィン・ディーゼル。
相変わらずのっけから頭髪とシャツの袖はいらないスタイルの男の中の男ヴィン・ディーゼル。
いとこのボロ車が借金のカタに巻き上げられそうになっているのを見るや、車を賭けてのストリートレースを開催。
いとこの車は盛大に爆発して海の藻屑になるが、見事な勝利とキューバ人からの尊敬をゲットする、男気が(袖のない)服を着て歩いているようなヴィン・ディーゼルなのだった。
↑男ならこうありたい!の見本。

そんなどうかしているハネムーンをエンジョイするヴィン・ディーゼルの前に突然現れた危険な香りの絶世の美女は、もうどっからどう見てもシャーリーズ・セロンだった!
↑まさかのシャーリーズ・セロン。

怪しさ満点のシャーリーズ・セロンは、ヴィン・ディーゼルに部下になれだのなんだの眠たいことを囁いて、何事かを伝えて去っていくのであった。

一方その頃、ここ最近では当然のようにヴィン・ディーゼルとタッグを組む特別捜査官ホブスことドウェイン・ジョンソンは、娘の所属する女子サッカーチームでゴリゴリのハカを披露して相手チームをドン引きさせていた!
↑相手の背中で既に引いていることが分かる!

意外とマイホームパパなドウェイン・ジョンソンの元に、新たな任務が入る。
一国の電子機器を全て使用不能にできるような超強力な電磁パルス砲がテロリストの手に落ちた!
場所はドイツだけど、ちょっくら行って取り返して来なさいよ!と。
「世界の平和より今は娘のサッカーでしょうが!」と半ギレのドウェイン・ジョンソンだが、ノータイムでヴィン・ディーゼルに電話をかけ、次の場面ではもう電磁パルス砲を奪っているのだった!

しかしここでトラブル発生だ。
ベルリンの街を半壊させつつ、いつものように車で爆走するドミニクファミリー並びにドウェイン・ジョンソン。
しかし突然、何を思ったかヴィン・ディーゼルがドウェイン・ジョンソンの乗る車をクラッシュさせ、電磁パルス砲を奪って去って行く。
身動きの取れないドウェイン・ジョンソンは、追ってきた現地警察に逮捕され、ブタ箱送りになってしまうのだった。

誰よりもファミリーを大切にするドムの突然の裏切りに呆然とするファミリーの面々だが、それはそれとして、ドウェイン・ジョンソンが収監された刑務所にいたのが、そう、ジェイソン・ステイサムだ。

前回の因縁から、お互いに子供のような悪口合戦を開始するドウェイン・ジョンソンとステイサム。
そうは言ってもそこは、世界で最も熱いハゲ二人ですよ。
「出会って五秒で合体」ならぬ「収監されて五分で脱獄」を敢行。
しかも、ケンカの片手間にである。
↑気が付いたら脱獄してた!?

そんな常軌を逸した二人の前に現れた「ノーバディ(何者でもない)」と名乗る男は、もうどっからどう見てもカート・ラッセルだったが、カート・ラッセルの部下として同行していた新人くんは、クリント・イーストウッドの息子だった!
マジかよ!?

とにもかくにも、カート・ラッセルの作戦本部に案内されるドウェイン・ジョンソン。
そこには、神妙な面持ちのドミニクファミリーの面々も集められていた。
カート・ラッセルが言うにはこうだ。
今回の事件の黒幕は、世界的なスーパーハッカーであるサイファー、すなわちシャーリーズ・セロン。
またスーパーハッカーかよ!
実はこのシャーリーズ・セロン、前作と前々作の事件でも裏で糸を引いていた黒幕オブ黒幕!
そしてなぜか、ヴィン・ディーゼルは彼女に協力している。

いずれにしても、ヴィン・ディーゼルの居場所を突き止めて捕まえなければならんわけだが、考えてみてほしい。
世界一のハッカーとヴィン・ディーゼルのタッグ…、シリーズ最大の強敵だ!
そこでカート・ラッセルがこちらのチームに加えたのがそう、ステイサムですよ。
前作でエラい目に合わされたファミリーの面々とドウェイン・ジョンソンとしては、いきなりステイサムと組めと言われても黙っていられないが、ステイサムとしても弟がエラい目に合わされた事件の黒幕には黙っていられない。
何より、ハゲマッチョ三兄弟の長兄と戦うなら残りの二ハゲが必要だ!

こうして一先ず共闘体制が整ったところで、前作で完成させた「神の目」を使ってヴィン・ディーゼルの居場所を探ってみると、なんということでしょう!
神の目は今カート・ラッセルたちがいるこの場所を指し示しているではありませんか!
と思った次の瞬間、脳震盪を起こして身動きをとれなくする回りくどい爆弾が投げ込まれ、新チームは一瞬で戦闘不能に!
そこへ、シャーリーズ・セロンとヴィン・ディーゼルが現れ、神の目を奪い、無駄にキスを見せつけて去って行くのだった!

本当に神の目が役に立った試しがねぇな!

「あのハゲ、あんな美人とチューしやがって!」という気持ちがあったかどうか分からないが、ヴィン・ディーゼルがシャーリーズ・セロンと組んでいる事実をまざまざと突き付けられ打ちひしがれるファミリーたち。
中でも幸せなハネムーンから急転直下のミシェル・ロドリゲスは、もう完全にお通夜モードだ。

一体ヴィン・ディーゼルはなぜ裏切ったのか。
真相はこうだ。
かつて二度に渡りシャーリーズ・セロンのヤマを邪魔したヴィン・ディーゼル。
ムカついたシャーリーズ・セロンは、ヴィン・ディーゼルの二号さんことエレナを誘拐。
しかもエレナは、ヴィン・ディーゼルとの子供を人知れず出産していた!
つまりヴィン・ディーゼルは、二号さんと幼い息子を人質にとられ、シャーリーズ・セロンの悪事に荷担させられていたのだ!
↑愛しい我が子は防弾ガラスの向こうだ!

そんなこととは知らないファミリーの面々だが、シャーリーズ・セロンの計画は着々と進んでいく。
次なるターゲットは訪米中のロシアの防衛大臣。
その辺の自動運転車を1000台ほど同時ハッキングするというチート過ぎる方法で大臣を追い詰めると、実働部隊のヴィン・ディーゼルが大臣の持っている核の発射ボタンをゲット。
なんでそんなもん持って来てんだよ!

事態を察知したファミリーの面々もヴィン・ディーゼルを追うが、ファミリーとドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサムのチームをもってしても、あと一歩の所で取り逃がしてしまう。
世界一のスーパーハッカーさんが、電磁パルス砲と核のボタンを手に入れた。
これはもう、危険な香りしかしねぇ!
なんやかんや調べた結果、奴らが次に向かったのはウラドビン!
どこだよ!?
まぁとにかくロシアだ!
そこはかつて、ロシア軍の基地があった場所だが、今は反体制派のテロリストたちに占拠されている。
しかもそこには、核ミサイルを搭載した潜水艦が!
ヴィン・ディーゼルのことは気がかりだが、とにかくミサイル発射だけは阻止せねばならん!とロシアに乗り込むファミリー。

基地を見張っていると、氷の大地を爆走してくる一台の車が。
そう、ヴィン・ディーゼルだ!
ゴリゴリに改造した車で電磁パルス砲をぶっぱなして基地の警備を無効化して単騎突入するヴィン・ディーゼル!
さらに潜水艦に電磁パルス砲をもう一発お見舞いしたところを、シャーリーズ・セロンがハッキングして乗っ取る!

そうはさせじと、こちらのスーパーハッカーさんやメカニック担当さんやクリント・イーストウッドの息子やらが潜水艦に乗り込み、核ミサイルを無効化!
しかし潜水艦の制御はシャーリーズ・セロンの手に落ちたままな上に、完全に巻き込まれた形のテロリストたちも問答無用で殺しにかかってくる!
ファミリーたちは、追ってくるテロリストを退けながら、潜水艦が外洋に出てしまうのを防がなければならない!
世界の命運を握る難易度マックスのミッションだ!

ファミリーの危機に、あの男はどこにいる!?
シャーリーズ・セロンの手下と合流したヴィン・ディーゼルは、まんじりともせずスマホの画面を見つめている。
不意に電話が鳴る。
「赤ん坊は助けたぜ…」
別動隊としてシャーリーズ・セロンの本隊に潜入したステイサムからだ!

ついにハゲの長兄が鎖から解き放たれた!
とにかくもうめちゃくちゃ怒っている!

三度空を飛ぶヴィン・ディーゼル!
訳も分からないままに全滅させられるテロリストたち!
潜水艦と車の異次元カーチェイス!
魚雷を素手でどうにかするドウェイン・ジョンソン!
最強のベビーシッターと化したステイサム劇場!
髪のないケンシロウと化したヴィン・ディーゼル!!

果たして彼らは、潜水艦を止められるのか!?
多分、余裕だ!






テイッ!!

すまない、取り乱した。
しかしこんな俺でも、思わず取り乱してしまうほどに、どうかしている作品には違いない。

前作『SKY MISSION』で、ポール・ウォーカーというシリーズの柱を失う悲劇に見舞われたワイスピシリーズ。
普通、柱を失った家は早晩倒壊する定めだ。
あるいは、シリーズの路線変更を図り、やたらドラマ重視になったりリアリティ重視になったりしがちである。

ところが本作はどうだ。
「柱がなければ壁を厚くすればいいじゃない」
あるいは、
「倒壊するより早く建て増しすればいいじゃない」と言わんばかりの、ヤケクソなまでの清々しさというか清々しいまでのヤケクソさだ!
あらゆる要素をひたすら足し算の論理でスケールアップさせていく様はまさに、ハゲ界のハイパーインフレ!

まずこの出演陣はどうだ!
前作から本格参戦したジェイソン・ステイサムとカート・ラッセルはそのままに、新たなラスボスにシャーリーズ・セロン、カート・ラッセルの部下にクリント・イーストウッドの息子、ステイサムのママにヘレン・ミレンという、もはや狂気としか言いようのない布陣だ。
↑ステイサムママ、ヘレン・ミレン。

右肩上がりの成長を続けてきたワイスピシリーズである。
声をかければ、光に集まる羽虫のように人は集まるだろう。
しかし、ヴィン・ディーゼルの(頭の)光に集まってきたのはヘラクレスオオカブトだった!

もちろん、カーアクションという側面で見ても、順調にインフレしている。
これまでも、戦車と首都高バトルを繰り広げたり、アブダビの空を飛んだりと、車の用途を逸脱しまくってきた本シリーズだが、今回は氷の大地を舞台に潜水艦と追いかけっこだ。
ついでにもう、多少の飛翔はデフォルトである!

ドラマ重視に路線変更していないと言ったが、それはあくまで、アクションをスケールダウンさせていないという意味においてだ。
妻子(正確には二号さんだが)を人質に取られファミリーを裏切らざるを得なくなるヴィン・ディーゼルの姿は、奇しくもポール・ウォーカー演じるブライアンがあり得たかも知れないもう一つの未来。
なので、ヴィン・ディーゼルと、ミシェル・ロドリゲスを始めとするファミリーたちの苦悩もガッツリ描かれている。
「アクションもドラマも十分に描いていたら時間が足りないっすよ!」という話だが、「なら時間を増やせばいい」と言わんばかりに、上映時間なんと二時間半!
しかも、その盛りだくさんな内容から、見ている時間はまさにワイルドなスピードで過ぎていくので、ちょっとした浦島太郎気分が味わえるって寸法よ!

しかし、ワイスピシリーズの一番の見所と言えば、ハゲマッチョ三兄弟の活躍である!
あくまで俺の中ではだが!

まず、今作で一番の功労者であるステイサムだ。
前作のラストでCIAの厳重な収容施設に放り込まれてたはずのステイサムがなぜか普通の刑務所にいるが、そんなことは気にするな!
登場するなり、ニヒルな表情で皮肉たっぷりの悪口雑言をドウェイン・ジョンソンに浴びせまくるステイサムの姿は、もう既にいつものステイサムだ!
そして、五分と経たず開始される脱獄バトルでは、華麗なパルクールっぽいアクションまで披露。
前作同様、スタートダッシュと呼ぶにはあまりにも後先考えない全力疾走だ!

なんやかんやあって、シャーリーズ・セロンの飛行機に人質奪還のため潜入するステイサムだが、この時に見せる、ヴィン・ディーゼルとは一味違ったスタイリッシュな飛行は、空飛ぶハゲは一人じゃねぇ!という熱いハゲ魂を感じずにはいられない。
そして、ステイサムの一番の見せ場となる飛行機内での銃撃戦。
大勢の敵に囲まれ、赤ん坊を小脇に抱えてのハンディキャップマッチだが、一切負ける気のしない異常な安心感は、もう笑っちゃうくらいいつものステイサム!
冷静に考えてアクション映画としてそれもどうかと思うが、ここではイギリス野郎の一人舞台を心行くまでエンジョイするのが正しい!

そんな最強のステイサムが唯一しどろもどろになるシーンがある。
それが、ヘレン・ミレンママとの共演シーンだ。
「あんた、ヴィン・ディーゼルに協力しなさいな」とステイサムに迫るママ。
口答えしようものなら即座に飛んでくるビンタ及び泣き落としと、イエス以外のアンサーを許さないかなりのビッグマムっぷり。
これにはさしものステイサムも、いつになくタジタジになるしかなかった。

思えば、近年ではステイサムとタッグを組むことの多いスタローンもかつて、『刑事ジョー ママにお手上げ』という不朽の名作で強烈なママに振り回されていたが、こちらはもう、『デッカード・ショウ、ママにお手上げ』の様相だ!

次に、最早捜査官だかなんだか分からなくなってきたドウェイン・ジョンソンだ。
冒頭の娘の女子サッカーチームを応援するシーンで既に出オチ感の強いドウェイン・ジョンソンだが、もちろんそんなのは序ノ口だ。
収監されて五分で脱獄を決めるシーンでは、半ば意に沿わず脱獄することになってしまったドウェイン・ジョンソンだが、問答無用で鎮圧にくる看守たちに「これは違うんだ!」と言葉で説明しようとしたのもわずか3秒!
即座に肉体言語による説得に方針転換する姿は、さすがワイスピ歴の長いハゲである。
ステイサムがパルクールのような身軽さで脱獄を目指すのに対し、ロック様はもう清々しいまでの力押し!
暴動鎮圧用のゴム弾をバンバン食らっても「ゴム弾か、バカめ!」と言ってお構い無しに猪突猛進を繰り返す姿には、「バカはお前だ!」とシャウトしたくなること請け合いだ!

ついでに言うと、収監された当初は他の囚人と同じツナギの囚人服を着ていたドウェイン・ジョンソンだが、いつの間にか囚人服の袖を引きちぎっている!
「男に頭髪とシャツの袖は必要ねぇ!」というシリーズで一貫したメッセージを、ドウェイン・ジョンソンも実践しているに違いない!多分!

さらに、いよいよ決戦の地に乗り込むにあたっては、「え、ロシアに?僕たちアメリカの公務員っすよ!?無理でしょ」とイモをひくクリント・イーストウッドの息子に、「黙って見ているか、戦って世界を救うか」と熱い説教をカマし、クリント・イーストウッドの息子を見事にワイスピ脳に洗脳するという、ナイス上司ぶりも見せるドウェイン・ジョンソンなのだった。

そして何と言っても、ハゲマッチョ三兄弟の長兄ことヴィン・ディーゼルである。
今回は悪いシャーリーズ・セロンに二号さんと息子を人質に取られ、開始早々敵に寝返ることになる。
しかし考えてみれば、ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンがタッグを組んだ時点で手が付けられないのに、今作ではステイサムまでファミリーに加入する。
ハゲマッチョ三兄弟が同じ側に属するなど、世界のパワーバランスがどうにかなってしまうレベルの力の偏りなので、ヴィン・ディーゼルを裏切らせるのも仕方のない選択である。
まさに、ハゲを越えるのはハゲだけだ!の世界である。

さて、普通二号さんが子供を産んだなどとなれば、大半の男は認知がどうのとみっともなく揉めるものですよ。
しかしヴィン・ディーゼルは違う。
「来るのが当然だから来た」ときっぱりと言い放ち、さらにファミリーに対してもグダグダ言い訳など一切しない。
「いや、説明しろよ!」という気がしないでもないが、最凶のシャーリーズ・セロンに対して迂闊な行動は命取りになるので、黙って限界まで耐える男の中の男!
例えその過程で二号さんが殺されたとしてもだ!(唐突なネタバレ)

なので本作のヴィン・ディーゼルは、敵に回すと手が付けられない恐ろしさをこれでもかと見せつける一方、常に苦虫を噛み潰したような苦悩に満ちた表情で、囚われの妻子(正確には二号さんだが)の前で涙を流しさえした!

もう、二時間半の本編のうち二時間くらいは鎖に繋がれたヴィン・ディーゼル状態で、見ているこちらとしてもフラストレーションが溜まること夥しく、ハゲが解き放たれて大暴れする瞬間を今か今かと待ちわびていたものだ。
そうして、赤ん坊が救出されたと知るやいなや、一緒にいたシャーリーズ・セロンの部下を瞬殺する。
この時の、これまで見たこともないような鬼の形相で繰り出される残虐ファイトは、これまでの展開を差し引いても戦慄の一言で、ついさっきまで敵に対して「何て卑怯な奴らだ!早く殺されちまえ!」と思っていた俺も、思わず「逃げてシャーリーズ・セロン!」とシャウトしたくなったと言えば、その恐ろしさが理解して頂けるだろうか?
↑凄い顔だ!

その後、敵に追われてピンチに陥っていたファミリーの車列に颯爽と合流するのだが、車越しにアイコンタクトを交わしたミシェル・ロドリゲスは瞬時に理解する。
「ドムが帰って来た!」と。
何も言わずに去ったヴィン・ディーゼルに対し、何も言わずに受け入れるファミリー!
この迸る男気はどうだ!

こうなってしまえばもう、たかだか遠隔操作の潜水艦ごときではヴィン・ディーゼルを止めることはできない!
「これはエレナの分!」
「これは息子の分!」
「最後にこれは、この俺の怒りだー!」
とばかりに、氷の大地を縦横無尽に走り回り、潜水艦を海の藻屑にするヴィン・ディーゼルの姿は最早毛のないケンシロウ!

ファミリーの面々も、人質とかの事情は一切分かってないと思うが、「これがドミニク・トレットだぜ!」と大はしゃぎだ!

こうして、事件が一先ず決着して、定番のホームパーティーで大団円を迎えるファミリー。
息子を救いだしてくれたステイサムと固い握手を交わし、カート・ラッセルやらクリント・イーストウッドの息子やら勢揃いの中で乾杯の音頭をとるヴィン・ディーゼル。

「俺はいつも何より大切なのはファミリーだと言ってきた。今回も、俺のことを見捨てないでくれてありがとう。みんなに紹介する。俺の息子、名前は…ブライアンだ

こいつやりやがった!

プライベートでも実の娘にポール・ウォーカーにちなんでポーリーンと名付けたヴィン・ディーゼルだが、映画の中でも同じことをするという熱いブラザーソウル!
既にカンストしたかに思われた男気メーターにさらに上乗せする、粋なエピローグだ!

その他にも、車を賭けたストリートレースで勝っても「車はいらねぇ。尊敬だけで十分だ」と言って拳を突き出す、「どけ」と言っても嫌がらせのように道を塞ぐヒゲ野郎に「もう一度同じことを言った時お前は死んでいる」と迫ったり、遠くから狙撃しようとするヒゲ野郎に「俺は遠くからは撃たない。相手の目を見て殺す」と言って本当に目を見て殺したりと、男の"カッコイイ"が全て詰まっていると言っても過言ではない!

俺の娘にも是非そう教えよう!

さて、それでは最後に、今作の悪役シャーリーズ・セロンを見ていて思ったことを伝えて終わりたいと思います。
本作では、女子供を人質に取り見せしめに殺すことも厭わない冷酷非道な悪役として存在感を示したシャーリーズ・セロン。
しかし思い返して見れば、かつて頭髪と片腕がないスタイルで荒野を爆走していた頃のシャーリーズ・セロンは、男気の塊であった!
何の話かって?
『マッド・マックス 怒りのデスロード』の話だよ!

とにかくそう考えると、男女問わず男気と頭髪は反比例しているのではないか!?と、このように思うわけだ。
気が付けば前述の某T越くんも、ある意味ワイルド・スピードな勢いで次々に新しいアクションを起こしている。
個人的には是非とも頑張って頂きたい。
もしもT越くんと何らかのコネクションがある方がいたら、俺のアドバイスを伝えてほしい。

「まずは袖を引きちぎって頭を剃れ!」と。