最近バンデラスがキテいる。

そう思うのは俺だけだろうか?

俺だけか!それはすまんかった!

いえね、ここ最近、行きつけのレンタルショップで、割りと最近のバンデラス作品が面出ししてやたらプッシュされてましてね。
陳列棚の前を通りすぎる度に、やたら挑発的な瞳のバンデラスがアピールしてくるわけですよ。

そんな誘惑に負けて借りて見たのがこちら。
『ガンシャイ』

ね?挑発的でしょ?

とりあえずこの、ヴァンダム界隈にありがちななジャケットはどうだ!
バンデラスドーン!と、あとはそれっぽいものを配置しただけといういかにもなジャケットに、一抹の不安が脳裏をよぎるわけだが、しかしそこは、ただのマッチョ俳優とは一味も二味も違うバンデラスですよ!
きっと我々の予想を、微妙に裏切ってくれるに違いない!
いいか悪いかは別にして!

さてさてそれでは、今回のバンデラスの役どころはどういったものだろうか?
ありがちだが元軍人だろうか?
それとも元暗殺者だろうか?
あるいは元仮面をつけた義賊だろうか?

いいえ、今回のバンデラスは、元ロックスターです。

早くも我々の予想を微妙に裏切ってきたバンデラスだが、粗筋はこうだ。

伝説的ロックバンド「メタルアサシン」のリーダーであったバンデラスだが、元スーパーモデルの美人嫁と結婚してからというもの、バンドメンバーらはバンデラスの元を離れさらにヒットを連発、一方のバンデラスは歌の一つも作らず酒浸りの日々という落ちぶれっぷりであった。
↑オノ・ヨーコ的存在の美人嫁。

そんなある日バンデラスは、嫁に半分強制連行される形でチリへバカンスにお出かけ。
嫁は自然体験ツアーへ一緒に行こうと誘うが、ホテルでひたすらビールを浴びていたいバンデラスはこれを拒否。
哀れ美人嫁は、周りがカップルだらけの中たった一人で自然体験ツアーに参加するのだった。

しかしここでトラブル発生だ。
地元チリで食い詰めた漁師のあんちゃんたちが、自然体験ツアーの客たちを襲撃。
彼らは皆、バンデラスのバンドのファンだったので、嫁は速攻で身バレして、バンデラスは身代金100万ドルを請求される。
↑即席テロリストの皆さん。

↑「バンデラスは神!」とのこと。

落ちぶれたとは言えスーパースターのバンデラス的には、100万ドル程度は払えない額じゃないので、とっとと払って嫁を取り戻したいところだが、事件を聞き付けた連邦捜査官のオッサンが、「テロリストにくれてやる100万ドルはねぇ!」とばかりにバンデラスを妨害。
↑態度はでかいが役立たずな捜査官。

ていうかそもそも、バンデラス自体が一人では何もできない社会不適合者すぎて計画は遅々として進まない!
↑ミュージシャンへの誤解を招きかねない発言。

マネージャーの美人秘書、身代金受け渡しの業者のオッサン、果ては地元のビール売りの子供まで頼って、基本他力本願で悪戦苦闘するバンデラス!
↑歯の白い業者のオッサン。息をするようにセクハラ発言を吐く。

果たしてバンデラスは、幾多の困難を乗り越え、無事に嫁を救い出すことができるのか!?
急げバンデラス!
嫁は誘拐犯のリーダーとちょっと仲良くなっちゃってるぞ!
ビール飲んでる場合じゃねぇ!

という、そんなお話。


「いやぁ、バカな映画を見たなぁ!」
本作に対する俺の忌憚のない感想だ。

一応本作は、アクション、場合によってはスリラーなどといったジャンルで紹介されてはいるが、もうどっからどう見てもドタバタコメディだ。
ジャケットにあるような、クルーザーが派手に爆発炎上するようなシーンなど一切ないし、バンデラスは銃を握ってさえいない。
唯一のアクションと言えば、スーツケースにまたがってチリの街を爆走するシーンくらいなものだ。

さらに本作のジャケット詐欺の秀逸なところは、ジャケ裏を見ると、バンデラスが人質奪還のプロを雇って犯人の元に殴り込みをかけるようなストーリーに見えるところだ。

なんだよ秀逸なジャケット詐欺って!

しかし実際には、敵らしい敵と言えばクソマヌケな捜査官ただ一人で、人質を救出できるか否かよりも、そもそも金を持って行けるのか!?という問題が最大難関になっているため、犯人に金を渡した時点でハッピーエンドだ。

強いて本作の主題を挙げるなら、バンデラスの社会復帰だろう。
本作のバンデラスは、100倍ダメ人間になったジャック・スパロウといった風情で、何を考えているのか分からん頭のおかしさはそのままに、頼りになる瞬間が一切ないといった有り様だ。
本作をスリラーにカテゴライズするならば、何が一番スリリングかと言うと、バンデラスは一人でお金をおろせるのか?とか、バンデラスは一人でゴムボートを運転できるのか?とか、嫁はこのままチリ人になびいてしまうのではないか?とか、それくらいなものだ。
↑ゴムボートで右往左往するバンデラス。

↑犯人と打ち解けてくる嫁。

それでも、一連の騒動の中で創作意欲を取り戻したバンデラスが、唐突にマリアッチに変貌して愛の歌を弾き語れば犯人たちも涙を流し、エンディングで歌い狂うバンデラスを見ればこちらとしても、「なんだか楽しい映画を見たなぁ!」と、口を半開きにして呆けるほかないのであった。
↑最高にイカすマリアッチバンデラス。

↑愉快なエンディング。

そんなわけで、『デスペラード』的あれこれを期待して見ると落胆するしかない作品ではあったものの、圧倒的に陽性な雰囲気と、頭空っぽにして鑑賞できるしょーもないストーリーで、日曜の早朝5時から見るには悪くないチョイスだったんじゃないかなぁ!と思うしだいだ。
↑終始こんな雰囲気だ!

ままならない日常を生きる社会人の皆様におかれましては、何もかもを投げ出して昼間っからビールをかっくらいたくなる日もあることでしょう。
そんな時には是非とも本作を見てみてほしい。
「さすがにこんなんなったらアカンな」って思うから!