うだるような暑さが続く今日この頃、皆様におかれましては夏バテなどお召しになっておられないでしょうか?
ちなみに俺はといえば、社会に出てから10余年、肉体労働外仕事をなぜか続けており、そろそろ「俺何やってんだろ?」感がごまかせなくなってきましたよ?
さて、そんな命を削られるような夏の暑さを、どのようにしてしのぐべきだろうか?
夏野菜を食べて夏バテ予防?
台湾かき氷を食べて涼をとる?
答えはノーだ。
20年前の夏ならいざ知らず、酷暑とまで言われる現代の夏には、そんな小手先の技では太刀打ちできない。
暑い夏に必要なのは、夏に負けないくらい暑苦しい映画だ。
それも、生半可な暑苦しさではいけない。
例えばそう、『コナン・ザ・グレート』だ。
最近の若い子は知らんかもしれんが、かつてはこれがヒーローのスタンダードだった!
言わずと知れたマッチョ俳優シュワちゃんが、全編通してほぼ半裸でお送りする、マッチョイズムの金字塔!
知略?スタイリッシュ?そんなものはいらん!
鍛え上げた肉体と剣一本あれば良い!
と言わんばかりの暑苦しさMAXの作品だ。
それではテンション上げてストーリー!
むかぁしむかしある所に、鋼の武器を鍛えることを生業とするキンメル族の村がありました。
村で暮らす幼い少年コナンは、刀鍛冶の両親のもと、「男も女もけだものも信用するな。信じられるのは鋼の剣だけだ」などという英才教育を受けながら幸せに暮らしていました。
しかし幸せは長くは続かなかった!
ある日突然、謎の侵略者が襲ってきて村は壊滅。
コナンの両親も惨殺され、哀れ幼いコナンは奴隷として連行されるのだった。
あれから10年!
過酷な奴隷労働に耐え続けたいたいけな少年コナンは、立派なシュワちゃんへと成長を遂げたのでした!
after
なんということでしょう!
こうして、侵略者も首をかしげるほどに逞しく成長したコナンはその力を見込まれ、奴隷同士が命懸けのバトルを繰り広げるコロッセオ的な闘技場に放り込まれる。
するとコナンは案の定連戦連勝。
想像を上回る戦闘力に、こいつは使える!と踏んだお偉いさんは、剣の修行や読み書きを教え、さらに種馬として女も与え、都合のいい戦士として鍛えられるコナン。
そんなある夜、心あるひげもじゃのオッサンがコナンの鎖を外し、ついにコナンは10年ぶりの自由を得る。
丸腰で荒野をさまようコナンは、導かれるようにして古い遺跡で鋼の剣をゲット!
剣と自由を得たコナンは、かつて一族の村を襲った侵略者どもを、きゃつらが掲げていた蛇の紋章を頼りに探り始める。
道中、なぜか荒野で一人拘束されていた、自称盗賊で弓の名手のサボタイを助け同道することに。
サボタイと共に荒野を駆け足で旅するうちに、ある村で、蛇を祀る怪しい新興宗教、セット教が世間を席巻しているとの情報をゲット。
コナンとサボタイは早速、怪しい儀式真っ最中の教団の塔に潜入を試みるが、そこで、同じく塔へ盗みに入ろうとしていた女盗賊、ヴァレリアと出会い、三人で塔に潜入。
教団の秘宝とされる蛇の目を盗み、ご神体の大蛇もくびり殺し、あと意味もなく宝石類を盗み出すことに成功した一行。
コナンは秘宝の宝石をサクッとヴァレリアにプレゼントしてねんごろになり、宝石を売った金で自堕落な豪遊生活をしばし楽しむ。
そんなことをしていたもんだから、コナンたち三人は、盗みのかどで王の御前に引っ立てられてしまう。
王「お前たち、セット教に盗みに入ったそうだな。この盗人め!…よくやった!」
王が言うにはこうだ。
セット教を率いる強大な魔術師タルサは、王でさえ頭が上がらぬほどの絶大な力を持っている。
しかも、王の娘の王女がタルサの魔術にかかり、「アタイ、タルサ様の奴隷になりたいの!」と言って、教団の聖地、“力の山”へ向かってしまった。
どうか娘を取り戻してくれまいか、と。
国王さえひれ伏す権勢を誇る教団の本拠地に乗り込むのは危険すぎると反対するサボタイとヴァレリアだが、親の仇でもあるコナンは捨て置けず、一人でこっそりと力の山を目指す。
途中、古き神々の墓所とそこを守る魔法使いのじいさんに出会い、一夜の酒を酌み交わす。
そして翌朝、馬をラクダに乗り換え、信者になりすましていよいよ聖地に乗り込むコナン。
信者のオッサンがコナンの肉体に魅了されて木陰に連れ込み、逆に僧衣を剥ぎ取られるという謎の展開もあったが、まあ気にすんな!
多くの信者が待ちわびる中、ついにタルサがその姿を現す。
それはまさに、10年前コナンの母の首をはねた男の姿だった!
憎き仇を目の前にしてコナンはしかし、教団の塔からパクった蛇のシンボルを見せびらかしていたため速攻で身バレ。
多勢に無勢な上、丸腰のコナンはボコボコにリンチされ、磔にされてしまう。
屍肉を狙って寄ってきたハゲ鷹を、逆に食い殺すという常識外れな生命力を発揮するも、最早瀕死のコナン。
この大ピンチに、サボタイとヴァレリアが颯爽登場。
例の墓守りの魔法使いの所に連れ帰り、懸命な看病の甲斐あってコナンは超回復。
コナンの命懸けの覚悟を見たサボタイとヴァレリア。
三人で力を会わせれば王女を助け出すことは不可能ではないと、再び力の山を目指す。
意味があるのかないのか分からないコマンドーライクなボディペイントで、力の山に潜入。
ひとしきり大暴れして王女を奪還し脱出するが、タルサが放った毒蛇の矢に、ヴァレリアが射られてしまう。
「アンタが無事で良かった」と、惚れてまうやろー!と叫ぶしかない言葉を残してコナンの腕の中で息を引き取るヴァレリア。
またまた魔法使いが守る神々の墓所に戻り、ヴァレリアを火葬するコナンとサボタイ。
王女を取り戻すため迫り来るタルサ一味を迎え撃つため、「春風を感じるか?」などという若干厨二めいた会話を繰り広げながら、神々の墓所にランボーばりのブービートラップを仕掛けていくコナンとサボタイ。
間もなくして、馬を駈って近づいてくるタルサ一味を発見するコナン。
コナンは生まれて初めて、彼らの一族が信奉する神に祈りを捧げる。
「神よ、俺は祈ったことがない。口下手だからだ。何が正しく、何のために戦ったか、そんなことはどうでもいい。ただ俺たちは、二人で大勢の敵と戦う。勇気をご覧じろ。ただ一つの願いは、仇を討たせてほしい。それが叶わぬなら、もう祈らぬぞ!」
決戦の時は来た!
コナンとサボタイ、そして魔法使いのじいさんは、その辺で拾ってきた装備に身を包み、大勢の敵と対峙する!
祈りが通じたのか、途中、死者の国からキラキラ光りながら甦ったヴァレリアの加勢もあり、激しい攻防の末敵の悉くを打ち倒し、タルサは一人逃げ帰る。
そしてその夜、大勢の信徒たちの前で、「ユー、異教徒どもヤッちゃいなよ!」とアジるタルサの前に現れるコナン。
「お~、息子よ!」などとわけの分からんことを言うタルサを問答無用で斬首して、信者たちの前に首をスローイン。
洗脳を解き、王女様をお姫様だっこで連れ帰るコナンなのでした。
エピローグ!
それからもコナンは仲間たちと冒険を続け、多くの勝利を収め、やがて西の地で一国の王となりました。
めでたしめでたし!
どうだろうか?
暑さは吹き飛んだだろうか?
むしろ、意識が吹き飛んだだろうか?
若いシュワちゃんのピチピチの肉体を楽しむだけといった風情の本作。
確かに、作品の八割はそれで成り立っているといっても過言ではない。
それを証明するかのように、都合三回もシュワちゃんの濡れ場が出てくるのも、特筆すべき点だ。
だがそれだけではない。
ヒロイックファンタジーの王道を概ね失念しない、胸が熱くなる展開も多くある。
例えばこうだ。
タルサに殺された恋人のヴァレリアを火葬するシーン。
煌々と燃え上がる炎をまんじりともせずに見つめるコナンだが、少し離れた場所でサボタイが涙を流している。
魔法使いが、「なぜお前が泣く?」と聞くと、サボタイはこう答える。
「コナンはキンメル族だ。やつは泣かない。だから俺が代わりに泣く!」
共に死線をくぐり抜けた仲間でなければ、決して吐くことは許されない台詞だ!
あるいは、そのヴァレリアが甦ってコナンを助ける演出も奮っている。
生前彼女は、「アタイが死んでも地獄から甦ってコナンに加勢する」と言っていた。
その言葉通り、コナンのピンチに輝く一閃を放ち、敵の攻撃を止める。
死んだ彼女が生き返って助けてくれるとか、都合のいいファンタジーと思われるかも知れない。
しかし、彼女の助けはこのほんの一太刀だけだ。
唖然とするコナンに、「ふふ、命が惜しいの?」と憎まれ口を叩くと、次の瞬間にはもう消えている。
粋!!
なんと粋な演出だろう。
これが昨今の、感動の押し売り系の作品であったなら、もっとクドイ演出になっていたに違いない。
しかしこうして、一瞬のキラキラカットインにすることによって、その印象はより鮮烈になる。
まあ、ぶっちゃけ、ストーリーとしては、「ちょっと何言ってるか分からない」という部分がないでもないというか、かなり多々あったことは否めない。
教団の秘宝とされる宝石も、意味ありげなだけで全く意味がなかったし、タルサとコナンが鋼の謎が云々言っていたが、結局謎は謎のまま放置だし。
あと当時、俳優デビューしたてのシュワちゃんの大根っぷりに批判が殺到したらしいというのは、内緒の秘密だ。
しかし、それらの欠点を補って余りあるどころでない魅力と筋肉量が、本作には溢れている!
見て分かる通り、俺のレビューも夏に負けじと熱くなるほどだ!
そんなわけでこの夏、日本に必要なコナンは、名探偵でもなければ未来少年でもなく、ザ・グレートである!